≪声劇台本≫Hero episode~fine(フィーネ)~
Hero episode~fine~
作者:早坂兎武
原案協力:Shiki.
―利用規約―
・ツイキャス、ニコニコ、ボイコネなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。
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・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。
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登場人物
・赤羽 啓介:私立黒鉄高校3年生。顔立ちは中性で、女性と間違われることが多い。幼稚園の頃スカートをよく履かされた。陰キャでマイナス思考だが友達のことになると真剣に相談に乗ったり、プラス思考になる。石橋 隆とは小学校からの親友。亜沙美のことが好きで、実際は両思いだが、亜沙美が自分のことを好きだと思っていない。
・石橋 隆:私立黒鉄高校3年生。啓介とは幼馴染。中学校の時に両親を事故で亡くしており、祖父母に育てられていたが、隆が高校に入学したころに病気で他界。啓介の家に居候している。中学のころからそのことでいじめにあう事が多かった。
・平 亜沙美:私立黒鉄高校3年生。明るい女の子で常にプラス思考に物事を考えている。啓介のことが好きで啓介が亜沙美のことを好きだと気付いているが、啓介はそれに気づいていない。才色兼備であり、クラスの人気者だが、天然が災いしてかなぜかモテない。
・浅原 豪:私立黒鉄高校3年生。体格はごつく、柔道部によく間違えられる。口調も相まってヤンキーに間違われることが多い。口調を荒くしているのは高校に入ってからなめられない為であるが、逆にいじられてしまう事がしばしば。杏子と性格が合う。
・須田 あかり:私立黒鉄高校3年生。あかりという名前だが男である。ツンデレな性格かつ照れ屋である。いわゆるイケメンな顔をしているが声は中性である。本人曰く「声変わりはまだ来ていない」。
・相沢 誉:私立黒鉄高校3年生。運動大好きな陸上部。短距離、中距離、長距離全てにおいてベストタイムを出しており、時期オリンピック候補となっている。見た目少年がネックと思っている。少年に見えるがスタイルもよく首から下は女性。 女性では唯一、制服は男性用を着用。
・蔵屋敷 クリスティーヌ 麗香:私立黒鉄高校3年生。蔵屋敷財閥のお嬢様。気高い性格なのかと思えば不思議ちゃん。みんなからはクリスと呼ばれている。しっかりしており、お嬢様だが、嫌な物言いは一切しない。この学校では唯一のロングスカートの制服を着ている。
・東 杏子:私立黒鉄高校3年生。いわゆるギャル。実はギャルになって1月もたっておらず、ギャル特有の言葉遣いになっていない。ギャルになったのはいじめられない為。豪と性格が合うのかよく話している。スカートはクリスとは真逆で超ミニ。
・流川 愛華:私立黒鉄高校3年生。委員長で学年代表。成績も学年トップである。冗談が全く通じないので、ボケた人がたまらず謝ってしまう。見た目も美人なため、とある文学少年からは「春の夜に 桜の下の 艶姿 その影なるは 式部と違わぬ」と謳われたほど。
・GM:正体不明。どこにでも現れる。今回の「宝探し鬼ごっこ」のゲームマスター。少し、ひょうきんな性格である。
・医者:黒鉄中央病院の医者。年齢不詳。腕は凄腕
配役表≪比率=3:5:2≫
啓介(不問):
隆(男):
亜沙美(女):
豪(男):
あかり(不問):
誉(女):
クリス(女):
杏子(女):
愛華(女):
GM・医者(男):
≪本文≫
亜沙美M「これは、私たちが体験した、大きな『選択』の物語」
亜沙美M「都会から少し離れた田舎にある私立黒鉄高等学校。日本有数……というわけではないんだけど、大学進学率が高めの進学校なの。」
≪黒鉄高校3年A組 教室内≫
亜沙美「啓介ー。早く帰ろうよー!」
亜沙美M「私の名前は平亜沙美。この学校では至って普通の女の子だよ。ただ、みんなからは天然って言われるんだ。なんでだろ?」
啓介「はぁ……暑い……」
亜沙美「当たり前でしょ?今日の最高気温何度だと思っているのよ。」
啓介「39℃だっけ?……ボクはこの暑さに耐えきれる気がしないよ。そうだ、この暑さに耐えきれなくてボクは卒業できないんだ。」
亜沙美「もう、バカなこと言わないでよ!」
亜沙美M「彼の名前は赤羽啓介。性格はかなりマイナス思考だから心配になっちゃうんだけど友達思いのいいやつなんだ。」
隆「夏が暑いのは当たり前だろ?ほら、アイス。」
啓介「サンキュー。隆。やはり、持つべきは友達だよ。」
隆「最高の誉め言葉として受け取っておくよ。」
亜沙美「ちょ!?隆、私のアイス~!!」
隆「お前のアイスじゃねぇよ。それに、お前が好きなのはこっちだろ。ほら。」
亜沙美「あ!ピパコだ!!ありがとね!隆!」
隆「全く、騒々しいぜ本当に。」
亜沙美M「彼は石橋隆。本当にまじめ!みんなの好きなものは全部わかってるの。すごくない?」
豪「おーい、啓介―!昨日のアニメ見たかー?」
啓介「見てない。とにかく暑くて…」
豪「理由になってねぇだろうがよ!なぁ、東!」
杏子「そうだよ!暑さなんて体動かして吹っ飛ばそうよ!!」
亜沙美「とんだスポーツ馬鹿の考え方じゃん……」
豪「あぁ!?バカっつったな!?テメェ!」
亜沙美「ちょ!?そんな怒らなくてもいいじゃん!?」
豪「うるせぇ!バカっていうほうがバカなんだからな!!」
亜沙美「なによ!その小学生思想!!」
杏子「もう、亜沙美っち!馬と鹿は可愛いんだからディスっちゃだめだよ!!」
亜沙美「そういう事じゃないよーちがうよー」
亜沙美M「この二人は浅原豪くんと東杏子ちゃん。2人とも似た境遇で口調が悪くなったり、ギャルになったからかな。よく話しているみたい。でも、性格変更はから回っている気もするけど……」
クリス「あら、少し騒がしいですわね。」
啓介「あ、クリスじゃないか。今日は学校休むんじゃなかったの?」
クリス「ほら、なんですの?……コロナ……でしたっけ?その影響で私共の会社が企画していたイベントがなくなりましたの。」
啓介「それは残念だったね。」
クリス「えぇ。ま、どうしようもありませんから。」
亜沙美M「啓介と仲良く話しているのは蔵屋敷クリスティーヌ麗香さん。名前は長いけど、ハーフのお嬢様。お父さんがイタリア人でお母さんが日本人だったかな。みんなはクリスって呼んでるよ。」
あかり「ちょ……やめてよ!誉!!」
誉「え?このお菓子って私のために買ってくれたんでしょ?」
あかり「そ……そうだけど……でも。」
誉「はいはーい、ありがとうねーあかりくん!」
あかり「……べ……べつに誉のためじゃないからね。」
誉「はーいはい。可愛いね!あかりくんは!」
啓介「相変わらず仲がいいなぁ。キミたち。」
あかり「そ……そんなこと__」
誉「そうなんだよね!!ほら、可愛いじゃんあかりちゃん!」
あかり「ちょ!?誉!抱き着かないでぇ!!」
誉「え?抱き着いて問題あるの?」
