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9.山の修行

コロナよ~終わってくれ~

山の空気が吸いたいんだ。

ムサイ男に囲まれて、さすがに効果があったのか翌日は静かだった。

だが、夕方女剣士が現れた。


「そこなのものはリュウどのですかな?」

「あ、はい。俺がリュウです」


きちんと話してくれる人とは会話しないとな。


「ならば、こちらギルド長から手紙を頼まれましてな。しかと確認願う」

「はい。確かに。受け取ったらサインすればいいですか?」

「うむ。聞いていたのと違うが、リュウ殿は普通の御仁だな」

「誰に聞いたんですか?」

「理由もないのにいきなり意地悪をされて用件も伝えられないと」

「あはは。ちょっと行き違いがあったようです」

「そうであったか。確かにサインはいただいた」


女騎士は去っていった。

最初からこうしてくれたらいいのに、痴女送りつけるから話が伝わらないんだよ。



で、ギルド長からの手紙にアレンの事が書いてあった。

「あれからしばらく大人しくしていたが、最近またギルドに現れるから知恵を貸してくれ」だと?

いやいや、なぜ俺を頼る?

ギルドで働いてる職員はからくり人形で頭がないのか?


俺は「忙しいので断る」と書いて返事を出す。

一応返信はしとかないとな。




その一週間後、痴女ことチルルがまた来やがった。

『部外者立ち入り禁止』と書いてあるのにずかずか入ってくる。

素振りをしていた俺はあからさまに嫌そうな顔をする。


「ちょっと!顔見た途端、嫌そうな顔しないでよ。こっちも嫌なんだから」

「ヤー、トウ」掛け声をつけて木刀を振り回す。


「ちょっと、聞いてんの?あんたのせいで〇×△□、〇×△□…」

「ヤー、トウ。ヤー、トウ。」掛け声をつけて木刀を振り回す。


完全に無視して型を決めていく。

木刀を振り回してるのに、チルルは俺の間合いに入って触ろうとしたので、剣の腹で「メーン」とやった。

「きゃっ」尻もちをつくチルル。


「なにやってんだよ!神聖な場所に入ってくんな!」おれは怒鳴る。

「そっそんなこといったって「ほらどけどけ!」」と尻を木刀で叩いて追い出す。

「ケツッ!」ぺしっ。「あ、そこ」

「ケツッ!」ぺしっ。「ひやぃっ!だ、だめ」

「ケツッ!」ぺしっ。「ぴやっ!そこ弱いの」


四つん這いで逃げ回るだけで出て行かない、ゴキブリのようだ。

その姿をヘノミチ先生に見られてしまう。


「バカ者!ここは神聖な道場。山にこもって反省してきなさい」と、怒ったふりして逃がしてくれた。

俺はありがたく山へ向かった。

先輩二人も監督不行き届きとして山に一緒に行ってくれる。




まだ真っ暗な山の早朝。

小さな光の魔石が入った灯りを持って、真っ暗な山道を進んでいく。

この世界の靴は布か皮なので、霧でぬれた山道は滑って危ない。

30分くらいかけてゆっくり山頂に到着。

こぼれそうな星だらけだった空に尾根の形がゆっくり現れていく。


夜明けだ。

歩いて火照った体がどんどん冷やされていく。

神聖な空気を感じて、ご来光に手を合わせる。

太陽が姿を現して、緊張の矢のような光で辺り一帯を包む。


日本と何も変わらない。

霧の下から鳥のさえずりが聞こえる。

俺はそれを見下ろしながら空気を吸い込んで深呼吸する。

うぅ。寒いな。

現代にあるフリースの存在が懐かしい。


食事も洗濯も生活するうえでのことを全て自分たちでやらねばならない。

水の調達の仕方、獲物の取り方、捌き方など全て教えてもらえる。

何てありがたいんだ。


ブラック企業では教えるなんて時間は存在しない。

「あれとこれやっとけ」でおわる。手順書もなく、先輩に聞けば怒られて、教えるなら手伝えとさらに仕事が増えていく。

今思うと俺よく生きてたよな。


それに比べて異世界は毎日楽しくキャンプだ。

そういえば俺は山が好きだったな。

山岳トレイルとか大学時代にやってたっけな。


俺は勇者の事なんて忘れて楽しく過ごしていた。

今日はウサギを捕まえて、皮をパリッパリッに焼いて香草のたれをかける。


「なあリュウ。そろそろ山降りないか?」

「えっ?先輩、もうですか?」

「実は俺たちそろそろ練習試合があるんだ」

「それはぜひ見学したい!」


山はまた後でも来られるし、本物の剣士試合は見ておきたいところだ。

先輩と一緒に、俺もいそいそと山を降りるのだった。




俺が山へ行ってる間、3度もギルドの奴らが来たそうだ。

魔物が徘徊する山だと言えば諦めて帰るんだとか。

それだけしつこいのなら自分たちでどうにかしろよ。


戻ってからは先輩の稽古を見学させてもらえるようになった。

ありがたい。

やはり本物は違うな。

<威圧>スキルはぜひ覚えたいところだ。


そしてまた手紙が来る。

ギルド強制招集だ。Dランクになると断れない依頼だ。

練習試合を見たいのに。さっさと終わらせてくるか。

おれはしかたなく港町にあるギルドによってみる。


「ラージ街のギルド長による招集ですね。すぐに馬車で向かってください」

「え?ここで用件聞くのはダメなの?」

「どうやら秘密の任務みたいですので、こちらのギルドには知らされません」

「そういうものあるのか」


話だけ聞くのに馬車乗るのは嫌だしな。

期限も書いてないし、練習試合を見てからでもいいか。

のんきに考えてしまった俺は数日後、またあの神の使者に会うことになるのだった。





そしてあの白い部屋に舞い戻ってしまった。

目の前にはあの怪しげな神の下請け。


「ひさしぶりじゃな」

「げ!あんたは。…ってことはあいつ、また死んだのか」

「そうなんじゃ。困るんじゃよ、死なれちゃうと。ちゃんと大人になるまでは見ててくれないと」


「あいつ何やったんだ」

「ギルド連中が相手にしないもんだから、また勝手に外に出ちゃってね。魔獣倒しだしたんじゃ」

「おおーすごいじゃん」

「それが、魔獣倒す方法も知らないもんだから、無駄に大量にひきつけおった」

「それで死んだと?」

「そうなんじゃ。それで君にどうにかしてほしいんじゃ」

「いやいや、だって俺アレンより弱いからこっちが死ぬ」


「いや、それわしが困るよ。わかった。何かスキル授けよう」

「じゃあ大勢を硬直させる<威圧>スキル。あと大量の魔力と多勢魔獣を倒せるスキル」

「スキルはあげよう。だが魔力はあげるもんじゃないんじゃ。あの地で生きていくだけで自然に増えるはず」

「むーしょうがないな。それでいいや」

「じゃあ数日だけ戻す。検討を祈っとるぞ」



山霧初めて見た時はその不思議さに感動しました。

もし、少しでも面白かったと思っていただけたのなら、

『ブックマーク』と【評価】何卒応援よろしくお願いします。


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