三章(一・七月・四 見世物劇場)
二ヶ月投稿していなかったのに、読んで下さった方!
あの本を読んで私が想像した通りの、刑の執行。私が最も恐れている結末。不意打ちでそれを見せられたのだ。動転するのも無理はない。
周りにも三つの人形があったらしい、しかし私は怯えていてそれには気づけなかった。
ジュリー様はすぐさま助けに来てくださった。その麗しきお姿で、私の恐れはまだ現実ではないと否応なく悟って、私は腰が抜けてしまった。
「お気になさらず…私は、大丈夫ですから…」
「リリー、とてもそうは見えませんわ。今すぐ外側へ向かいますわよ」
しかし、私は考えるべきである。これがあの本を元に作られた大道具なのか、それともあの本が他にもあり、それはこの見世物劇場のどこかに存在しているのか。存在しているならば、探し出すことは可能なのか。
「ジュリー様、私はもっと奥へ行かないと」
「それは無理ですわよ?」
「そんな」
「リリー、貴女の叫びで多くの道具が起動したのはお判り?」
確かに、そこかしこからがたがた音がしました。私はこのとき無我夢中でジュリー様に抱きついてしまい、そのことを残念に思っています。
譫妄のごとき狂気が私たちを追いかけ続けました。
「リリー、ようやく外側が見えましたわ!」
「あ、あああ…」
なんと長い逃避行だったことでしょう。というか、なんで私は、なんでも来い!なんて言ってたんだろう。
「実際に見てみると、恐ろしいところでしたわ。貴女もそうでしょう?」
ジュリー様は怯えるそぶりすら見せていないのに、私に合わせてそう仰る。私はつい、少しくらいは弱いところも見せて下さいと思ってしまう。
私は心配事について切り込むことにした。ジュリー様に確認したいことがあります。あの光景は私の恐れが見せた幻影なのか、それとも、もしや本当に?
しかし、ジュリー様は謎めいた笑みを浮かべるだけでした。意味ありげに懐中時計をご覧になりながら。何だかジュリー様に守られているような気がして、私はあたたかい安心感を覚えました。
聡いジュリー様があれを見て何を思ったのか、私には想像できないけれど。
まあ、今日も、夢のような時間を過ごせたことは確かです。一見悪夢だけれど、思い返してみると、ジュリー様と駆け抜けたことは貴重な体験でした。あの時は楽しむ余裕もなかったけれど。こんなの、他の子に知られたら笑われてしまう。
いつか私が困難に立ち向かわないといけなくなった時、そこにジュリー様がいてくれたらいいのになぁ。
2025/04/05 精神的な挫折があり、本作品の先を続けられなくなってしまったため、お嬢様の登場する他の作品を投稿しました。今後はそちらを更新する予定です。続きを楽しみにして下さった方には大変申し訳ありません。




