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一章(一年目四月の十一)

今日は、闇オークションに来ております。違法すれすれのものとか、公には口に出せないようなものも出品されるこのオークション。私も実際に参加するのは初めてです。


「お姉様、何もこんな所にまで…」

「幽霊の存在を確認するためには仕方ありませんわ」

「そうですね。あの子にも見せるべきでしょう」


そう、私たちは、霊的なものの存在を確認するためにここにいる。どうもどうも、ジュリー様の家の前を走るお化けに対峙したことのある三人、ジュリー様ご本人と取り巻きABです。ジュリー様が呪いの魔道具を落札したいと仰るので、我々二人は(お化けを既に見ているのにも関わらず)馳せ参じた次第です。


まあ、実は、あの本には主人公が霊を祓う話があり、ジュリー様が主人公に霊をけしかける必要があるのですよ。だから、原作通りに現実を進めるなら、この同行は必須。今もその方向の発言をした。まあ、暗い所でジュリー様と一緒に行動したいし。


場所が場所なので、お姉様、と呼ばなければならないのも良い。ジュリーお姉様、お待ちしておりましたわ。ジュリーお姉様、私みたいな妹はお嫌いですか?


お姉様について考えている間に、オークションが始まっていた。


「次の商品は、こちら!さる急逝した天才画家、その未発表作品でございます!」


「お姉様、あれは…」

「間違いなく彼の筆ではありませんわ。第一…」

「こちらの絵、題名を『怨霊の叫び』といいまして、幽霊を溶かした絵の具で描かれたという、いわくつきの絵でございます!」


ジュリー様はその絵を落札した。ジュリー様が変な絵に踊らされていると考えると業腹だが、ジュリー様はそれをお認めになった上で楽しまれているので、何も言うまい。大した金額でもないそうだし。


関係ないけど、ジュリー様はダンスもお上手です。また見たい。


「次の商品は、精巧に作られた人形にございます!皆様も、一目見ればその精巧さに驚かれることと思います!こちらです!」


檻の中に入れられた人形は、一見小さな子供のように見えた。しかし、動くことはなく、どうやら本当によくできた人形のようだ。


「なぜ檻の中なのか!こちらの人形、ご覧の通り非常に人に似ておりまして、時々自分が人間だと勘違いして動き出してしまうのです!」


私たちは不安になり、ジュリー様の表情を伺う。


「流石にあれは持ち運びが不便ですわ」


そうジュリー様が仰られたので、安心して視線を戻す。人形はどうにも不気味で、私はあれが今にも動き出さないかと心配に思った。


その後、ジュリー様はいくつかの品を落札した。その中には『本物』も含まれる。私もひとつだけ、落札してみた。


「さて、本日最後の商品はこちらの魔道具!首に巻きつけると透明になれるマフラーでございます!」


その台詞に様々な方向から疑惑の声が上がる。私も信じられない。全方向から自分が見られなくなる魔法なんて、現在は発見されていない。魔道具は魔法を出力するものだから、そんな魔道具もありえない。司会に実演するよう野次が飛ぶ。


「申し訳ございません、私にはこのマフラーを着用する権利がありません、またこのマフラーもきまぐれな魔道具とされており…」


騒ぎはどんどん大きくなっていき、客席から飛び出し司会のマフラーを奪う者まで!彼はそれを首に巻きつけ…


消えた。彼がまるで最初からそこに存在しなかったかのように、マフラーは自然落下。


「こ、これで効果はおわかりいただけたでしょう。如何でしょうか!」


真っ先に値を出したのが隣にいた取り巻きBだったので、私は驚いた。だが結局、値段ははるか上に釣り上げられ、落札した人も大層なお金持ちのようだった。


オークションが終わり、私たちは帰りの馬車で話し合った。


「なぜ貴女は、あのマフラーを買おうとしたの?」

「それは、あのマフラーには巻いたものを消滅させる力があると思ったからです。幽霊があれをすり抜けられないのなら、あれは幽霊を消し去ることができるでしょう」


これ、Bは私たちが前に倒しきれなかった足のお化けについて考えていたってことっぽい。


「もしもの時に私を守るために頑張ってくれたのね。かわいらしいですわね」


羨ましいので私も(マフラーの会話に)首を突っ込む。


「でもおね…ジュリー様、あのマフラーに本当に人を消滅させる、あるいは透明にする力があるのでしょうか?消えた彼はサクラでは?」

「勿論、その可能性もありますわよ。ですが、あのマフラーの落ち方、そして気配が消えたことから、私はそうは思いませんわ。おそらくあの哀れな方は、この世界から消滅したか、何処か遠くへ飛ばされたのね。司会の方も驚いていましたわ」


なるほど、しかしあれがそう大した魔道具であるとは思えない。発動はごく稀にしかできないのだろう。私は、ジュリー様にひとつお願いをと思って口を開いたが、


「ジュリー様、どうかマフラーを巻いたりして、ここからいなくならないで下さいね」


そうBが言うのを聞き、思い直す。巻くときは一緒ですよ、は模範解答ではないですよね。そうですよね。あー、ジュリー様と二人きりで南の島へ行きたいな〜。

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