15.アピオス観光
らすと1です。
女の子の希望は叶えてあげたいよな。
そう気が付いて立ち直った俺。
ダリアはチームに入れないことを何度も謝りながら聖なる滝へ入る申請をしていた。
女神に認めてもらえたら、滝の水が虹色に光るはずだ。
「<浄化>スキルなくても認めてもらえるのかな?」とつぶやく。
「おそらく大丈夫だと思います。一度も使ってないからスキルとして出てないだけなので」とネメがいう。
真っ白い儀式用のドレスをまとったダリアは花嫁のようでそれは美しかった。
裸足で滝の傍に歩いていく姿はまさに幻想的。
ふわりと淡い虹色が浮かび上がった。
「おめでとう!ダリア聖女様」歓声が上がる。
顔が上気して嬉しそうなダリア。ネメも嬉しそうに傍に行く。
聖職者の職員から聖女の基本的な説明を受けに行くようだ。
俺はその時、あの神の使いの声を聞いていた。
「やあやあ、いいものに立ち会えたねぇ」
周りを見回したが何もいない。
「なんだ?白い部屋でなくても声って聞こえるんだ」
「君はわしをなんだと思ってるのかね」
「え?『下請け』だろ?」
「まあ、そうなんじゃが」
「で、なんか用か?」
「ダリア嬢のことなんが、このまま一旦セルベス国へ連れて帰ってくれんかの?」
「何言ってるんだよ。あんなに喜んでるのに」
「このままでいくと、あの子はアピオスで誘拐されて殺されてしまうんじゃ」
「なんだと?」
「女神に愛された子をほっとくわけにはいかぬのじゃ」
「そうだな。あんなかわいい子だしな。
でも、セルベス国は『聖女』だとわかると囲ってしまうぞ?」
「事を起こすには順番というものが大事なのじゃ。成人前の子らを異国に逃がしたらその親御さんはどうなるのじゃ」
「うむむ。それは確かに。でもどうする?」
「それでじゃ、おぬしに<認識阻害>のスキルを授けるのじゃ」
「それで彼女を隠せるのか?」
「そのスキルで『聖女』を普通の人間に見せることができる。国境の門も安全に通過できるぞ」
「気が利くな」
「成人後は『勇者の国』にくるがよいぞ」
声が遠のいていく。
俺は早速、話が終わったダリアに声をかけに行く。
「ダリア、芋国に戻る気はないのか?」
「両親もいますし、本当は戻りたいのですが、でも・・・」
「なら俺が<認識阻害>をかけるから、そしたら一般人扱いになるぞ」
「え?えと、おっしゃってることが?」
神からもらった強力なスキルなので大丈夫だと根気よく説明をする。
それにこのままだと誘拐されて殺されてしまうことも。
会ったばかりの俺だと信用してもらえないのだろうか?
とまどっている。
そこにアレンが割り込んでくる。
「先生は嘘をつかないよ。大丈夫だってときは本当に大丈夫なんだ」
「アレンがいうのならそうなのかも?」
「ダリア、リュウの言ってることは本当よ」とネメが言い出す。
「え?なら本当なのね」ほっとした表情のダリア。
なんだなんだ?ネメって嘘か本当かわかるスキル持ちなのか?
「何となくだけど、本当の事言ってるときはわかるの」俺の視線に気が付いたネメがいう。
「スキル見てもいいかな?」俺も興味がわいて聞いてみた。
「だ、だめ」
むむ、だめか。
さすがに女子の謎を覗いてしまうような気恥ずかしさがあるな。
やめておこう。
ネメのおかげで俺は信用されたようだ。
了承されたので<認識阻害>をダリアにかける。
◇
その後、俺たちは聖なる滝の傍の観光地をまわる。
アピオス国と芋国の名物料理が両方味わえるお得な料理店に入って食事を楽しむ。
皮をパリパリに焼いたコッコは鳥の素揚げのようだ。岩塩とハーブを練りこんである。
これは芋国の料理だな。
甘いコクのあるスープはカニなのかな?こんな山奥までよく運んだもんだ。
そう思っていたら丘サソリという砂漠のサソリだと教えてもらう。
山を越えた砂漠にたくさん生息してるのだそうな。
これはアピオスの料理だな。
これは牛と思ったがミノタウロスという魔獣の肉で、まさに牛ステーキ!
やたら分厚いが柔らかい。この国も魔獣を狩って成り立ってる国なんだな。
ピリッとする山椒のような粉と甘辛いタレがマッチして絶妙な味になる。
ライチのような果物の味がするアイスもある。さっぱりした甘さがたまらない。
俺たちは旅行を満喫して港町に帰っていく。
ニノ兄弟はそのまましばらくアピオス国に残って観光を楽しみたいそうなので別れる。
この気軽さが冒険者の良さだよな。
俺は二人にアピオス国の聖女に対する対応がどんなものなのかと、魔力を込められる魔道具があるのか探してほしいと頼んでおく。
芋国と同じ扱いされるなら、いかないほうがましだ。
あと<認識阻害>を入れて置ける魔道具があるなら、俺がいなくても平気そうだしな。
ダリアも襲われることなく楽しく過ごせたようだ。
俺たちがピタリとストーカーのようにくっついてたからな。
帰りの門を通るときに緊張したダリアが、船に戻って来てから泣いていた。
「リュウさん、本当に、本当にありがとう」
芋国が腐ってるのは薄々気が付いていたので、礼を言われるのもおかしい気がする。
でもこれでいつでもアピオス国に逃げられるからな。
「ん?そういえばスキル効果っていつまで続くんだろう?」
「大体は一日かな?私が確認しておきます」とネメが言う。
彼女も<千里眼>持ってるのか。頼もしいな。
◇
旅行は楽しかったが、思ったより散財してしまった。(主に船のギャンブルで)
『成人の儀』ももうすぐだ。
アレンの服は親が用意するはずで、アレンはラージ街へ帰っていった。
『勇者』仲間が『聖女』だとばれてもすぐには動けないはずだという。
勇者チームというのは国を飛び越えて保護されているので国際問題になるのだそうだ。
その辺を信用できるアノマラド港ギルド長にこっそり確認を取る。
だめならまた<認識阻害>をかけて逃がす手はずを整えないとだな。
最悪の場合、アピオスで暮らすための準備と逃走経路も確認。
万が一のため、行かなくてもよくなった『成人の儀』に俺もいくことになった。
15才はとっくに過ぎてるけど保護者として見守らなくちゃね。
服をそろえないと。中古服を見て回る。
結局はバレン先輩のお古を少し直して借りることになった。
持つべきものは先輩だ。
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