10.ギルドの思惑
俺は寮の部屋で目覚める。
どうやら山から戻った翌日に戻されたみたいだ。
ギルド強制招集が来る前に俺はラージ街へ戻る。
ギルドの連中から熱烈な歓迎を受けた。
チルルが「あたしが頼んだから戻って来てくれたのね」と言っている。
総無視して「ギルド長いるかな」と聞いたらすぐに応接室に通してくれた。
今回は大量にお菓子があり、美味しいお茶もある。
待遇がよくなったな。
◆◆◆
職業:剣士
ランク:D
スキル:言語取得、剣術、弓術、命中、幸運、身体強化、千里眼、威圧、(風魔法)
称号:勇者を守るもの
◆◆◆
暇なので自分のステータス確認。<威圧>が入ってるな。
風魔法は魔力が足りないとまだ使えないからかな。
もぐもぐ食べながら待っていたら、ギルド長があわてて入って来た。
「お待たせ。いやまさか戻って来てくれるとはありがたい」
「どうせアレンのことでしょう?」
「まあそうなんだが。最近はFランクでは捕まえることができなくてな。
ギルド連中に蹴とばされてもアレンが勝つようになってしまった」
すごいなアレン。
「それなら普通に冒険者やらせたらどうですか?」
「それがギルド規定でFランクは外での仕事は禁止なんだ」
まあ確かに。アレンが異常なだけで普通の子供は守るべき存在だよな。
「なるほど。で、俺に何をさせるつもりだ?」
「アレン君を怪我しないように見守ってもらいたいんですよ」
「なあ、ギルド長。初歩の型の練習している俺が子供守れるほど強いと思うか?」
「…い、いや、それは」
「ならわかるよな?他に頼めよ」
「その、めぼしい人には皆断られてしまった」
「うーん・・・だからって弱い俺?」
他の冒険者もアレンにまとわりつかれて嫌な思いをしてたのだろう。
ギルド長は座ったまま頭を下げる。
「たのむ!他にいないんだ。本当に見守ってくれるだけでいい」
「俺、戦えないぞ」
「わかってる。危険ならアレンと逃げてくれ」
「あと生活費が欲しいな」
「うぐっ。わ、わかった。一日1銀貨」(=一万円)
「おいおい。俺生活できないよ。一日1金貨くれるんだろうね?」
「さすがにそれは」
「だめなのか。なら別の仕事しないと生活できないから無理」
「うぐぐ。足元みやがって」
「アレンが他の冒険者に嫌われることしてても見て見ぬふりしてたせいじゃないの?」
1金貨は十万円だ。さすがにぼったくりだろうか?
「ギルド金庫はそんなに持てないんだよ。しょうがない。3日で1金貨だ。これ以上は物理的に無理だ」
「うーん。3万円か。ならそれなりでよければやりましょう」
そう、それなりにね。
俺が弱いってことをこいつらに周知させなければと思いつく。
俺は逃げる役目だよね。
その日、アレンの奴はまた外に出ていたようだ。
どうやって出たのかと思ったら、普通に外壁を飛び越えやがったよ。
もはや人外だな。
魔獣に追いかけまわされて、まいて帰って来たそうだ。
細かい傷があるが元気そうだ。
「おおー元先生じゃん!僕やっと戦えるようになったよ」
「自慢げに言うなよ。倒した魔獣は?」
「え?殺しただけっす」
「もったいないな。持って帰れば金になるぞ」
「うち貴族だからいらない」
「おまえ馬鹿だろ?ただの男爵なんて普通の平民より貧乏だぞ」
「んぐぐ。親に聞いてみる」
魔獣の死体は金になる。ただし、あれを持って帰るとさすがに外壁を飛び越せないだろう。
1日目。
アレンの奴が俺を探しに来た。
「いたいた。先生。やっぱり僕は魔獣を持ち帰ることにするっす」
「そうか。それはいいことだ」
「うちは貧乏じゃないけど、本当に僕が倒したのか見てみたいって」
「そうか。ならいいことを教えよう。街中の仕事を3回受ければ街の外に出られるぞ」
