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二章(一年目六月の二)

そろそろローズ・パークの季節になる。ジュリー様をお誘いすると、あっさり了承してくれた。日々多忙でいらっしゃるというのに。というか、お誘いした時に、少し嬉しそうな、いや、正確に表すとどこか安心したような、そんな表情をされた気がする。私はどんな体験をしても美しいものを愛し続けるつもりである。


さらに、今日は図書館で文献探し、書店で魔道書の購入もご一緒する。何だろう、最近ジュリー様といられる時間が増えたような。


まずは学院の図書館。劇場のような広大な空間に、信じられない量の蔵書。本を見つける魔法がなかったならば、一冊探すだけでも苦労するだろう。


「あれ、この書き込みは…」

「リリー、どうかいたしまして?」

「いえ、この本に書かれている文字が、どこかで見たことのあるような気がしまして」

「あら、元の文章が塗り潰されて…。まったく、書き込みは禁じられていますのに、危険な魔道書だってありますのに。困りますわね?」


ジュリー様は今日もお美しい。何を問いかけられても同意してしまいそう。しかし、この埃が積もっていた本の書き込みが、既視感のある筆跡というのはどういうことだろう?歴史に残るような文書を書かれた方…いや、考えすぎか。


「ですが、意味は通ります。きっと訂正のつもりなのでしょうね」


ジュリー様は本の内容の理解が早い。流石である。古い本は言い回しも分かりにくいというのに。


ふと、『伝えられなかった魔法』という本が机の上に置かれているのが目に留まった。失伝した魔法のこと?いや、この本を持ってきたのは、


「ジュリー様、この物語はとても面白いです!恋に破れた騎士が帰路の途中に」


恋愛好きの取り巻きBか。なら、きっとこれも魔道書というより、空想上の物語だろう。彼女も文献を探しに来たはずなのに、もう他の本ばかり持ってきている。


「文献は見つかりまして?」

「必要な本は取ってきました。ですが、まだ、本の中に記述を発見するところまでは」

「怠けてはいけませんわ」

「はい、その。申し訳ないです」


ジュリー様もしょうがないなぁという風情である。いいなあ、私もあんな感じにたしなめられたい。


「あーあ、恋愛の物語でもある魔道書とかもあればいいと思うのです」


Bは懲りてなさそう。しかし、私はなぜあの机の上の本に目を惹かれたのだろう。何か理由がある気がする。


本を戻していると、本棚の隙間から誰かの目が見えた。こっちを見ている!つい声にならない叫びが。


「リリー、その方はここの司書ですわ」

「ああ、失礼しました。つい驚いてしまって」

「…いえ、こちらこそ失礼を…。…その本に興味がおありな方は、どんな方かなのかと思いまして」


少し自己紹介を。


「希少属性を扱われるというランジア様ですか」

「…恐縮です」


ランジア様はここで余計なことを私に尋ねる。


「それで、なぜ拷問具の本を」

「あ、それは」

「リリー、貴女そんな本を読んで」

「いえ、ジュリー様、これは一時の気の迷いなのです。あまり気にしないで頂けると」

「今回ばかりは聞かずにはいられませんわ!私、貴女に興味がありますの」


あああ、ジュリー様、こんな時にそんな表現を使わないでください!また是非、今度は別の機会に、言ってくださいね。

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