6.再び遭遇
見た目は中世ヨーロッパですが魔法があるため、割とハイテクなパン焼き機能もあったりする異世界。
翌朝。
昨日は大変だった。
辻馬車の揺れっぷりに尻が悲鳴をあげ、なんとかラージ街へ帰還する。
「ふぅ。あの揺れ、なんとかならんもんかな」
ベッドに倒れこんで眠ってしまった。
今日は休日のつもりだ。
馬車のせいなのかあちこち変な筋肉が痛い。
膝の裏とか、そんなとこに筋肉があったのかよと思うところだ。
ああー朝食のパンがなかった。
買いに行かねば。
よろよろしながら支度をして、ギルド1階に降りていく。
まだ開店してない時間だ。
ふとギルド募集のとこに一枚なにか貼ってある。
☆剣士の先生募集
・薄給である 一か月1銀貨
・絶対に怪我をさせないこと
・剣をあきらめさせる方向でもいい
吹いた。
いやいやいや、一か月1銀貨(一万円)って生活できないじゃん。
いたずらか。
ネタ貼って遊んで怒られても知らんぞ。
◇
俺は焼き立てパンが好きだ。
それはこの世界の人も同じようで皆、朝から開店待ちで並んでいた。
最後列の人に軽く挨拶して並ぶ。
ああー焼き立てパンのいい香りだ。
並んでいる人たちの顔もほころぶ。
この香りをかいだら怒る人なんているわけがない。
楽しみだな。
焼き立てほかほかの熱いパンを買って、我慢できず一口かじる。
うをぉ~生きててよかった。
バターと小麦の甘い香り、ぱりっぱりの耳もうまい。
おっとこれは一週間分だ。大事に食べないと。
一旦家へ戻って、朝食後は図書館で魔物の勉強。
地図をみながら俺でも行けそうなとこを絞り込む。
ダンジョンはランクD以上&成人じゃないと入れない。
そのため、そこまでは地道にがんばらないといけない。
『成人の儀』を受けなくても、職業が決まってる場合は成人として扱ってもらえる。
多分職業がある人は成人だとみなされるんだな。
俺はランクさえ満たせば入れるようだ。
神の使いグッジョブ!
そういえばアレンって戦えるのか?
もしかして戦いかたを教えるとかも入ってるのだろうか?
さすがに貴族なんだから正式な先生を依頼するよな。
先ほどのネタ「☆剣士の先生募集」を思い出して吹いてしまった。
図書館を出て、昼食は屋台を梯子するつもりだ。
ぶらぶら食べて歩いていたらなんかいるぞ!?
「腹減った」
『勇者かも?』のアレンだ。串焼きの店を凝視してる。
屋台の人は邪魔そうにシッシと追い払ってる。
貴族のくせに金がないとか笑えるなと、見てしまった。
「あ!おっさん」
誰だよおっさんって。
「じゃなかった。お兄ちゃん。これ買って!」
やばい。俺は逃げた。追いかけてくる。
こいつやっぱり勇者なのか?足が速い。
俺の高校生並みの体で、全速力で走ってるのに追いつかれそうだ。
「ま、まってぇ~。おにいちゃあああん」
角を曲がり、子供が越えられない植栽を飛び越え必死に逃げる。
ふぅ~。まいたか?
食べてる途中だったから手がベタベタだ。
どうやら公園のようだ。
噴水で手を洗う。
というか、なんで俺逃げたんだ?
関係ないじゃん!
追いかけられたら逃げるウサギじゃあるまいし。
ベンチに腰掛けて一息つく。
疲れたのでギルド2階の部屋へ戻ろう。
俺はそのまま部屋で寝てしまう。
誰かが部屋に来たようだ。
ノックしている音が聞こえるが、休みだし無視するか。
◇
翌日。
さすがにぐっすり寝たおかげで体調がよくなっている。
若い体は復活が速くていいね。
昨日買ったパンとジャムを食べる。
甘すぎないオレンジジャムは俺の好物だ。
今日も上手い。
仕事依頼の掲示板を見に一階に降りていくと何やら騒がしい。
いや、いつも騒がしいか。
受付嬢に一人の子供が絡んでいる。
『勇者かも?』のアレンだ。
あいつ何やってるんだと思いつつ、見つからないように外に出る。
あー依頼受けそこなったな。
しかたない。今日は常時受け付けのワニを久々に倒すか。
常時受け付けは依頼書がいらない。
その名の通りいつでもウエルカムな仕事なのだ。
ワニをもっていけばその数買い取ってくれる。
受付嬢に絡んでいたからさすがに後はついてこないと思いつつ、つい振り返ってしまう。
よし、大丈夫だ。
顔見知りになった門の衛兵さんに「ごくろうさま」と声をかけて出ていく。
しばらくこなかったせいでワニが増えている。
ラッキーと思いつつ、どんどん倒していく。
5匹大ぶりのを倒したので、満足して引き上げる。
ギルド解体場に持っていって、順番を待っていると声が聞こえてきた。
「あの貴族の坊や剣士の先生探してるってしつこかったな。
なんで貴族がギルド来るんだよ。先生になれる奴がここにいるわけないだろ」
「まったくだ。受付が止まって迷惑したぜ」
「結局ギルドマスターが説得して家に送っていったらしいぜ」
いろいろやらかしてるみたいだ。
勇者かもしれないし、はやくいい先生が決まるといいな。
バカだがまだ子供。修正はききそうではある。
ん?
もしかして俺も探すの手伝ってやったほうがいいのか?
だが教えられるほどの剣士なんて知らないぞ。
しかも貴族だしな。
やめとこう。
俺は換金してそのまま部屋に戻る。
気にはなるが、俺にはどうしようもない。
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