16.成人の儀
読んでいただいてありがとうございました。
この世界に来てからずいぶんたった気がする。
やっと子育てから解放されるんだ。
自慢じゃないがアレンは思ったよりいい奴に育った。
このまま『勇者』を頑張ってほしい。
『成人の儀』の最中、俺は考え事しながら参列していた。
これが終わったら『スキル召喚の儀』があるはずだ。
ダリアが無事ならおれは冒険者やりながら山岳トレイルを心行くまで楽しむつもりだ。
異世界なんて関係ないぜ!
俺は自由に楽しく暮らすんだ。
『スキル召喚の儀』がはじまった。
会場は大盛り上がりだ。
職業『勇者』が顕現した!この国では初めてだと興奮する人々。
どうだ。俺の育てたアレンはすごいだろ?
うへへ。もっとほめたたえていいんだぞ?
そして数人後、ダリアの『聖女』が顕現した。
これまた盛り上がる。
アレンと一緒にダリアの傍に行って聖職者たちに取り囲まれるのを阻止。
急いでダリアを連れ出す。
聖職者たちは、悪意のない神殿への招待とかだろうから逃げるしかない。
こちらにも事情があるんだ。すまんな。
アレンは貴族なのでそのままパーティというお披露目会場へ。
ダリアも一緒に連れて、同じパーティ仲間だと宣伝してもらう。
牽制しておけば、さすがの王様も手出しできないだろう。
ネメもあとから合流する。
さて、アレンのステータスどうなったかな?
◆◆◆
名前:アレン・ロクナシ
種族:人族
性別:男
年齢:13
職業:勇者
ランク:D
スキル:剣術、身体強化、集中、光魔法、雷魔法、スピードUP
称号:神の祝福
◆◆◆
よっしゃああああ!!!!
やっと、やっと大人になってくれたぜ。
◇
俺は寮の部屋へもどって片づけを始める。
急ぐ必要もないか。
服を返したりしてるうちに数日が過ぎた。
そうこうしてるうちにアレンが訪ねてきた。
「おおーアレンか。ちょうどいい。挨拶まだだったからな」
「先生?挨拶ってなに?」
「そういえば成人のお祝いもまだだったか」
俺は暫し考える。
おおそうだ。アレンにあげたいものがあったんだった。
「アレン、しばらく暇か?」
◇
俺とアレンは『修行の山』に来ていた。
アレンに山での生活を教えてなかったことに気が付いたんだ。
これから『勇者』として生きていくなら絶対必要な知識だろう。
山道が慣れている俺と違って、アレンは歩きにくそうにしている。
こいつの無駄にある体力なら余裕だろう。
急こう配の山登りの途中で山霧が見える。
雲のような霧が幾本も山の斜面に沿って登っていく。
「運がいいな。久しぶりにみた」
「先生、あれって登ってるんですか?」
「暖かい空気は風となって冷たいほうに流れるんだ。雲もそれにつられて登っていく」
ここの山だとよく起こる現象だが、なかなか目撃できない。
俺たちがいつも使う山の中腹にある修行所に到着。
山鳥を捕まえて、コトコト煮込んでシチューを作る。
標高が高いところは味が薄く感じられるので濃い目に塩を入れる。
地上よりも近い満天の星。
その星の多さに圧倒されながら、食事をする。
温かさが体の中にしみわたっていく。
「今日は仮眠だけだ。夜中出発するからな」
「先生は僕にいつも欲しい物をくれる。楽しみ」
山の早朝。
小さな光の魔石が入った灯りを持って、真っ暗な山道を進んでいく。
30分くらいかけてゆっくり山頂に到着。
「これから見るものは俺からの成人祝いだ」
星だらけだった空に尾根の形がゆっくり現れていく。
夜明けだ。
青から赤と、どんどんその色を変えていく。
ゆらゆらと姿を現す太陽はいつ見ても幻想的だ。
俺はご来光に向かって手を合わせる。
「先生、それなに?」
「ああ、これはご来光に向かって手を合わせてる。神に挨拶してるみたいなもんだ」
「太陽が神?確かに神秘的だ」
そう言ってアレンも真似して手を合わせる。
霧があるからブロッケン現象を期待してたが、ギリギリ消えそうになりながら半分だけ見えている。
「あの人だれ?僕の真似してるの?」
「あの影はアレン自身。そして後光はお前のことを陰から見守っている神からの印なんだ」
本当は神の下僕と言ってやりたかったが、こんな感動的なとこでいうセリフじゃない。
「…僕を見守ってくれる神様」
「普段は見えないけどちゃんと神様は見ているんだよ」
「…こ、これからまじめに祈ります」
下請けのイメージあげてやったんだからモテるスキルを次はくれよ?
山に薄っすらかかる霧が晴れていく。美しい山の緑が眼下に広がっていく。
俺は今日の日を忘れない。アレンも頑張れよ。
※ブロッケン現象
山岳の気象現象として有名で、尾根の日陰側かつ風上側の急勾配の谷で山肌に沿って雲(霧)がゆっくり這い上がり、
稜線で日光にあたって消える場合によく観察される。
◇
山から戻って俺はチームを離れると言ったが、ダメだと言われる。
なぜだ?
もう子育ては終わったぞ?
ダリアが<認識阻害>が外れたら怖いと言って泣きつく。
魔法は一週間は持つらしく、驚かれていた。
「補助魔法系って普通は数時間なんだけど?」とネメに言われてしまう。
「なるべく港町に帰るようにするよ」俺が提案する。
「ちがうんです。私たちお互いの親を説得して国を出ようと思ってます」
「おお!そうなのか。それならあの芋王も手出しできまい。見送りにはいくぞ」
「私と一緒にいるのが嫌なのでしょうか?」とダリアがいう。
「いやそんなことは」
「一緒にいてくれると安心」アレンがいう。
「甘えるなよ」
「あのでも、リュウさんの称号が」と、もじもじしながらネメが言う。
称号だと?
◆◆◆
名前:リュウ
種族:人族
性別:男
年齢:18
職業:剣士
ランク:D
スキル:言語取得、剣術、弓術、命中、幸運、身体強化、千里眼、威圧、認識阻害
称号:勇者の仲間
◆◆◆
!!!!!!!
「勇者の仲間??」
いつの間にかネメもダリアもこの称号になっていたのだ。
ちょ!
ふざけるな!あの下請けめ!
・・・・・。
と、とりあえずノニ兄弟と合流するまでは一緒にいてやるっ!
あの下請けの奴は次あったら絶対ぶっ飛ばしてやるっ!
神の下請けはひそかに笑う。
「勇者の国(フローリア国)」でまってるぞぃ。
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