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開かずの密室

作者: 夏野篠虫

 昔の思い出、特に園児時代から小学生辺りの記憶は年をとっても鮮明に覚えてたりする。ただはっきりしてるから正しい記憶とは限らない。人の頭はすぐ突飛な偽物を創り出す。だけど中にはどうしても偽の出来事に思えない記憶が、確かにある。


 今から20年以上も前、僕はまだ小学2年生だった。

 世間はオカルトブーム末期に差し掛かり大人達は少し冷め始めていたが、ノストラダムスや霊能力や超能力とかUFOとか、子供にはまだまだ大ウケだった。その1人が僕で、よく友人達と教室で昨晩のオカルト特番の真偽を興奮気味に討論していた。

 一世代前のオカルトブームで学校の怪談・七不思議が全国に波及していたので、僕の小学校にも七不思議が創られていた。音楽室の~とか理科室の~みたいな、今なら日本中で擦られすぎたネタにしか思えないけど、みんなで調査しようなんて言って当時はなかなか楽しんでいた。

 そんなありきたりな我が校の七不思議のうち一つだけ、毛色が違うものが紛れていた。五番目の『開かずの密室』だ。

 北校舎の1階トイレ横の部屋がその部屋だが、他の部屋には教室名が書かれた札が下がっているがここには何も無い。外から見ると窓がない。入口はドア一つで常に鍵がかかっている。鍵穴はあるのに鍵はなく何の部屋かどの先生も知らない。

 かくして生まれたのが『開かずの密室』というわけだ。

 名前が開かずの“部屋”じゃないのは、当時これまた全校で流行っていた少年名探偵アニメの影響だと思う。意味が重複しているけど、多分語感も密室の方がかっこよかったんだろう。


 この密室にある日僕が友人三人と中に入るため放課後に集まった時のこと。各々持参したマイナスドライバーや針金で見よう見まねのピッキングに挑戦していた。

 あまりにガチャガチャ騒いでいたので、数分で見回りの先生に見つかり友人達は全力ダッシュで逃げた。ちょうど作業途中だった僕も慌てて逃げようと密室の前から離れる瞬間、



「早く開けろよ」


 ドアの奥から抑揚のない声が聞こえた。

 反射的に足を止めてしまった僕は先生に捕まり、しこたま叱られた。




 あの時聞こえた声は先生の声を勘違いしただけ、もしくはテレビの心霊映像と混ざった記憶だと信じたい。

 だけど記憶に染み付いた生気のないあの声が今でも僕を責めてるようで、自宅の全てのドアは必ず開けたままにしている。


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