あかり「問題ないけど、あたってる!!あたってるから!!」
啓介「誉、そろそろやめないとあかりが恥ずかしさの余り死んじゃうよ。」
誉「えー、もうちょっと遊びたかったのになぁ。」
あかり「人で遊ばないでよ!もう!」
亜沙美M「このイチャイチャしている二人は須田あかりくんと相沢誉さん。相沢さんはスタイルがいいのだけれど、可愛い男子に目がないのがたまに傷なんだよね。その被害を受けている須田くんは実は彼女のことが……んふふ」
愛華「なんですか、騒がしい。もうすぐ下校時間ですよ」
啓介「委員長。」
愛華「まったく皆さん、そんなことで卒業できるのですか?内申点に大きく響くかと思いますが……」
啓介「大丈夫だって。いつも委員長が教えてくれるおかげでみんなそれなりにいい点数取れてるみたいだし」
愛華「夏休みの補習がないからって浮かれすぎでしょう。全く……」
亜沙美M「このメガネが似合う女性は流川愛華さん。成績が学年1位から落ちたことがない成績優秀な女の子。容姿も端麗なんだよ!」
豪「だって、夏休みだろ?補修がないってことは遊び放題じゃねぇか!」
誉「部活さえなければ私も遊び放題なんだけどなぁ……お盆はさすがに休みだけど。」
あかり「そうなんだ。たいへんだね。誉も」
誉「うーん、私だけじゃなくて部活やってる人は夏はほとんど大変だと思うけど。」
杏子「そうだよねぇ。……あ、そうだ!じゃぁ、お盆にさ、みんなでどこか遊びに行こうよ!プールとかどう?」
愛華「プールですか?この時期だと9人全員で行くのは入場制限などで難しいと思いますが……」
杏子「そっかぁ……」
隆「それじゃぁ、山に行って川遊びとかいいんじゃない?これなら、誰にも迷惑かからないでしょ?」
誉「川遊び!?いいじゃん、それ!」
豪「けどそんなのできるとこってあんのか?」
あかり「この時期にそんなの旅行会社が宣伝してなかったと思うんだけどなぁ……」
隆「俺が前住んでいたところの近くの人が経営しているキャンプ場なんだけど、ぜひ使ってくれって言われてさ。ほら、これがパンフ。」
啓介「どれどれ?……へぇー。いいところじゃん。」
亜沙美「景色もきれいで最高じゃない!」
クリス「あら、これは私の会社の製品ですわね。入れてくれてうれしいですわ。」
愛華「この川にいる魚、大きくて焼き魚にしてもおいしそうです。」
杏子「それに、この川、すごく澄んでいてきれいぺぽっ!こんなところが近くにあったんだぺぽね。」
クリス「でましたわね。東さんのぺぽが。」
杏子「ぺぽぺぽ~!楽しみペぽよ~!」
隆「てことでお盆休みは部活もないことだし、このキャンプ場に行かない?」
豪「行こうぜ行こうぜ!!たのしみだなぁ!」
誉「お魚いっぱい捕まえるぞー!」
杏子「水着買わないとぺぽ~!カレーも食べたいぺぽっ!とても楽しみだぺぽっ!」
豪「ペぽペぽうるせぇんだよ!!」
杏子「ぺぽ~……」
啓介「でも、なんでぺぽなのか全くわかんないんだよな。」
亜沙美「そうだよね。ぺぽって初めて聞いたし。」
杏子「いまのギャルの流行言葉だってネットに書いてたぺぽっ!」
隆「ほ……本当かよ、それ。」
愛華「変なサイトでも見たんじゃないですか。そんなギャル言葉聞いたことありません。」
杏子「じゃあ、ギャル言葉教えてぺぽ。愛華っち―。」
愛華「な!?そんなことできるわけ……」
啓介「いいじゃん。委員長だったらギャル語だって一発じゃない?」
愛華「ちょ……ちょっと。」
豪「前は……なんだっけ?さっさとしてくんなんし?とかいってたよな。」
クリス「廓言葉ですわね。あれもすばらしかったですわぁ。」
愛華「あれはたまたまで……」
あかり「がんばってね。流川さん。」
誉「頑張って~!」
愛華「うぐ……」
杏子「じゃ、お願いぺぽねー。ってことで、キャンプの準備するぺぽー。早く帰るぺぽー!!」
亜沙美「って急に!?って最終下校時刻じゃん!!あ、ちょっとみんな!まってよー!!」
啓介M「お盆休みに企画されたキャンプ。これが楽しい高校生活最後の夏休みイベントになるはずだった。」
―間―
≪キャンプ当日 キャンプ場 炊飯場≫
啓介「やっとついたな」
亜沙美「あぁぁぁ、もうくたくただよー」
杏子「ね、見てみてー!!すんごいきれいな景色ぺ……だぽー!!……あ」
あかり「景色がきれいなのは分かったけど、今ので台無しな気が……」
隆「流川。」
愛華「はい。」
隆「まさか、ぺぽを矯正しようとしてる?」
愛華「あまりにもしつこかったので『初心者から始めるギャル語録』という本を渡したのですよ。そうしたらこうなってしまったみたいで」
豪「でもいいじゃねぇか!なんかこう、パリピって感じでさ!」
愛華「あなたもヤンキーになり切れていませんね。」
豪「別になりたいわけじゃねぇよ!」
愛華「でも、言葉遣い的にそうでしょう?こちらの『ヤンキーになるための10の鉄則!もっと熱くなれよ!』という本はいかがでしょうか。」
豪「いらねぇよ!てか、どんなタイトルだ!」
クリス「そんなことより皆さん、せっかくなので泳ぎませんこと?とても澄んだきれいな川ですし。」
亜沙美「いいね!私、この日のためにビキニ買ってきたんだぁ。」
誉「私も私も!鼻血流さないでよ!あっかりん!」
あかり「流さないよ!(小声)でも……見たいな……誉のビキニ。」
誉「あぁ、聞こえたぞー!!あっかりんのエッチ!!」
あかり「なんで!?なんでそうなるの!!」
誉「だって、私のビキニみたいんでしょ~?そんなエッチな子にはお仕置きだ~ ~!うりゃぁ!」
あかり「うわぁ!抱きつかないでぇ!!」
亜沙美「よし、泳ぐぞー!!」
隆「あ、まってくれ!」
啓介「ん?どうした?隆。」
隆「実は……ほら、これ。」
豪「あ?なんだこれ。」
誉「あ、ミサンガだ!!公式戦の前にマネージャーが作るやつ!!」
隆「ほら、高校最後の夏がもう終わてしまうだろ?せっかく俺らが仲良くなったのに別々の大学に進学してしまうと会えないかもしれねぇじゃん。だから、なにかみんな共通のもの付けて遊びたいなと思って作ったんだ。」
愛華「皆さんそれぞれ色も違いますのでいいと思いますよ。」
誉「私は赤だね!!」
あかり「ボクは黄色だ」
豪「オレはもう腕につけたぜ!!どうだ!」
杏子「似合ってるじゃん!!ぺ……うん!!」
クリス「なかなか直らないですわね。」
啓介「ありがとう。隆。大事につけておくよ。」
隆「いいって別に。ほら、皆泳ぎにいっといでよ。俺は夕食のカレーでも作って待っておくよ。」
誉「え!?隆ちゃんも遊ぼうよー。」
隆「俺まで入ったら晩御飯作る人がいなくなるだろ?だから、支度をきっちりしておくよ。」
亜沙美「だったらみんなで交代で鍋を見ようよ!」
愛華「それはありですね。」
クリス「私、料理したことないのですが……野菜を10cm角のぶつ切りにしかできなくて……」
亜沙美「10cm角って大きすぎない!?何に使うのそれ!?」
誉「それじゃぁ、2人ずつで見るのはどう?」
杏子「いいね!そうしようじゃん!」
愛華「まだ、日本語に違和感が……」
あかり「一生治らなさそうな……」
杏子「ちょっと!それは失礼じゃない!?」
あかり「あ、普通にしゃべれるんだ……」
