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一章(一年目四月の六)

さて、四月になり、魔法学院に近い別荘に移ったジュリー様には、悩みがあるそうな。とはいえ、普通は話してくださらない。ジュリー様が簡単に弱みを見せるなんてことはないから。だから、何だか悩みがあるっぽいジュリー様と長時間会話し、ある程度打ち明けてくれそうな話から聞いて、ようやく聞きたい質問をした。


「最近、真夜中に目が覚めるんですの」


聞けば、ジュリー様の寝室に、外から何者かが走る足音が聞こえるらしい。毎晩。私以外にもジュリー様を観察している人がいるのかも?ん?真夜中走る?何か引っかかるような…。


まあいいや。ジュリー様の家の前を取り巻きBと三人で見に行く。私は、足音を立てている人に会った時のため、靴の音を消す魔法を準備した。C?あの子はケーキがたくさん出るお茶会に行ったよ。


さて、こちらは普通の綺麗な道だが、ジュリー様の部屋からは遠いだろう。道と屋敷の間には中庭があるし。ここから足音が聞こえるとすれば、音が鳴りやすい靴なのかもしれない。ハイヒールとか。でも、ハイヒールで夜道を走るって、相当な方ですね。


想像を真似して走ってみると、何か既視感を感じた。あれ、私、真夜中にここ走った事ある!ジュリー様が寝てるかどうか急に気になって、私の借りてる家から青春の衝動で走ってきたんだった。ジュリー様の安眠を妨げてるの、一回は私じゃん!不審者私か〜。でも一回だけだから!毎日、というのは妙な話だよ。私じゃないよ。


ぞくっ。走り終えるとなんだか物凄い寒気がした。何かがまずい。私は、ここにいてはいけない気がする。慌てて、馬車に戻る。馬車にはジュリー様がいらっしゃる。ジュリー様となら私は無敵!まあ、あの物語では、気を失ったジュリー様を守って、取り巻きが盾になる描写がありましたけれどね。取り巻きはボロボロにされてた気がする。


でも今は大丈夫!根拠はないけど大丈夫!ジュリー様に軽く抱きついたら安心できた。


「リリー、どうなさいましたの?貴女がこんなに蒼褪めるなんて。一度落ち着きなさい」


軽く涙目になってしまった、私。でも、あー、落ち着いた。落ち着いたら、取り巻きBを置いてけぼりにした事を思い出した。あっちゃあ。


しばらく抱きついてからBの様子を見に行きます。嫌々だけど。


「リリー、貴女もう落ち着きましたわね?顔に赤みがさしてますわよ?早く私から離れて行動しなさい」

「っ、失礼しました」


そして、恐怖で棒立ちになっているBを見つけた。聞くと、ハイヒールをはいた足が(足だけ!)、駆け抜けていったらしい。誰かを探すようなそぶりをしながら。怖ッ!


魔法で倒せるだろうか、それ。あの寒気の原因なら、結構強いお化けかも。なぜか狙われているらしい私が囮になればいいのかもしれないけど、嫌です。それは最終手段、弱ったところをジュリー様に見せられない。というか余裕を持ってジュリー様を観察できなくなるのが嫌。ジュリー様の別邸の中庭、あそこは強い魔法で保護されているはず。とりあえずあそこに行こう。


中庭の石段とかも一応確認する。ほぼ騒音のヌシはわかっているけど、他がそうかもしれないし。そんな言葉じゃ誤魔化されないって?そうです、現実逃避ですよ。お化けから逃げてます。


あれ、お庭の石像が私の後ろを睨みつけてる?「う、後ろ…」って、道の方に何が見えてるのB!


「…何もいませんよ」

「そうですわ!驚かすのはやめなさい…いや、私たちが見えてないだけですの?」


Bは嘘をついているとは思えない表情だ。私とジュリー様、霊感皆無?やった、オソロだ。


いい加減、なんとかしなくては。三人で、道へ向かう。うっ!そこには、直視できないほどおぞましい、足が二本。私にも見えた!風魔法圧力最大!


「リリー、何かいますのね?」


え。全力で撃っても傷一つない。この感じ、ジュリー様のどの魔法属性でも殺しきれない強さかも。あ、B!あれに向かっていくなんて、やけになったの!?あ、あの足を捕まえた!手掴み!


「リリー、あの消音の魔法を使ってください!」


そうだった、私としたことが、忘れていた!敬語で諭され、でも魔力がない。ジュリー様の手に必死で、でも軽く触れる。魔力、少しお借りします。Bはまだ頑張って押さえてる。凄い根性。消音!両足できた、あ、蹴り飛ばされた!ちょっと勿体ないけど、心配だし、折角繋いだ手を離して駆け寄るよ!足は逃げてったし。


「何に攻撃されたんですの?」

「大丈夫!?」


Bは「一矢報いたぞ」って顔でこっちを見て、気を失った。取り巻きBー!あと、最後までジュリー様は見えてなかったんだな〜。


その後、気づいたBと共に、私は帰宅した。私は、ジュリー様相手には解決した雰囲気で押し通したけど、これ足自体は倒せてないからね。真実を伝えてジュリー様のお肌が荒れたりしたら嫌なので伝えなかったが、きっと今晩も、あの足は道を走り回るのだろう。音もなく。怖い。


翌日、


「二人のおかげで静かになりましたわ!」


とのこと。今回の収穫、ジュリー様はお化けが見えない。ジュリー様が幸せそうで本当に良かった。だけれど今晩も、ジュリー様に挨拶をしようか迷いながら、ハイヒールをはいたあの足が、あの道を通るのかな。もしくは、もうあそこへは行かず、私を探しているのかも。

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