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一章(一年目四月の十三)

さて、私は祖父の家に来ています。理由としては、当然「あの本」を再確認するという大切な目的があるのですが、その他に、猫を可愛がりに来たことが挙げられます。ここの家の猫は、威厳すらひしひしと感じさせるそれはそれは可愛らしい猫なのです。


祖父に会いに来たわけではありません。私の祖父は、大の旅行好き。今もいませんし、めったに会えません。博識な祖父。特に、魔法に関係する生物の知識は豊富でした。前に会ったのはいつだったっけ…。


そう、あの時は祖父の書斎に入れてもらったんだった。書斎には私が見たことのないような地名しか載っていない地図が貼られていたり、あとは怪物。怪物の像がたくさん飾られていたのは怖かったなぁ。三つ目で六本足の象牙椅子に座った怪物は、ミニチュアなのに血の匂いさえ感じさせる恐怖の怪物、とても記憶に残っている。あれ、長い長い鼻だったのもその怪物だったっけ?

そんな異質な空間でしたが、祖父の雰囲気にはよく合っていた。あ、あと水槽もあった。水槽は綺麗だったなぁ〜!


「このクラゲ、キレイですね」

「リリー、このクラゲは魔法のクラゲなんだ。水を入れ替えなくても、陽の光から魔力を作り出して行きていけるんだ」

「じゃあ私が直接魔力を注いだら?」

どうなるの?

「やってみなさい」

数年前の私は、水槽越しに風の魔力を少し流し込む。

魔法クラゲがふわりと浮いた。浮いて、微かに光る。

「光った!?」

「そうだ。余ったエネルギーを、このクラゲは光に変えて放出するんだよ」

「じゃあ、もっと多くの魔力を注いだら?」

祖父は水槽から小さなクラゲを取り出す。右手に乗せて、濃い風の魔力を流した。

バン!クラゲは光になって消えてしまった!

「え〜…難しいです」

「確かにこの現象の理解はまだ早かったか」


そう、確かそんな感じの会話だった気がする。懐かしいなぁ〜。あの頃も、私は「クラゲが可哀想」だなんて全く思わなかったし、あの時点で悪役令嬢の取り巻きになる運命だったのかも?


さて、あとは猫たちを愛でて本を読もう!


——————


「嘘…!そんな!」

私は、本棚を見せられ思わず叫んでいる。

「どうしてこんなことに!」

「申し訳ございません。お嬢様、あの本は魔本だったのでしょう。いずれ燃えるように仕組まれていたのです」

執事は私が本棚を見えるように移動する。

「ご覧下さい。他の本に、炎は全く燃え移っておりません。魔法の炎だったのでしょう」

「そんな…生きがい、というか人生、だったのに…」

私は床に崩れ落ちる。

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