杏子「そんなこと言うんだ~!そういう子にはお仕置きだ!うりゃぁ!」
あかり「うわぁぁぁ!!抱き着かないでぇ!」
誉「あ、あっかりんにそれをしていいのは私だけだぞー!杏子ちゃーん!」
あかり「そういうことじゃ……あぁ……誰か助けてよー!!」
啓介「ハハハ……ほら、隆も飯作る前に着替えなよ」
隆「あぁ。みんな、ありがとう」
豪「気にすんな。オレたち、親友だろ?」
隆「そうだね。(ボソッと)親友……か……」
啓介「隆……?」
隆「いや、なんでもない。そうだな。親友だもんな。」
―間―
啓介M「その後、隆は服を着替えると、カレーを作り始めた。ボクたちの順番が来たので、豪と一緒にカレーの鍋を見ていた。グツグツと煮立った鍋を火から上げ、飯盒で炊いたご飯を盛りつけ、食卓を囲む。皆の笑顔がまぶしかった。ボクは、今までのどの一時よりもこの時間が一番楽しかった。こんな楽しい時間が続けばいいのに。……そう思っていた。」
―間―
クリス「ごちそうさまでした。」
隆「お粗末さまでした。」
愛華「おいしかったわ。」
隆「そういってもらえると光栄だよ。」
豪「いやぁ、うまかったなぁ……啓介!今何時だ?」
啓介「ん?えーと……20時だね。」
豪「お!それじゃぁ、花火しようぜ!」
クリス「花火?そんなの買ってないですわよ?」
杏子「ふっふっふ、実は……ジャジャジャジャーン!」
亜沙美「お、花火じゃん!」
啓介「いつのまに買ってたんだ?」
杏子「家にあったの持ってきたのー!」
愛華「あら、ぺぽが抜けましたね。日本語にも違和感がありませんよ。」
杏子「え?本当!?やったー!!これで私も立派なギャルだぁ!!」
愛華「誰もそこまで言ってないですよ。」
誉「いやぁ、しかし隆ちゃん料理うまいね!本当においしかったよー。」
あかり「うん……そうだね……」
豪「お、見ろよ!あかりの顔がにやけてるぜ~!」
あかり「べ……別に、そんなに美味しくなかったんだから!!ちょっと……ほんのちょっとだけ美味しかっただけだから!!」
誉「慌てちゃって!本当にかわいいなぁあかりちゃんは!」
あかり「ちょやめ……(あくび)」
誉「ん?どうしたの?あっかり……ん~……(寝息)」
亜沙美「ん?あくび……って……ねむ……(寝息)」
啓介「なん……だ?急に……(寝息)」
杏子「ふぇ?……花……火……しない……の?(寝息)」
―間―
啓介「……ん……んん……」
―間―
啓介「あれ?寝ちゃってたのか……」
―間―
啓介「火が……消えてる……みんなは?」
亜沙美「ん……んん……」
啓介「亜沙美!!」
亜沙美「あ……れ?啓介?どうしたの?」
啓介「亜沙美、今何時かわかる?」
亜沙美「23時だね。」
啓介「4時間ぐらいか……かなりの時間寝てたみたいだね。そういや、他のみんなのこと知らない?」
豪「お、啓介!起きたか!!」
啓介「豪、それにみんな!」
あかり「これ……どうなってるの?」
誉「ねぇ、私の携帯がみつからないんだけど知らない?ちなみに、あっかりんも豪ちゃんも見つからないらしいんだけど。」
啓介「どういうこと?」
隆「代わりにこのスマホがポケットの中に入っていたんだけど……ほら、これ」
啓介「なんだ?これ……」
愛華「よくわからないメッセージが待ち受けに書かれているのですよ。私の場合はLook aheadと書かれていますね。」
杏子「Look ahead?先読みだっけ?そういう私はFashionって書かれてるけど……」
豪「なんか、そのままって感じだな」
クリス「この書かれている文字に何か意味があるかしら?」
GM「意味があるのですよ」
隆「誰だ!?」
GM「うーん、誰と言われましても答えられないのが私の存在なのでして。」
豪「なんだテメェは!!」
杏子「いきなりなんなのよ!」
GM「あの~、話を聞いていますかね?答えられない存在と言っているでしょう?ま、いいですけども。名乗らないのも失礼ですので、私のことはゲームマスター……GMと名乗っておきましょうか」
隆「ゲームマスター?まてよ。俺たちはまだゲームを初めていないぞ?」
GM「まだという表現は聊かおかしいですね。もう、ゲームは始まっているのですが……」
愛華「なんですって!?」
あかり「ゲームに……知らない間に参加していた……ということ?」
GM「ご明察。ただ、説明をしていないだけで、あなたたちはもう参加しているのですよ。」
豪「ふざけるなよ!そんなの認められるか!!」
GM「ふざけてなんかいませんし、認めるもクソもありませんよ。ま、子ども相手に怒っても仕方ありません。それでは、説明を致しましょうか。」
豪「てめぇ!」
クリス「待ちなさい」
豪「待てるか!!こんな勝手な事をしているやつを……」
クリス「待てと言っているのが聞こえないのですか!!」
豪「ぐっ……」
クリス「皆様、よく聞いてください。GMの役割というのは、所謂、指定されたゲームを回すという役割をしています。皆様に分かりやすく言うと、GMの言う事は絶対なのです。そのGMの言う事に逆らうとこのゲームから退場させられます。」
あかり「退場って……それは……」
クリス「こういう類のゲームというのはGMの言う事を聞いておかないと最悪な事が起こってしまいます。例えば、死んでしまうとか。」
GM以外全員「……ッ!?」
誉「死ぬのは……嫌だ」
啓介「……にしても詳しいね。クリス。」
クリス「このようなゲームの経験もありますので。」
杏子「大変なのね……お嬢様って。」
隆「そんなの関係ねぇだろ!!お前ら、これがどういう状況かわかってんのか!?」
愛華「わかっていないのはあなたでしょう?石橋さん。」
隆「なんだと!?」
啓介「やめろよ!今はボクらで争っている場合じゃないだろ!!」
GM「さぁて、話はまとまりましたかね?そろそろ、今回のゲームを説明したいのですが……私の目には一人ほど納得いっていない人間がいるように見えるのですが、何か不満でもあるのですか。」
隆「当たり前だ!!そんなの……当たり前だろ!!」
啓介「やめろ!!隆!」
GM「ほう……私を否定するというのですか?」
隆「あぁ……そうだ!お前を否定して……お前を倒して!俺たちは……」
GM「やれるものならやってみなさい小童!その選択が間違いという事を証明して差し上げましょう。」
隆「俺の選択は……間違っていない!!」
GM「そうですか……では……死になさいな」
隆「させねぇよ!!うらぁ!!」
あかり「石!?」
GM「おっと。そんな石ころが当たるとでも?」
誉「でも、形勢が不利だよ……」
啓介「そりゃそうだよ……やめろ、隆!今ならまだ……」
GM「許す……とでもお思いか?」
啓介「……え?」
GM「先ほど、そこのお嬢さんが言っていたことを忘れたのですか?GMの言う事は絶対であり、その言葉に逆らうとそのプレイヤーは退場となる。私の場合は……死だ」
愛華「右手が黒く!?」
杏子「逃げて隆っち!!」
隆「は?何言ってるんだ?東……叫んでいるようだけど、声が聞こえない……」
GM「そこの逃げてといったお嬢さん。いま、彼にはどのような声も届きませんよ。」
杏子「え?」
