序章2
さて、この日のために予約しておいたスポットがいくつかある。超高級ワインが輸送されるというルートを、あらゆる手段で調べた私は、それが破壊されそうな場所が見えやすい店を予約したのだ。万事ぬかりない。財布の中以外は。
さて、1店目。気持ち早めにランチを平らげた後、窓の外にそれっぽい馬車を見つけた。あ〜、ここの曲がり角ではないか。私は席を立った。会計。街中を最短ルートで移動する。次の店へは、あの早い馬車の後ろにこっそり乗るのがよい。
さあ、2店目だ。急いで一番量が少ないランチを食べると、丁度馬車が来た。さあ、ここか?あ、違うみたい。お会計お願いします。3店目へは魔法で移動する、本当は学校外では禁止なんだけれど。
3店目に入った瞬間、怒号と何かが崩れる音が聞こえた。急いで窓に駆け寄る。丁度いい、ぴったし!怪しい見た目の青年が、まさに馬車と正面衝突。勝つのは青年。解せぬ。いったいどんな魔法なんだろうな〜、私わからないや。
まあ、それはともかく。ワインが飛び散る瞬間だ!あ!!!うん!おおーーー…。圧巻だった。綺麗な噴水。確かに周りがワインまみれだ。
さて、この後犯罪者である青年と、ワイン瓶を割られてブチ切れた陰の実力者系商人の戦いが始まるんだ。特等席で見させてもらおう。
ガチャッ。おや、店にだれか来たようだ。でも、今は目が離せない。あ、商人が出てきた!すっごい怖い顔。
「君、ちょっといいかね?」
え?
私??私何かした、憲兵さん?
「君には犯罪者集団の一員であるという疑惑がかかっている。そう、今木っ端微塵になったワインを盗もうとしていたのではないか?」
動揺で話が耳に入ってこない。ええい、何やらこちらもそこそこ厳しい顔だが、今はあっちに集中だよ、憲兵さん。
「君、何を言って…ん?なんだ、あの魔法は…?」
よしよし。この調子で。綺麗な花火を、一緒に特等席で楽しみましょうや。