三章(一・七月・一 小さいこと)
続きます!
予定、ここが折り返しになる…全編において残り後半は放浪編・共闘+魔道書編…
あと勝手にほんの少し違う世界のスピンオフ(?)を作るかもしれません
日をまたぐ実習から帰ってきた私は、調べもののため、学院の図書館で本を読んでいた。
眠いー!遠出したあとは体調が崩れる。夜まではしゃいだからだ。お泊まりなんだからしょうがない。私は体調不良を理由にジュリー様の部屋に押し入った、これは犯罪ですか?あとは勝手に置いてある果物を食べたりした。腐ってなかったから大丈夫。
ともかく/だから、眠いのだ。これは良くない。この難解な稀覯本を折り曲げてしまう恐れがある。顔を洗いにお手洗いへ向かう。冷たい水を伴えば、私のどこか火照った顔もさめるだろう。顔も目も。
髪を纏め、水を軽く掬う。
不意に、世界の色が反転したような、そんな気がした。この空間に、圧倒的に異質なものが紛れ込んでいる、そんな感覚。振り向かずに目の前の鏡を見る。
目が、合った。鏡の中の二つの目。澄んだ青い目。
もっと早く気づくべきだった、寝惚けていた私が悪い。慌てて身を翻して、像ではなく直接目視しようとしたのだが…
「あれ?」
いない。いない?さっきは明らかに…あの隠しようのない気配は存在の証左。そんなはずがない。
まあ、いなくなるというのなら、大きな害はないだろう。鏡の方に向き直り、水を再度出す。
顔をあげると、いた。あまりに急だったので、水をびしゃっとやってしまった。
「!?」
「きゃあ!?」
相変わらず可愛らしい声だ。というか、全く、私はこの妖精に対して、何をそこまで警戒していたのだろうか?水をかけられて悲鳴をあげたのを聞いて、毒気が抜かれてしまった。
「かっこつかないな〜もう〜」
「悪戯をしようとするからですよ」
「うーん、つめたい…。でも、あわててるの、ちょっとおもしろかったかも!わたしの友だちがいってたとおり!」
「…怒りますよ?」
「い、いや、ちがうの!いまのはちょっと格好つけたくて…」
本当に気ままで、捉えどころがなくて手に負えない…!可愛いけど、ほんの少しだけ相手にしたくない感じ。私の意地が悪いのかな?
少し距離を取って問いかける。この子、前よりもひとまわり大きい?
「またお姫様を探しているのですか?」
「ううん…」
違うのか。ジュリー様の妖精研究はひと段落つきそうだ。なにやら危険な魔法を開発してそうな…
「今日はね、おねえさんに会いにきたの!」
「え…。私?」
「おねえさんのまわりは、たいくつしなさそうだから!」
これは、少し考え方を改めないといけなさそう。この子は世間ずれ…妖精界ずれしてなさそうだと思っていたけど、根は妖精ということか。私は前この子に会ってから、過大評価されて囚われたり、自分の意思に反して人を殺しそうになったりと散々だ。とてもただの取り巻きとは思えないくらい、いろいろなことがあった。
そして、これからもいろいろと起こるのだろう。どうして知っているのやら。
「妖精との関係を必要以上に深めるつもりはありません」
「そ、そっか…」
目に見えてしょんぼりしているが、これも今だけだ。どうせすぐに気分を変える。妖精自体は、どう考えても操れない。
「でもね、おねえさんは、きっとわたしを頼るよ」
「頼る?」
この子は何ができるのだろうか。まだよく知らないから、なんとも言えない。
「あなたは他の妖精とは少し違うみたいですね。ですが、私はあなたの力は借りませんよ」
「ふふん。じゃあ〜、たとえば、わたしのよばれ方はね、"みずかがみ"なの」
なるほど。これで、彼女の持つ魔力が予想できる。あ、しまった。つい耳を傾けてしまった。彼女が力を教え、借りさせようとしているのに気づくのが遅れた。
まったく、種族として悪戯を好む妖精の力を借りたら、どんなしっぺ返しがあるか…。
「ともかく、妖精さんとの話は私には畏れ多いです!失礼します!」
「え〜?そんなぁ〜!」
私の前に立ち塞がろうとする妖精を手で優しく避けて、お手洗いを出る。鏡の中にもこの妖精は普通に映っている。うーむ。
「じゃあ、これだけ!わたしはこのがっこうの中の、とあるばしょなら出てこれるから!また話そうね!」
「…わかりました」
たぶん水面があるのが条件とかなんだろう…。
私は彼女の助けを借りることになるのだろうか?