GM「いま、彼は闇の中にいるのですよ……といっても、キミたちには彼の姿が見えるし勿論彼にもキミたちの姿が見える。ただ単にお互いの声や気持ちが届かないだけ。一人さみしく彼は死ぬのです。」
隆「おい!何言ってるんだ!全く聞こえないぞ!」
GM「さて、そろそろいい頃合いですかね。ダークネス・フレア(指を鳴らす)」
隆「え?火?ウァァァァァ!!」
啓介「隆!!」
隆「うぁぁぁぁぁ!熱い!!熱いー!!」
GM「さて、そろそろクライマックスですね。爆ぜよ。(指を鳴らす)」
ー間ー
啓介「たか……し?」
GM「歯向かうものには天誅を……実にあっけない最期でしたね。 」
亜沙美「イヤ……イヤイヤイヤイヤ!!イヤ――――――!!」
GM「だから言ったでしょう。その選択は間違っていると」
誉「うそ……でしょ?」
豪「冗談……きついぜ」
愛華「…………」
クリス「だから言いましたのに……」
杏子「嘘……噓でしょ?夢……だよね?」
あかり「え……え?どういう……」
GM「やれやれ。見せしめが必要かとは思っていましたが、まさか、私が能力を使う事になろうとはね。さて、ゲームの説明に戻りましょうか。今からキミたちにやってもらうゲームは『宝探し鬼ごっこ』だ。」
啓介「何……言ってんだ……こんなときに……人が一人死んでいるんだぞ!それも、お前が殺した!!」
亜沙美「(泣きながら)啓介!!やめて!落ちついて!」
啓介「亜沙美……でも」
クリス「平さんの言う通りですわ。もうこれ以上犠牲者を出すのはあまりにもナンセンスですわ。」
啓介「そんな言い方……」
GM「(遮るように)いいですかねぇ?説明してもー」
愛華「構いません」
啓介「愛華!!」
愛華「まだわからないの!!」
啓介「!?」
愛華「石橋さんの……彼の犠牲を無駄にしないでください。彼のことを思うのはそれからでも遅くありません。私はこれ以上犠牲者を出したくないのです。」
啓介「…………」
GM「よさそうですね。全く、近頃のガキどもは頭に血が上りやすいのですかねぇ」
杏子「おじさんがそうやって煽るからじゃない?おとなしく説明してよー」
亜沙美「ちょっと!?」
GM「彼女の言う通りですね。申し訳ございませんでした。それでは説明いたしましょう。まず、このキャンプ場には私を含めた鬼が生息しています。その鬼にあなたたち全員が捕まったら皆様方の負けです。それまでにあなたたちがこのキャンプ場に隠されている『全ての手がかり』を見つけることかつ、私たち鬼を全滅させることができれば、あなたたちの勝ちとなっております。」
クリス「あの……」
GM「なんでしょうか。」
クリス「鬼に捕まるとはどのような方法かしら?普通の鬼ごっこならタッチで捕まるというのが鉄則ですわね」
GM「この鬼ごっこがそんな生ぬるいルールで進むわけがないでしょう。皆様が鬼を倒すのに私たちが何もしないはずがない。鬼に捕まる。それは、あなたたち自身の死ですよ。」
豪「は!?」
愛華「私たちの……死……」
あかり「いやだ……そんなの嫌だ……」
啓介「そんなの……呑めるわけないじゃないか!!」
GM「それでは、この愚か者みたいに死にますか?ま、私としてはそちらの方がむしろアリですがね。」
啓介「ふざけるな!」
亜沙美「耐えて。啓介」
啓介「ぐっ……」
GM「ちなみに能力の使用ですが、制限は一切ございません。私たち鬼に対して使うのはもちろんのこと、むかついた仲間を殴るのにも使っていただいて構いません。」
豪「能力……ってなんだ?」
GM「皆様に与えられた特別な力のことですよ。使い方によっては人も殺すことができてしまうんです。すごいでしょう?」
愛華「安心してください。味方を傷つけるのには使いませんので。」
GM「面白くないですね。ま、いいですが。それと鬼の数は私を含めて8人となっておりますのでその辺りはよろしくお願いしますね。それでは、いきなり始めると私たち有利ですので、30分後にスタートいたします。よろしくお願い致します。あ、最後に……賭けるのはお前たちの命。鬼に殺されるか鬼を殺すか選ぶんだな。又アナウンスします。失礼いたしますね。」
亜沙美「……消えた」
あかり「よく……わかってないんだけど……どういうこと?」
愛華「とりあえずこの事件の黒幕を突き止めるのはわかったのですが……」
クリス「そのうえで、鬼を全滅しろと言っていましたわね」
豪「8体もいやがんのに全滅とか厳しくねぇか?」
誉「もしかしてそのためのスマホなんじゃない?」
亜沙美「あれ?ねぇねぇ、スマホの画面に名に書かれてるよ!Ability?どういう意味だろう……」
GM「あ、失礼しました」
啓介「ぐっ!?」
杏子「頭の中から声が!?」
GM「あぁ、すみませんね。出ていくのが面倒くさいもので。そのスマホに書かれている英語に関して説明するのを忘れてました。その英語は皆様の特殊能力でございます。」
豪「特殊能力だぁ?」
GM「はい。ただ、今の状態ではその特殊能力は使えません。」
杏子「どうしたらつかえるのよ!」
GM「今から言うのでしょうが。黙っててもらえませんか?」
杏子「っ……はいはい……」
GM「(咳払い)それでは皆様。そのスマホにあるダウンロードというところをタップしてください。」
愛華「ここね」
あかり「こうかな……うぐあ!!頭が痛い!!」
GM「あ、言い忘れてました。ダウンロードの3分間は頭痛に襲われますのでご注意を」
豪「先言えや!!く……いてぇ!!!」
―間―
≪3分後≫
亜沙美「ハァ……ハァ……終わった?」
GM「はい、無事終わりましたね。これで皆様に特殊能力が付与されました。」
啓介「へぇ……どれ。」
あかり「うわぁ!!って、頭に何かついた……」
誉「あ、ウサミミ!」
あかり「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
啓介「すまん。ちょっとした出来心だ」
あかり「ちょっとぉ!?赤羽くん!早くウサミミとってよ!!」
啓介「わかったわかった。えーと、こうか?」
あかり「ふぅー、なくなったみたい。」
誉「えー。もうちょっとみたかったなぁ。」
あかり「やめてよ!」
愛華「でも、これで何かしらの特殊能力が私たちに付与されたのがわかりましたね。」
クリス「えぇ。」
GM「さて、特殊能力も付与されたので、私たちはもう3分休憩させていただきましょう。あ、もう手掛かりはばらまいているので探しに行ってもいいですよー」
豪「な!?それを先に言えってんだよ!!おい、どうするんだ。啓介」
啓介「…………」
豪「啓介?」
啓介「……隆。」
亜沙美「隆……死んじゃったの?」
クリス「脈がないので死んでますわね。」
豪「おい!もっと言い方ってもんが!」
クリス「死んでしまったのは仕方ないですわ。」
啓介「仕方ないってなんだよ!(胸倉つかむ)」
SE:カラスの鳴き声
亜沙美「ちょ!?啓介!?」
クリス「あの……放してくださる?」
啓介「……」
クリス「私は彼に忠告したはずですわ。GMに逆らってはいけないと。私だって何も思っていないはずないでしょう。仮にも親友のうちの一人ですのよ。その親友がこんな形でなくなるのはイイとは思ってなくてよ。」
啓介「すまない……クリス(手を放す)」
クリス「いいですわよ。……それで、これからどうなさるの?」
