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二章(一年目五月の八)

学校を休んだ。あの生徒、そしておそらくあの本では起きなかった襲撃。私が、あの本より魅力的になっているのかもしれない。


迷惑な話です!


私は、借りている部屋で本を読んでいた。窓から見える街並みは今日も明るく、平和な風景。家の前に馬車が止まった。下の階の店にジュリー様が入って…ジュリー様?


なんで専用馬車の時点で気づかなかったの!?


でも連絡もなしにだよ!


ジュリー様の目的を推し量る。私ならできる。私を速やかに何処かに連れていかれるおつもりなのでしょうか?服装に乱れはないかな?今日は普通にブラウスとスカートだよ、きっと大丈夫でしょうが本当に?鏡の前に、大丈夫。


ノック。疑われないくらい待ってから開けた。


「体調はいかが?」

「思っていたほど、悪くはありません。こんなところまで、如何されたのですか?」

「リリー、貴女を宝物庫へ連れていきますわ。連絡もなしに御免なさいね」


そして、連れていかれた!思うに、ここ、一般には座標すら公開されていない場所なのではないだろうか?ジュリー様の家が管理してるのかな。ここが宝物庫のある建物だったんだ!みたいな。ジュリー様に、いわくありげなマントを羽織らされた。手触りも良すぎる。


あと、乗ってきた馬車が去ってったんだけど、何で?帰りは他の馬車が来るってこと?すごい引っかかる、気になる!


「ジュリー様、私みたいなのが入っても大丈夫なんですか?」

「これから行く部屋に入れるのは、本来は王族か、より詳しくいうとその時代の王の三親等までですわ」

「私みたいなのが…」

「ここだけの話、今回は、私、横紙破りをしましたの」


急に耳に囁かないでください!死人が出ます!


「…そうなんですか」

「貴女に最も相応しい魔道具を選定する為なのですわ」


考えているふりをする。そうして動悸が落ち着くのを待ちながら、実際に考えていた。これは、私が身を守るための魔道具をってこと?王家の宝物庫から?うーん、身に余る光栄だな〜私には。でもそんな事はいいからもっとなにか囁いて下さいよ。私が死なない程度にね…!


動悸は落ち着かなかった。


宝物を守っていると思しき若者にジュリー様が挨拶する。歴史ありげな衣装、この仕事を受け継いできた一族という事だろうか。


「彼らの他にも、ここには超一流の防犯対策が備えられていますわ!ただ、私がそれを口にしない理由、貴女ならおわかりでしょう?」


そりゃ、自分から意味もなく防衛設備をひけらかすのは、一流じゃないから、でしょうか。


宝物庫の中は信じられない広さだった。ジュリー様は、私に防衛のための魔道具を使って欲しいらしい。明らかに格上に対するものではなく、搦め手対策の。


あれ、懐中時計が狂ってる?


「リリー、どのような魔道具が欲しい?」

「私は…目立たないもので、防衛のためでしたら幻影等を嘘だと判断する魔道具、あるいは私が魔法にかかるのを遅らせる魔道具、等でしょうか?」


しかし、あまりの広さに笑えてくる。これが王家の力の一端…!これなら、どんな魔道具だってあるはずだ。あの人を消すマフラーみたいなのもあるんじゃない?


「貴女は本当に欲がないですわね」

「できれば、半永久的に効果を発揮するポーションや、私と一体化するものなど、安全なものがいいです」

「わかりましたわ。今探しますわ」


ジュリー様が使ったのは、あの杖の店で見せたような魔法だった。条件に適合するものが『魔力の波』のようなものに反応するのだろう。


「いくつかありますわね」


ジュリー様の頭の中では、おそらく普通の人間には同時に処理できない情報が並列し、くらべられている。


「良さそうなものがありましたわ!ある魔力を取り込むための飲み薬のようですが、取り敢えず見に行きましょう」

「イヤリングとかは壊れそうですし、いい装飾品ですね」


五分くらい、階段を行き来した。この複雑な構造も、防衛設備の一種なんだろうなぁ。


「あ、これですね」

「え、本当ですの?ああ、説明にそう書いてありますわね」


なんだか、体が勝手に動いて薬を飲もうとする。そして害意も感じない。


「少しお待ちになって…リリー、それは違いますわ!」


私はもう、少しだけ飲んでしまったのだが。効果は?吐き出せるかなあ?

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