「まじか!僕がんばってくる!」
アレンは最低のFランク。
街の仕事を3回こなすとEランクになれる。
Fランクは子供のお手伝い用、街中の仕事だからな。
Eランクで初めて外の仕事ができるようになるんだ。
これで堂々と街から出ることができる。
なのでまず3回仕事して来いと教える。
ギルド受付にも嫌われているのかその説明もなかったようだ。
それからアレンはEランクになって普通に門を通ることができるようになった。
あの母親から抗議が来なければいいがな。
やりすぎた感はあったらしいがどれも無事に終わったようだ。
今日はそれで満足したのか家に帰っていった。
2日目。
「今日は僕が魔獣を倒して親に見せるんだ」とはりきっているアレンに出会う。
「なら狩りの仕方見ててもいいか?」
「うんいいっすよ」
俺と一緒に森にでかける。
初めて来たな。
アレンは空を飛ぶようにすばやくウサギを倒す。
あれは鳥魔獣のコットだ。くるくる回転しながら倒してる。
すごいな。サーカスを見てるみたいだ。
そうこうするうち、大型のオオツノジカが現れる。大人の2倍はある背丈の鹿だ。
軽いアレンは角に吹っ飛ばされていた。
さすがにきついかな?
そう思っていたら鹿が俺のほうに向かってきやがった。
俺は迷わず<威圧>スキルを使う。
ピクピクと動きが止まった。
「先生すげー!」といいつつアレンが飛び込んで首に攻撃して倒す。
まだまだやれるというアレンを抑えて「これを家にどうやって運ぶか考えろ」と問う。
どうやら血抜きも知らないらしい。
まあ俺も最近まで知らなかったが。
とりあえず捌き方をウサギから教える。
勇者といえどその才能はないらしく、時間がかかった。
その間に火をおこしてウサギを焼く。
持ってきた岩塩をかけて食らいつく。
「「うまい」」
「先生は僕の欲しい物を知ってるっす」
「おまえの親は冒険者じゃないからしかたないだろ」
「そういう意味じゃないんだけどな」
いらないものを土に埋めて、片付けもやらせてみた。
鹿を持たせたが、軽々と抱えてる。さすがだな。
残りの小物は袋に入れる。大量の獲物をかかえて俺たちは街に戻る。
鹿は親に見せるのだそうで、残りはお金に換えて持たせた。
今日の子守も順調だ。
アレンは教えれば素直にやるんだ。
どう考えてもこれ周りの大人が悪いんじゃないか?
3日目。
一緒に街の外へ。
森の中にある洞窟に入ろうとするので止める。
ダンジョンはDランク以上&成人してることが条件だ。
「先生黙っていてよ」
「だめだ。おまえはもっと覚えねばならないことがある」
「先生が言うならやめておく。もっと僕にいろいろ教えてくれ」
「Dランクになるまでに基礎を覚えておけよ」
「わかった」
ずいぶん口調も丁寧になりつつある。
大きな魔獣の猪が出てきたが、これも俺の<威圧>スキルで足止め。
アレンが何度も攻撃を加えてやっと倒した。
さすがにきつかったか。刃がボロボロだ。
猪かついで門をくぐったらびっくりされる。
まだ時間があったので、剣のお手入れ方法なども教えていく。
ギルドに戻り、翌日からは講習会をめいっぱい受けさせることにした。
「うえ~。全部受けるんすか?」
「弓とか槍とか。どれが自分に合ってるかわからんだろ?一度は体験しとくべきだ」
「わ、わかったよ」
編み物講習や破れた服を繕う講習なんてものもあるが、体験しとくのも悪くないだろう。
これでしばらくは自由時間。
その間俺は先輩の試合を見に行くつもりだ。
「俺が戻ってくるまでに全部受けとけよ。講習受講料は先に払っておく」
今日の猪は受講料として納める。
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