啓介「どうするもこうするも手がかりを探しに行くしかないわけだけど……みんなでぞろぞろいくのもなぁ……」
クリス「ツーマンセルはどうかしら?」
杏子「ツー……マンセル?なにそれ?」
愛華「二人で行動しましょうってことですよ。」
杏子「あ、そういう事ね!」
誉「ま、サバゲーとかでよく使う言葉だからわからなくて当然かもねー。」
啓介「いいんじゃないかな。ツーマンセルで。それじゃぁ、それぞれ二人組になろう。」
亜沙美「その前にさ、携帯で家に電話していい?お母さん心配しちゃうからさ。」
啓介「あぁ……。」
亜沙美「…………うそ。」
啓介「どうした?亜沙美。」
亜沙美「家に繋がらない……この番号は使われていませんって。」
豪「なんだと!?」
クリス「私のドライバーにもつながりませんわ。」
愛華「お母様の携帯にも繋がらないわ……。」
誉「あっかりんの携帯にもつながらないよ!」
あかり「なんで僕にかけたの!?」
誉「なんとなく!」
あかり「なんとなくって……」
豪「おい、状況が状況なんだから、さっさといこうや。おい、クリス!行くぞ!!」
クリス「単細胞が一緒だと聊か不安ですわね」
豪「あぁ?」
クリス「ま、いいですわ。いきますわよ」
豪「素直じゃねぇなぁ。んじゃ、先行くからよ。各自解散でいいのか?」
啓介「うん。明日の朝に報告会でもしよう。」
豪「わぁった。じゃぁな」
―間―
誉「じゃ、私たちもいこっか。あっかりん!」
あかり「え?ボクでいいの?」
誉「何言ってるのよ!あっかりんだからいいんでしょ?ほら、行くよ!」
あかり「ちょま……引っ張らないでって!!当たってる……当たってるからぁ!」
―間―
愛華「杏子さん、ご一緒しませんか?」
杏子「え、いいの?愛華っち?」
愛華「ええ。あの……その……」
杏子「?」
愛華「こういうのは親友と行きたいじゃないですか」
杏子「ハハ。もう、照れちゃって可愛いなぁ!」
愛華「ッ!もう、行くわよ!!」
杏子「もう、置いていかないでよー!!愛華っちー!!」
―間―
亜沙美「結局こうなるんだよねー。いつも。」
啓介「そう……だね」
亜沙美「啓介、行こっか。」
啓介「あ、ちょっと待って!」
亜沙美「ん?何?どうしたの?」
啓介「少しここを見ておきたいんだ。」
亜沙美「?」
ー間ー
《別れてから10分後。豪・クリスサイド≫
豪「あーあ、なんでお前と歩いてんだよオレ」
クリス「こっちが聞きたいですわ。誘ったのはそちらからですのよ?」
豪「いや、そうなんだけど……な」
クリス「全く、変な人ですわ。ん?」
豪「どした?」
クリス「これってGMの言っていた手がかりでは?」
豪「お、確かにそうだな。早く開けろよ!」
クリス「急かさないでくださる?」
豪「おぉ、悪ぃ悪い。」
クリス「全く…………これは写真かしら?」
豪「そうみたいだな……!?この写真は確か……」
クリス「ッ!?そこから離れて!!」
豪「今度はなんだ!うぉ!!」
クリス「とんだお客様の乱入ですわね」
鬼「…………」
豪「こいつが……鬼か……」
クリス「縮こまってるんじゃありません。」
豪「だぁれが縮こまってんだ!!いくぞ!鬼退治だ!!」
SE:カラスの鳴き声
―間―
≪別れてから10分後。亜沙美、啓介サイド≫
亜沙美「ねぇ、ここって隆が死んだところでしょ?他を探す方がいいんじゃないの?」
啓介「いや……ここに何かあるかもしれないって思ってね。」
亜沙美「犯人は現場に戻るってやつ?」
啓介「そうじゃなくて、単純に……ん?」
亜沙美「どうしたの?」
啓介「これは……隆のスマホ?」
亜沙美「あ、本当だ。なんて書いてるんだろ?」
啓介「起動してみるか?」
亜沙美「うん……って、それ血がべっとりついてるよ!?」
啓介「うん。これ、つかないかもしれないね。」
亜沙美「そうだね。」
啓介「とりあえずやってみるよ。」
亜沙美「うん。どう?……つきそう?」
啓介「ダメだ……やっぱりつかないや。このスマホが点けば何かわかるかもしれないな……」
亜沙美「だったら、私が持っておこうか?」
啓介「うん。それじゃぁ、お願いするよ。」
亜沙美「オッケー!……あ、これ何だろう?」
啓介「これ……か?なんか変な黒い痕がついているけども……」
亜沙美「ね?私って大発見?」
啓介「わかんないけど。一応、写真に収めておいてくれない?」
亜沙美「うん、わかった。はい、チーズ!」
啓介「旅行か!」
亜沙美「キャンプだよ!!」
啓介「あ、ごめん……そういう意味じゃなくて……ま、いいか。この調子で探そう。」
亜沙美「うん!」
SE:カラスの鳴き声
啓介「ん?カラスか?」
亜沙美「そういえば、さっきから急に鳴くようになったね」
啓介「ま、いいか。あまり関係なさそうだし、捜索を続けよう。」
亜沙美「わかった!」
―間―
≪別れてから10分後。あかり・誉サイド≫
あかり「ちょっと誉!くっつかないでって!!」
誉「だって、あっかりんモフモフしたいもん!!」
あかり「でも、いまから調査でしょ!」
誉「あれ?あっかりんは私にモフモフされてうれしくないの?」
あかり「え……いやぁ……その……うれしい……ですよ?」
誉「ならいいじゃん!」
あかり「でも、今は違う!今は違うからね!!」
誉「あ、そういえば、あっかりんの能力って何なの?」
あかり「僕の能力はScam(スキャㇺ)って書かれてるね」
誉「ん?聞いたことないな。どういう意味?」
あかり「詐欺って意味みたい。相手の攻撃方向を変更できたり、残像を出すことができるみたいだね。あと、相手に気づかれずに燃やしたり凍らしたりもできるみたい。」
誉「すごい能力じゃん!私のはAgilityで、回避率があがって攻撃が当たらないし、攻撃速度が上がったりするんだけど、時間制限があるみたい。」
あかり「敏捷性……誉にぴったりだね」
誉「あっかりんも詐欺が似合ってると思うよ!」
あかり「ちょっと、それってどういう意味!?って、うわぁ!!」
誉「あっかりん!!大丈夫?」
あかり「大……丈夫。けどいきなり何?」
誉「えーと……あ!!あそこ!」
鬼「…………」
あかり「なんでこんなところに……しかも6体も……」
誉「そんなの言ってられないじゃん。これに勝ったら死ぬほどモフらせてあげるからがんばって!あっかりん!」
あかり「それってボクのセリフじゃないかなぁ!!……でも、ボクだって死ぬわけにはいかないんだ。絶対に誉を守って見せる!」
SE:カラスの鳴き声
―間―
≪別れてから10分後。愛華・杏子サイド≫
愛華「あの……杏子さん」
杏子「ん?どうしたの?愛華っち?」
愛華「こういう時に不謹慎だと思うのですが……なんで、私にギャル語を教えてと頼んだのですか?他にもそういう友達はいるでしょう?」
杏子「いや、いないよ。私。ギャルって一番嫌いな人種だからさ」
愛華「え?」
杏子「「ほら、私っていじめられてたでしょ?中学生の時に同級生のギャルに目をつけられちゃってね。『気取ってんじゃねぇよ』ってクラスのギャルによく言われたんだ。『あんたのせいで、私がかすんじまうんだよ!』って理不尽に暴力をふるわれた時もあった。ギャル数人に囲まれて、脅されてお金を取られたり、ひどい時だと夜道で服をズタズタにされちゃったりね。」」
