二章(一年目六月の五)
郊外の実習が近づいている。
学院一年生は、この数日間の実習で、魔法や魔法にまつわる生物について学ぶ。実習先はリゾート地の近くの森や草原。広い宿泊地のためにこうなったんだろう。
そんな場所なので危険はない。けど、何か起こりそうな気が。
「こちらより少し暑いでしょうから、薄い服をお勧めいたしますわ」
「ジュリー様がそう仰るのなら」
「私も、暑いのは苦手です…」
帰宅し、メイドに服を詰めてもらう。ジュリー様はいったい何人連れていかれのかな。
翌日、私たちは魔導鉄道の一室で談笑していた。流れていく風景が新鮮である、馬車より速い!
「ジュリー様、鉄道はお好きですか?」
「ええ。この音は少し騒がしいけれど、調度品もあり、真ん中の扉や備えられた椅子に奥に長い空間。面白いと思いますわ」
「そろそろお昼?」
ジュリー様との遠出に少し興奮しているような私と対照的に、取り巻きCはいつもと変わらない。つい笑ってしまった。
取り巻きCの分をはじめとして、こんな状況でも平然と振る舞うメイドたちによって、料理やドリンクが手配された。さすがにここまでの料理はやりすぎな気もする。鉄道内でも食べたがる貴族がいるんだろう。
ふと、メイドの一人がジュリー様に話しかけた。第一王子がジュリー様に会いたいらしい。火属性最強の一角、第一王子。もし模擬戦したら、私に勝ち目はあるかな?間違ってあの綺麗な顔を傷つけてしまったなら、私は立ち直れなそう。やがて第一王子が現れ、ジュリー様に話しかける。
「少し暇になってしまってね。話でもどうかな」
第一王子は鉄道の揺れで少しふらつきながらも、真面目な面持ちで何か囁いている。内容は聞こえない。くーっ、羨ましい!あの距離感。王子は紳士だし安全だけど、それはそれとして嫉妬。
いや、私だってやればできる。適当な理由をでっち上げてジュリー様にかなり近づけると思う。不純で結構です!
しかし、王子は本当に世間話にいらしたの?あれ、ジュリー様が私の方に視線を。何でしょうか?王子になんて飽きて、私と話したくなったのかな?我ながら不敬だなぁ。とはいえ、ジュリー様はなんでこっちを見たんだろう、私の顔が見たくなったとか…?だったら恥ずかしいです。後でいくらでも見てください。私も見たい。
「占いによると、どうやら貴女の身に少しばかり、危険が迫っているらしい。気をつけた方がいい」
「紅茶占い…ではありませんわよね。王家直属の占星術師ですの?ご忠告には感謝いたしますが、私にはこの子達もいますし、心配は無用ですわ」




