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12.魔法

港町に戻って来てから、アノマラド港ギルドの『魔法』講習も受けてみる。

ヒマシ先生という小さなエルフの先生だ。耳がとがってるといえばそうかもしれない。

優秀な先生だそうだが、俺はやっぱり魔力がわからない。

先生はしばし考えて、水晶を持ってきた。


「リュウ君。これに手をかざしてみて」

「はい」


何の反応もない。


「君は魔力がとても少ないみたいね」

「魔法使えないんですか?」

「今のところはね。生まれたての赤ん坊並みの魔力だよ。君って本当にこの世界の人なの?」


そういえば俺って、この世界にはまだ数か月しかいないよな。

神の使いが言ってた言葉を今更ながら思い出したのだ。

そうか。魔力がたまるのってもっと何年もかかるのか。

数か月でたまるって勝手に思い込んでいただけか。


「なにか心当たりがありそうね?」

「あ、はい。話せませんが魔力が足りない心当たりがあります」

「ふむ。この世界の物を沢山たべてみて。食物から魔力は得られるから。それでもだめなら病気だから医者にいかないとね」

「はい、ありがとうございました」




とりあえず俺は剣士の素振りと弓の練習にも励む。

寮は楽だけどお金がかかる。

基礎をみっちりやったら冒険者家業に戻らないとだな。

ラージ街には近寄りたくないので、しばらくは港町のギルドで活動する。


俺の魔力は数か月後には不安定だがかなり増えてきていた。

うれしくなってヒマシ先生のところに報告する。


いよいよ基礎中の基礎、魔力を感じるから講習を受けることになった。

おおーわかるわかる。温泉が腹の中央に湧いてるようだ。

俺もやっと風魔法の初歩が使えるようになった。

手の上でつむじ風を起こせるだけだがな。


やはり異世界と言ったら魔法だよな。

ロマンだ。

そういえばアレンは魔法が使えるんだろうか?

勇者が剣のみってことはないよな?




素振りと魔力を感じる練習を数日していたら、今度はアレンが俺を訪ねてきた。


「リュウ先生!久しぶりっす」

「あれ?おまえどっから来たんだ」

「やだな。馬車に乗ってきたに決まってるでしょ?」

「それもそうか。冒険者の仕事か?」

「ちがう。えーと。先生に聞くのちょっと違うかもだけど、魔法こと知りませんか?」

「そんなのわざわざ聞くために来たのかよ」

「うん」


アレンはどうも何かがずれてるよな。手紙でも出せばいいのに。

そういえばラージ街のギルド連中には嫌われてたっけ。


「魔力はわかるんだけど、発動できないっす」

「俺は専門じゃないが、いい先生を紹介してやる」


俺はヒマシ先生を紹介してやった。

アレンは喜んで練習しているようだ。


成人前だと魔法の発動は生活魔法くらいが普通らしい。

この世界の成人は15歳だっけな?

アレンはいきなり中級魔法をやろうとしたそうで、そりゃ無理だよな。

それでも初級魔法はあっという間に覚えやがった。

ほんとムカつくな。



俺も鬼じゃないから一応アノマラド港ギルドに移籍するよう勧めてみる。

ラージ街だとやらかしすぎてアレンは嫌われているからだ。


「家がラージ街にあるから向こうで頑張ります」

「でもよ、おまえ向こうだと嫌われ過ぎてチームも組めないだろ」


そう言ったら心当たりがあったのかハッとしていた。


「それに冒険者になるならいろんな魔物倒さないと経験にならないぞ」

「親と相談してみるっす」

「一応言っとくけど相談じゃないぞ。説き伏せるんだ。どうしてもってときは家出して俺のとこ逃げてこい」

「先生・・・・」


アレンの奴が泣きそうだ。


「泣く暇あるならあの親をどうやって納得させるか考えろ」

「は、はい!」


あのしつこい元凶のような親を納得させるの難しそうだよな。

うーむ。子育ては独立させないとそもそも終わらなそうだしな。


ヒマシ先生にギルドでアレンの仲間はいないかと聞いてみる。

一応、近いレベルでお仲間の斡旋を無料でしてくれるそうだ。

いいこと聞いたぜ。


あいつがやたら死ぬのはそもそも仲間がいないせいだ。

ギルドにこまめに顔をだして親切なおじちゃんを演出しとくかな。


併設している休憩所兼お食事処で俺はこまめに通って飲むことにする。

一人で来てそうな冒険者には声をかけてエールを一杯奢る。

たいした費用じゃない。エールとつまみで1銅貨くらいだ(1000円)