愛華「……そこまでされてなぜギャルに?」
杏子「ほら、私バカだからさ。同じ土俵に立ったらいじめられないと思ったのね。だから、立派なギャルになってみんなを見返してやろうって」
愛華「なんか方向性が違う気がしますが……」
杏子「えへへ……あとね。愛華っちだからいうけど。私って女の子が好きなんだ。」
愛華「……は?」
杏子「だからね、女の人のことを知りたくて、いろんな女の人になりきってるの。それに、自分を隠したら変われるのかなって思ったんだ。私、自分のことが嫌いだからさ。……変わりたかったんだよ。」
愛華「馬鹿ね。そんなので変わるわけないじゃないの。」
杏子「だから、愛華っちに頼んだんだ。愛華っちは私の理想の女性だからさ!」
愛華「そう……ありがとう。今気づいたわ。あなたと私の共通点。」
杏子「え?」
愛華「私も女性が好きなのよ」
杏子「……は?」
(2人笑う)
SE:カラスの鳴き声
杏子「ん?カラスの鳴き声……え!?」
愛華「どうしたんですか?……!?嘘……でしょ?」
―間―
≪別れてから20分後。豪・クリスサイド≫
豪「へっ!鬼一体ならオレでも楽勝じゃねぇか!」
クリス「ですが、この鬼……かなり強そうですわよ……」
豪「ま、それでもやるしかねぇだろ。それに……ん?」
鬼「…………」
豪「どうやら鬼さんは待ってくれないらしいな」
クリス「そうですわね。それでは、参りますわよ。」
豪「いきましょうか……って……ん?なんだこの足音……」
クリス「近くにいる鬼を一体呼びましたの」
豪「なんで、敵をもう一体呼んでんだ!?」
クリス「こうするためですわ。『我が命じる!この鬼を討伐しなさい!!』」
豪「は?そんなんで……」
豪「鬼たちが……戦ってる!?」
クリス「私の能力はCommand。いわゆる統率の能力ですわ。半径30mにいる対象物にいう事を利かせられるみたいですの。能力の相性に寄るらしいのですが、この鬼に対しては相性が良かったみたいですわね。これで少しでも鬼の体力が削れていけば……」
豪「そうか……相変わらず頭いいな!」
クリス「それは関係ないのではありませんこと?」
豪「あっ……おい……呼んだ鬼がやられたぞ……」
クリス「しかも体力を削った方の鬼はピンピンしていますわね。どうすれば……」
鬼「ッ!!」
豪「クリス!あぶねぇ!!」
クリス「え!?キャアッ!!」
―間―
≪別れてから20分後。あかり・誉サイド≫
誉「これって絶体絶命ってやつだよね?」
あかり「そうだね……でも、やるしかないよ」
誉「へぇー、あっかりんにしてはやる気じゃん。それじゃぁいくよ……ってあれ!?」
あかり「鬼が1体どっかに行っちゃった……」
誉「でもこれで、1体減ったってわけだからいいじゃん!それじゃぁ、いくよ!アジリティ・オーバー!!」
あかり「制限時間に気を付けてね」
誉「はいはい。ね?お互いの能力の話しといてよかったでしょ?」
あかり「そうだね。じゃぁ、ボクは……おーい!!こっちだよー!!」
鬼「……ッ!!」
あかり「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
誉「あっかりん!!」
あかり「……なんちゃって」
誉「!?あっかりんがくずれて……」
あかり「いまだよ!誉!!」
誉「!?わ……わかってるよ!!連撃!クロス・ディザルト!!」
鬼「!?」
あかり「さすが誉。連撃で3人倒したね!」
誉「さて、次!連撃!クロス・ディザルト!!」
鬼「ッ!?」
誉「ハァ……ハァ……ハァ……」
あかり「これで合計4体倒したけどそろそろ限界?」
誉「そう……だね……」
あかり「そっか。じゃぁ、休んでて」
誉「そうだね。そうさせてもらおうか。あと1体なんだから、あっかりんでもいけるでしょ?」
あかり「ちょっと、ボクのことなめすぎじゃないかなぁ!?そこでしっかり座ってみといてよ!」
誉「わかったよん。あっかりん。」
あかり「(深呼吸)さ、ほら、こっちだよー!!」
鬼「!!」
あかり「本当にバカだよね。そこで、氷の息を吐いちゃうと跳ね返っちゃうよー!」
鬼「?」
あかり「そこは死に位置だよ。」
鬼「!?」
誉「やった!鬼が凍った!!」
あかり「成功したかな……」
誉「さっすが、あっかりん!!」
あかり「ありが……って、抱きつかないでよ!!」
誉「いいじゃん!!別に!……ってこれは?」
あかり「あれ?封筒?ちょっと待ってね。今開ける」
誉「!?これは!!」
あかり「なんでこんな写真が!?」
誉「……今は考えても仕方ないから戻ろっか」
あかり「え?いいの?」
誉「うん。じゃないと、あっかりんとイチャイチャできないもん」
あかり「もう!こんな時に何考えてんの!」
誉「冗談だよ……うん、冗談」
あかり「誉?」
誉「ほら、いこ」
あかり「そう……だね」
SE:カラスの鳴き声
あかり「うわ!?なに!?」
誉「カラスだ。今まで見なかったのに……」
あかり「もう、びっくりさせないでよね」
誉「あ、あっかりん!もしかしてカラスでびっくりしちゃった!?可愛いなぁもう!」
あかり「あぁ、もう!ひっつかないでってばぁ!!」
―間―
≪別れてから25分後。豪・クリスサイド≫
豪「大丈夫か。クリス」
クリス「……えぇ。あの、その……近いですわ……」
豪「おぉっと……すまねぇ」
クリス「別に構いませんわ……あの……」
豪「ん?なんだ?」
クリス「あの……どうして私を助けたのです?」
豪「決まってるじゃねぇか。仲間を死なせたくねぇんだよ。……それに」
クリス「それに?」
豪「惚れた女を死なせたい男なんていねぇだろ。」
クリス「!?それって」
豪「さて、来るぞ。早ぇとこあいつを倒さねぇとな。」
クリス「……ですわね。私もやれることを……」
豪「クリス!お前は休んでろ。」
クリス「でも……」
豪「いいから!休んどけ!オレにもかっこいいところ見せさせてくれよ。」
クリス「……えぇ。お願いします。豪さん。」
豪「あぁ、任せとけ!……さて、行くぞ!くそ鬼が!!ソニック・ブースト!!」
クリス「豪さんのスピードが上がった!?」
豪「オレの能力はSpeedだ!全ての速度が3倍になって、連撃速度も3倍になる。オレにとっちゃぁ、最高の能力ってわけよ!さぁ、くそ鬼が!オレのスピードについてこられるか?オラァ!!」
鬼「!?」
豪「オラオラァ、足が止まってるぜ?鬼さん此方ってな!……これで終わりだ!!サイクロン・ソニックブーム!!」
鬼「!!!」
クリス「……やりましたわね」
豪「あぁ。とりあえず、今日は寝るか」
クリス「寝るんですの?こんな時に」
豪「どちらにしろ報告会は明日だ。ゆっくり寝させてもらおうや。」
クリス「わかりました。……意外と頼もしいですわね」
豪「う……うるせぇ!!行くぞ!!」
クリス「はい……豪さん」
―間―
≪別れてから20分後。愛華・杏子サイド≫
杏子「なんで……なんでアンタが生きてんのよ!!」
愛華「あなたは死んだはずでしょう?石橋さん……」
隆「あぁ。確かに俺は死んだよ。……もう一人のね」
杏子「どういう……意味?」
隆「そんなことよりいいのか?」
愛華「え?」
