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二章(一年目六月の四)

話し込む私たちは、後ろのドアが静かに開いたことに気づけなかった。その上、真後ろに近づかれるまで。


「……みーつけたっ」

「ひっ!!!」


心臓に悪いです!私も淑女にあるまじき声を上げてしまった!囁かれるの癖になりそう。


「勝者は二人ですわね!これは困りましたわ…」

「ジュリー様、驚かさないでください…」

「それより、聞いてください!鎧が、鎧が歩いてるんです!」


私たちの後ろをとっていたジュリー様と取り巻きCに事情を説明する。C、いつの間に部屋の中に?その時、遠くから足音が聞こえた。こっちに来る。ドアをガタガタと震わせる音。Bはすくみ上っている。ドアが少し開いた。表面が光ったのが見えた。


「あ、あれです!あれが例の鎧です!」

「魔道具のようですわね。逃げますわよ〜」

「え、あれは壊さないんですか?」


ジュリー様は別のドアに向かって走り出した。ジュリー様の火力なら大抵の金属が敵ではない。私の疑問にBも頷いて同調する。しかし、ジュリー様のお考えは違った。


「あれを倒しても、面白くないでしょう?」


そんな事を言っているジュリー様だが、私には、校舎を走り回るのを楽しみたがっているようにしか見えなかった。


ジュリー様は悪いことを思いついたようだった。虫一匹いない校舎に声が響く。私は奇妙な寂しさを感じた。


「せっかくですし、あの鎧を鬼にしますわよ!皆で鬼ごっこしましょう」

「そ、それって命がけじゃないですかー!」

「魔法を解禁しますわ!」


そう、なまくらとはいえ、あれは剣を持って後ろを歩いている。私たち取り巻き集団は、すぐさま杖を取り出した。


「でも、私の魔法は逃げるのに不向きですよ〜?」

「貴女は運動がお得意でしょう?壊すのは駄目ですわ」


取り巻きCは、魔法の属性が破壊の類いばかりなので、抗議を挟んだ。というか、壊したそうだった。しかし、ジュリー様に言いくるめられた!でも、力を強くして、階段を一気に移動とかはできるのだろう。彼女は校内に女性ファンも多い。背もあるしスポーツも強い。私も質問。


「ジュリー様、勝利条件は…」

「そうですわね、最初に校舎入り口に着いた方が勝ちにしますわ。それでは、散開っ」


ジュリー様は考える振りをして答えられたが、きっとこの質問も想定済みだったのだろう。私としては取り巻きとしてはいい感じだと思う一方、ジュリー様を驚かせたいような気もしてしまう。さっきの囁きの仕返しもいつかしたい。


ジュリー様は雷・風・火・水・木、どれを使われますか?私は風を使えるので、加速します。まあ、風しか使えないんだけれど。直線の多いルートを選択して飛んだ。


取り巻きBは、床に氷を張っている。転びそうだった。取り巻きCは単純に足の速さで加速していった。ジュリー様は…?え?魔法で鎧の速度を強化?何してるんですかー!


「早く逃げるのですわ!」


ひどいマッチポンプ…そして、私は窓を開けて出ようと思っていたのに、これでは追いつかれてしまう。渋々室内で飛ぶことになった。


結局、私よりも取り巻きCの方が早かった。窓さえ開けられれば。でも悔しがってるのは秘密。


「ジュリー様を驚かせたいです。ちょっと隠れてきます」

「いいよ〜」


しかし、


「リリー!リリー、出てきなさい」

「申し訳ありません!あの、ジュリー様、お怒りですか?」

「私から隠れるとは、感心しませんわね」

「そ、そんな…」


迷子のような気分でBとCに視線で助けを求めたけれど、Bはちょっと笑ってるし。あれ、ジュリー様怒ってない?


「リリー、私に見つめられるのは嫌?」

「いえ、そんなことは」

「リリーが私を避けているようで悲しいですわ」


嘘でもそんな顔しないでください…。でも、冗談とはいえ悲しそうなジュリー様もまた。


「ジュリー様、また遊んでください」

「よく言えましたわね」

「ありがとうございます!」


撫でられた。手懐けられた?その必要はないのに!

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