二章(一年目五月の一)
「綺麗な花々ですね」
私たち四人は、学院の授業のため、花畑に来ています。植物園に行っても良かったのですが、折角のお天気なので、と市街地から出ました。馬車に乗って数十分。同じくらいの距離で庭園にも行けるのですが、今日は花を自由に摘めるお花畑です。
「リリー、本当にそう思っていますの?」
「そうですよ、なんだか具合が悪そうです」
いや、本が燃えちゃって。名作だったのにぃ!
「私は大丈夫です」
「怪しいですわね」
「この花は、食べれる」
ちょ、取り巻きCが私の口の中に花を!野草を!自然の恵み!頑張って上品に食べます。
「さあ、花々の採取を始めましょう」
「美味しかった?」
いや、どう答えれば?一見厳しそうな見た目の私に対してよくやるよCは!まあ、きっと私のことを分かっているのだろう。あの本に記載のあった美味しい場面さえ見逃さないですむのなら、私は全てを寛大な心で受け入れる。
「ご覧なさいリリー、可憐な花でしょう」
「ジュリー様、この花は何というのですか?」
ジュリー様に花の説明を受けていると、花の香りと共にジュリー様の洗剤の香りが。いや、ジュリー様の香り?ジュリー様はお花なの?もはや怖いです。ウツボカズラから抜け出せないよぉ〜!
「そういえば、貴女に付き纏っている子がいるらしいわね。同じ学年の生徒でして?」
「はい。性に合いません」
付き纏われるのは。取り巻きであることがレゾンデートルな私は、逆なんです。ジュリー様もおわかりでしょう?
「ジュリー様、花畑から離れすぎではありませんか?」
「そうですわね、そろそろ戻りましょう」
けっこう遠くまで来てしまった。もう周りは森。この季節は、風が心地よい。
「あ、あの草も食べれる」
Cが先行し、足元に何かが当たった音。木材?
「建物の残骸でしょうか」
「何かあったのかもしれませんね」
さて、少し足元を探してみようかな。私たち四人はしばらく探索をして、どうやら数か月前に何かここにあった建物がが燃やされたことを知る。また、私は見たことのない種をひとつだけ手に入れた、建物との関係性は不明。
「さて、帰りますわよ」
ジュリー様に帰るように言われると、なんだかジュリー様が姉のように感じられた。そう、自然に。畏れ多いことです。ジュリー様が姉だったら、姉離れできない。私は自信を持ってそう言える。その事だけには自信が持てる。あと、多分人格が変わっていたのではないかと。何にもできなくなりそう。私の命はジュリー様に委ねられていることだろう。
拾わなければよかったのに。