隆「俺がこうやってお前らの前に出たってことがどういうことか。杏子のバカなおつむでもわかるだろ?」
杏子「バカってあんたねぇ!」
愛華「まって」
杏子「でも!」
愛華「私たちは……彼と戦わなくてはいけない……」
隆「正解。さすが、委員長様だ。」
杏子「え?嘘……でしょ?」
愛華「嘘でも何でもない。これが事実なのですよ。」
杏子「事実……」
隆「さ、それでは始めようか。血沸き肉踊る殺し合いを……ね!!」
杏子「グッ!!」
愛華「はっ!」
隆「へぇ~。バカの方はとっさに防御力の高い服を着て、頭のいい方はすぐによけたか。さすが、FashionとLook aheadの能力だ。」
愛華「私たちの能力を知っているような言い方ね。」
隆「当然だろ?おれはこっちサイドの人間なんだからよ。ほら、この技にも見覚えがあるだろ?ダークネス・フレア!!」
愛華「!?その技は!?」
杏子「はいはーい!そうはさせませんよ!!ファッション・チェンジ!消防士!」
隆「闇の炎が消防士の役職で消せるとでも?」
杏子「ところがどっこい、消せちゃうんだよね!!」
隆「何?」
杏子「からの、ファッション強化!聖水放水!!」
隆「な……闇の炎が消えて……」
杏子「からのファッション・チェンジ!チャイナドレス!!」
隆「今度はチャイナドレス?」
杏子「ハァっ!クンフーアタック!!」
隆「ぬぉ!!やるな。だが近づいたのは間違いだったな。」
杏子「え?」
愛華「危ない!」
隆「闇の力よ。我が拳にまとえ。ヘルフレアゲート」
杏子「うそ……避けれない……!」
隆「捕まえた」
杏子「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
愛華「杏子ちゃん!!」
隆「まずは一人」
愛華「私の……親友を……許さない……許さない!!」
隆「まだわからないのか。お前の能力では俺には一生勝てない。お前の能力は俺の下位互換なんだから。」
愛華「下位互換?何を言っているのです。私の能力があなたに破られるわけがない!」
隆「なら、やってみればいいじゃない。」
愛華「言われなくてもそうするわ。ただ、その前に1つだけ確認させてください。」
隆「何をだ?」
愛華「あなた……実は」
SE:カラスの鳴き声
隆「それも正解だ。よくそこまで導けたな。」
愛華「あなたの出してくれた技のおかげですよ。本当に感謝するわ。……これで、思い残すことはなにもない。全力でいくわ!!」
隆「全力……か。下位互換にそこまで言われるとは俺もなめられたものだな。いいよ、来いよ!力の差を見せてやる。」
愛華M「次は右から来る」
隆「なんて思ってんだろ?」
愛華「ウグッ……ひ……左?」
隆「さぁ、次はどこからかなぁ」
愛華M「次は能力を使って後ろから」
隆「残念。正面でした」
愛華「え?うそ……うぐっ……」
隆「捕まえた……ダークネスエッジ!!」
愛華「ウアァァァァァァァァァ!!」
隆「……これで二人か……よわいな。」
―間―
隆「もっと楽しませてくれよ……死刑囚ども」
―間―
≪別れてから20分後。啓介・亜沙美サイド≫
啓介「あまり碌なもの見つからなかったな」
亜沙美「そうね。んーと……」
啓介「何してるんだ?」
亜沙美「このスマホ、ご丁寧にメモ機能まであるからメモしてるのよ。……っと終わり!」
啓介「ありがとうな。」
亜沙美「うん!……みんな、鬼に出会ってないかな?」
啓介「そうだな……出会ってなければいいんだけど……」
亜沙美「そうだね……」
SE:カラスの鳴き声
亜沙美「って何!?」
啓介「あぁ、カラスの鳴き声だね」
亜沙美「カラスかぁ。何回聞いてもびっくりするなぁもう……」
啓介「そうだね。さぁ、とりあえずもう寝ようか」
亜沙美「うん。早く戻って寝よう。」
―間―
亜沙美M「みんな深くは眠れなかった。仲間が死ぬのを見たところで寝られるわけがない。でも朝ご飯を食べるためにみんなは炊飯場に集まったのだけれど……」
≪炊飯場≫
啓介「あれ?委員長と杏子は?」
クリス「あら、どうしたのかしら。もう、集合時間の9時ですわよ。」
誉「杏子ちゃんは兎も角、愛華ちゃんは珍しいね。」
豪「何かあったのか?」
亜沙美「……考えたくないよ……そんなこと」
あかり「うあああああああああああああああ!!」
啓介「今の声は……あかり?」
あかり「み……みみみみんな!!」
誉「落ち着いてよあっかりん。ほら深呼吸、深呼吸。ヒッヒッフー」
豪「それはラマーズ法だろ!!」
誉「じゃ、フッフッヒー?」
豪「そういうことじゃねぇ!!」
クリス「ふざけている場合じゃないですわ。」
あかり「(深呼吸)」
クリス「落ち着いたかしら?」
あかり「うん、ありがとう。ごめんね。慌てちゃって……。」
豪「んなこたぁいい。それより、何があったんだ?」
あかり「そ……そうだ!みんな。こっちに来て」
啓介「こっち?」
あかり「うん。いいから、早く来て!」
誉「あっかりん、どうしたんだろう?」
豪「でも、あかりがここまでなるのも珍しいな」
啓介「うん。とりあえず、行ってみようか」
―間―
亜沙美「ここは水くみ場?」
あかり「そう……」
ー間ー
あかり「あの……なんて言ったらいいかわからないけど……覚悟はしといたほうがいいかも……」
豪「あ?なんでだよ?」
あかり「あの……その……」
豪「あぁ、もうじれってぇ!オレは行くぞ!この奥だろ?」
あかり「あ、まって!」
豪「あ?何が待って……ひあああああああ!」
啓介「どうした?」
豪「うそ……だろ?……流川?……東?」
亜沙美「え?流川さんと杏子ちゃんがいるの?もう、みんな待ってたんだよ!」
誉「そうだよ!なんで来なかったのさ!」
豪「お前ら!!来るな!!」
亜沙美「まったく、豪くんは何を言って……ッ!?」
誉「そうそう!理由を聞かないと……ッ!?」
―間―
豪「理由を聞くも何もねぇよ……二人とも死んでるんだからよ……」
―間―
亜沙美・誉「キャァァァァァァァァァァァァ!!」
啓介「二人が死んでるって……う……嘘だろ?」
クリス「嘘ではなさそうですわ。息も止まっておりますので。」
啓介「マジ……かよ」
亜沙美「誰が……こんなこと……」
クリス「そのためにも実際のこの事件の黒幕を突き止める必要があるのではないかしら?」
啓介「そう……だな」
クリス「では、昨夜の報告会をやりますわよ」
豪「今か!?」
クリス「人が死んでいるのに今やらないでいつやるのです。」
誉「確かにクリスちゃんの言う事には一理あるかなぁ」
あかり「誉も!?」
誉「うん。この状況だからこそ、いま話し合わないといけないと思うんだ。」
啓介「この状況って?」
誉「私は、このキャンプに来たメンバーの中に裏切り者がいると思ってるんだよ」
豪「んなことあるか!!しかも裏切り者ってなんだよ!」
誉「裏切り者は裏切り者だよ。考えてみてよ。このキャンプ場どころか、亜沙美ちゃんの家の電話にも、クリスちゃんのドライバーさんにも、自分たちの携帯にも通じないんだよ?ということは単純にこの場所にいるのは私たち以外ありえないじゃん。その中で、こんな事件が起きたってなると、私たちの誰かの犯行以外ありえないじゃない。」
豪「そんなの理由になるかよ!オレたちの中に裏切り者がいるって。」
