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3.勇者がいない

おいおいおいおい。ふざけるなよ。

俺は勇者が死なないように保育を請け負ったんだぞ。

なのに勇者がいないだと?


何やってんだよ。あの神の使い!




ムカつきながら街の外の草原で向かってくる角ウサギを倒す。

角があるけどピョンピョン跳ねてくるので怖さを全く感じない。

蹴とばしても倒せそうだが、一応剣の練習もかねて倒していく。


10匹倒して依頼終了だ。

ギルド解体所にもっていって証明書をもらい、受付に提出。

角ウサギは常時受け付けてるので、いつ倒してもいい依頼だ。


角ウサギの血を見てもかわいそうと思わない俺っておかしいのかな?

社畜やってて感覚がマヒしてるのかもしれないな。


露店のエールを飲んだり串焼きを食べながら宿に帰る。

角ウサギ10匹で1銀貨か。宿代と一緒だ。

食事分赤字じゃん。

勇者を探す前に生活改善が先だな。




そのまま一週間がたった。

俺の生活改善は順調で最近は小型ワニを倒してる。

その名の通り中型犬くらいの小さなワニだ。街に流れる川にもいる。

なんといっても掃除用スライムを食べてしまうのが困るんだとか。


昼寝のため川からあがったワニをしとめる。

地面の上なら動きが鈍いのであっさり捕まる。

一匹1銀貨(一万円)。結構お得だ。

綺麗な川なので体もついでに洗える。



そろそろ異世界テロしたいよな。

まずは家、そのあと風呂かな。

などと妄想する。

勇者のいない街に送り込むとかどう考えてもあいつが悪いだろ?

ならこっちはのんびり生きるさ。




翌日。

いい天気だ。

山から吹き下ろす風が少し冷たい。


今日も街の傍の川にいく予定だ。

ギルドを出ると何かが後をついて来てる気がする。

隠すことが何もない俺は普通に街の門から出ると川まで歩いていく。


「あ・・・ちょ、ちょっとまって」後ろから声が聞こえる。

「あれ?俺のことか?」振り返ってみた。

「うんそう。僕も狩行きたい」


どう見ても小学生、低学年の子供なので、門にいる衛兵さんまで連れて帰る。

常習犯らしく、冒険者を見つけてはついていって追い返されてるそうだ。


「いやだいやだ。連れてって」

「危ないからいい子にして。もっと大きくなったらね」


暴れてるが、毎度の事らしい。

もっと早く気が付けばよかった。

勇者もあのくらい元気な子に育てば死なないのだろうか?


そこで俺ははっと気が付く。

子供だから勇者認定されてないのだろうが、病弱なんじゃね?

だったら薬を探すのが俺の役目なんだろうか?

俺は何となく園児レベルの子供を想像してみた。



この国の職業は15歳くらいの『成人の儀』で初めて決まる。

それならこの国にいるかもしれないが、どこで勇者だって区別するんだよ。

あの神の使いって奴、ほんと気が利かねぇな。


もうひとつ気になっていることがある。職業がなしってところだ。

『成人の儀』を受けてないからしかたないんだけど、なくてもいまのところ困らない。

あればその職業に必要な力の伸びがいいらしい。

一度ぼったくり神殿に行かなきゃいけないな。




一度ギルドに立ち寄って、先ほどの子供のことを報告する。


冒険者ってほんと女子が少ないよなぁ。

まあ、あたりまえか。

勇者の子守なら別に冒険者じゃなくてもいいよな。

ちょっとお金貯めたら商人の勉強でもするか。

それとも魔法を極めてみるか。


最初魔力がゼロだった俺も、ここで生活するうちに魔力がたまって簡単な生活魔法はできるようになった。

コップ一杯の水とかライターの火くらいなら何とか出せる。

生活魔法は出来るのがあたりまえなのでスキルに記載されないようだ。




その後数日が経過。

俺はずっと小型ワニを倒してる。


最近変わったことといえば、格安のギルド部屋を借りたことだ。

共同だけどシャワーがある。荷物も置きっぱなしでいい。

食事は各自で食べに行かなくてはならないが、気楽だ。

週一でパンを買っておいてそれを少しずつ食べていく。

部屋の掃除やシーツなんかの洗濯も週一でFランクの人に頼む。


Fランクの人はこういうところで結構需要があるんだろうな。

すごい助かる。




最低限の生活基盤が揃ったので、神殿に行ってみようと思う。

神の使いってもしかして神殿にそれなりの連絡手段があるんじゃないかと気が付いたんだ。

『成人の儀』の方法も聞いてこよう。


そう思っていたら、意識が暗転してまたあの白い部屋に呼び出されていた。

白い服を着た初老の人が浮かび上がり、困った顔でこちらを見ている。


「君にお願いした勇者が死んじゃったじゃないか」

「あ、役立たずな神の使い」

「ちょっと君!さすがに失礼じゃない?」

「勇者が誰だかわからないから、そんなこと言われても困る」


「む?人間ではわからんのか。ならば『千里眼』を授けよう」

「俺、普通の日本人だからそもそも生きるのがきついんだよね」

「うむむ。ならば『剣士』の職業も授けようぞ」

「あと魔法ください。できれば弓もあったほうがいいな」

「魔法はおぬしの魔力がまだ足りないから使えぬぞ。自然にたまるものだからもう少し待つのじゃ。

 『命中』『弓術』のスキルも与えるが、努力をしないと使えぬと心得よ」


「お!ありがたい。ところで勇者ってあの街にいるの?」

「おぬしはもう会っておるのじゃ。では会う前の時間に戻そう」

「え、そんなことできるんだ」

「戻せるのは数日だけじゃがな」


俺の意識は光に包まれていった。




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