一杯飲んで世間話をして別れる。

それを繰り返すと、なんとなくの知り合いができた。

飲めばそれなりに口も回る。

社会人としてのノミニケーションってやつだ。


「社会人になったばかりなのでいろいろ教えてください」というと大抵は本当にどうでもいいことを話しだす。

大人とはそういうものだ。

それをさも楽しそうに聞かなくてはいけない。

そうしないと「俺の話が面白くないのか」と殴られたりする。

給料とは忍耐代だと誰かが言った。本当にその通りだと思う。


すべてはこれもアレンのため。

あいつが俺の知り合いだといえば優しい目で見てもらえることだろう。

根回しは大事なのだ。




その後、アレンは期間限定でここのアノマラド港ギルドに来ることになる。


「よくあの親が許したな?」

「はい、僕が父のような立派な強い人になりたいですって言ったら、そしたら母よりも父が乗り気で」


なるほど。父のほうはまともに話ができたのか。

もともとギルドに話してあったので、アレンの住む場所や仲間の紹介もスムーズだった。


ノニ兄弟チーム2人を紹介されたので一緒に狩りに行くそうだ。

よしよし。ガンバレ。

その夜、アレンはしょぼんとして帰って来た。


「あれ?どうした?」

「俺と一緒だと怖いから組みたくないって」


話してみたら平原で角ウサギを狩ってみたらしいが、角ウサギどもがアレンを追いかけまわしてどんどん増えていくのだそうだ。

ノニ兄弟はあまりの増えっぷりに怖くなって逃げたらしい。

ラージ街の狩り方そのままじゃん!


あ、俺が悪いのか。


うすうす気が付いていたが、アレンは魔獣に好かれるのかいつも追いかけられている。

なので俺も今までとは違うんだと教える。

仲間と戦うときは頭を使うんだ。


怖がるノニ兄弟を呼んでご馳走して話を聞く。

ははぁ~なるほど。

この兄弟は魔法だから、アレンが動きまくると魔法が打てないのか。

次は俺も一緒に行くことにする。




翌日。

4人で仕事へ行く。ノニ兄弟二人とアレンと俺。


平原に着いたら、アレンに「そこで動かず倒してみろ」と言う。

角ウサギがぴょこっとたまに現れるので俺は弓で、兄弟は魔法で倒していく。

アレンの周りに大量のウサギの山ができるのでときどき歩いて移動する。

ノニ兄弟は大喜びだ。


「たくさんとれたけど、僕は暇なんだよな」

「アレンよ。チームを組むのはそういうことだ。相手がいかに動きやすかを常に考えるんだ。

 それに今回はウサギだからこうなったけど、他の獲物ならまた違う動きが必要だぞ」

「難しいな。僕がんばってみる」


ノニ兄弟のほうも魔法だけではなかなか獲物がとれなくて苦労してたようだ。

その後4人でよく出かけるようになった。

アレンがいるとほとんど獲物を探さなくて済む。


俺も一応17歳だから、中身はおっさんだが若者の中に混じっててもいいよな。

アレンは職業も(勇者候補)となり、すでにEランクだ。


◆◆◆

名前:アレン・ロクナシ

種族:人族

性別:男

年齢:12


職業:(勇者候補)

ランク:E

スキル:剣術、身体強化、集中、光魔法、雷魔法、スピードUP

称号:神の祝福

◆◆◆


冒険者として今は4人で活動しているが、これから俺は抜けるだろう。

勇者だとダンジョンも行くことを考えてワナの探知ができる『斥候』が欲しい。

あとこの国は聖女候補生が生まれやすい。

聖女養成所もあるようだ。

なので、勇者のおともに『聖女』がいてくれたら死ぬ確率が減ってありがたいな。


とりあえず、アレンが『成人の儀』をうけて『勇者』になってもらわないとな。

このまま無事に『成人の儀』まで生きていればお役御免だ。


・・・。

あれ?

もしかしてこの言葉はフラグだったか?

取り消し、取り消し!



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