誉「じゃぁ、これを見てもそう言えるの?」
亜沙美「写真?何の写真?」
誉「ほら、学校の学園祭で隆ちゃんが女装したときがあったじゃない?」
啓介「あぁ、確かシスターの役をやるかなんかの時だよな?」
あかり「うん。その時にボクが誉に頼まれて写真撮ってMINEに写真を送信したの覚えてる?」
亜沙美「あぁ、してたしてた!それで東さんが隆をめちゃくちゃいじったんだっけ?」
あかり「そう。その時の写真がこれなんだよ」
クリス「写真なら私たちも見つけていますわ。こちらなのですが……」
啓介「これは……校内テストの点数を貼られた時に委員長に怒られている隆の写真か」
クリス「これは、東さんが隠し撮って、同じくMINEに流された写真ですわ。」
誉「クリスちゃんの写真はわからないけど、私たちの写真はここにいる9人しか知らないんだ。あかりくんも私もこの9人以外には送信していないんだよ。」
クリス「つまりは石橋さんや亡くなった東さん、流川さん含めた中にいる可能性があると?」
啓介「そうなるな……だけど……」
亜沙美「ねぇ!啓介!これを見て!」
啓介「どうした、亜沙美……そんなに慌てて」
亜沙美「これだって!この黒い痕!見覚えない?」
啓介「!?これは……」
亜沙美「この痕って……このスマホにあったものと同じじゃない?」
豪「なんだ?その写真は?」
亜沙美「あぁ、この写真?実は、隆が死んだところの近くに隆のスマホが落ちていたんだ。それを拾った時に撮ったんだよ。」
クリス「なるほど……そのスマホはどこにあるのです?」
亜沙美「ここにあるんだけど……」
誉「うわぁ……血でべっとりだね。」
亜沙美「そうなんだよ……GMの言ってた手がかりかなぁと思って持ってきたの。」
あかり「ちょっと見せて。」
亜沙美「うん。はい。」
あかり「ありがとう。……これ、電池パック変えたら見れるかもしれないよ?」
亜沙美「え、本当!須田くん!」
あかり「うん、ちょっとやってみるね。」
ー間ー
あかり「電池パックは……これでよしと。さて、一か八か……」
ー間ー
あかり「点いた!」
誉「本当だ!さっすが、あっかりん!!」
あかり「だから、抱き着かないでって!!」
啓介「なんて書いてるんだ?」
あかり「あ、そうだった。読むね。……『Dark』。闇の力で自らを強化する。その能力の代償で黒痕がつく。黒痕って?」
亜沙美「この写真の痕じゃない?」
あかり「ねぇ、その痕ってどの辺にあったの?」
亜沙美「あぁ、こっちだよ!」
ー間ー
誉「こっちって、あれ?ここって……」
クリス「石橋さんが亡くなった場所ですわね」
啓介「そう。そして、ここにほら……」
豪「これは……東たちのところにあったやつと同じ!」
啓介「そう……これから連想されるのは……」
あかり「隆くんが……黒幕?」
誉「ちょっとまってよ!隆ちゃんは私たちの目の前で殺されたじゃん!」
クリス「考えられることとしては何らかの形で生きているという事ですわね……」
啓介「その線が濃厚になってくるな」
亜沙美「ねぇ、ということはさ……隆がこの事を計画して東さんと流川さんを殺したってこと?」
豪「何のためにそんなことしたんだよ?」
啓介「それよりもこの状況をどうやって作ったかが大事なんじゃないかと思うんだ。」
クリス「どうやって作ったか?」
啓介「僕たちに異能力が付いた理由だよ。現実世界ではありえないじゃないかこんなこと。」
あかり「確かに……これはおかしいことだね。」
啓介「これは隆本人に聞かないとわからないけど、何かしらの方法でボクたちを別の世界に放り込んだとなると話が付くんだけどな。」
あかり「でもそんなこと不可能じゃ……。」
啓介「……あぁ、だめだ!隆が黒幕なのは間違いないと思うけど動機がうかばないや。」
亜沙美「ねぇ、動機ってこの写真じゃない?」
誉「写真が……動機?」
豪「どういうことだ?」
クリス「それなら辻褄があいますわね。」
啓介「なるほど。この写真に撮られたことは隆にとって実は思い出したくもない過去なんじゃないか?」
豪「あ?なんで思い出したくねぇんだ?」
啓介「この写真だけ見ると隆がいじられているように見えるけどそれが隆にとって嫌な思いでの片鱗だとしたら、この事件を起こすための最大の動機になる……」
亜沙美「つまり……この事件の黒幕は……」
啓介「隆ってことで間違いないよな。(大声で)なぁ!そこにいるんだろう隆!!いるなら出てこいよ!」
啓介M「ボクの推理外れていてくれ……隆……来ないでくれ……!」
ー間ー
SE:カラスの鳴き声
隆「ご明察。」
隆以外全員「!?」
啓介「隆……生きていたんだね……」
隆「あれ?どうしたの?死んでたらよかったのに見たいな顔してさ」
豪「テメェが東たちを殺したんだろうが!!」
隆「さぁ、何のことかな?このゲームを忘れたの?これは鬼ごっこなんだろ?鬼に殺されたのかもしれない。」
クリス「その鬼があなたなのでしょう?」
隆「証拠は?」
誉「証拠はって、さっき自白したじゃない。ご明察って。」
隆「俺はご明察といっただけだ。そのご明察は黒幕だという事に対してであって、彼ら二人を殺したという事に対してではない。」
あかり「まだ……とぼける気なの?隆くん。」
隆「とぼけるも何も証拠も何もないじゃないか。」
啓介「隆、証拠はあるんだよ。」
隆「へぇ……その証拠って何なのさ。」
啓介「この黒痕だよ。」
隆「!?……へぇ。」
啓介「この黒痕はキミの能力の副産物だろ?それが委員長たちの死体現場にもあった。つまりは隆が殺したってことだよ!」
隆「笑わせてくれるね!なら、その動機ってなんだよ。あのとき、GMに爆破された俺が生きているのはなんでだよ!」
啓介「キミが生きているのはキミの能力のおかげだろ?」
隆「は?」
啓介「あの時あそこにいた隆はすでに自分の能力で作っておいたスケープゴートだった。そのスケープゴートをGMに殺させたんだ。」
隆「なるほど。じゃぁ、GMは誰なんだ?」
啓介「このGMも隆、お前が作り出したスケープゴートの一つなんだろ?」
隆「……ほう」
啓介「その証拠にGMが立ってたらしき場所。この辺りにも……」
クリス「黒痕ですわね」
啓介「あぁ……そして、動機だがおそらくキミが用意した手がかりの写真たちだろう。キミは杏子にからかわれ、委員長に怒られるのが嫌だった。それでその2人を消すためにまず2人の前に現れた。だけど、本当は俺たち全員消したかったんでしょう?」
あかり「え!?そうなの!?」
隆「…………」
啓介「じゃないと、全員同じ空間には入れないはずなんだ。」
隆「…………」
啓介「そして、委員長と杏子を殺して発見して混乱しているボクたちを殺す予定でここに現れたって事だと思うよ。なぁ……教えてよ隆……何がキミをそうさせたんだ?」
隆「…………アハハハハハハハハハハ!!!」
豪「壊れてんのかこいつ……」
隆「壊れてる……か……確かに壊れているかもしれないね」
亜沙美「なんで……なんでこんなことを!!」
隆「だまれ、悲劇のヒロインがよ」
亜沙美「……え?」
隆「話してやるよ!全ての手掛かり……この事件の動機ってやつを!亜沙美……知ってるんだぜ?お前がクラスの女子に俺の陰口たたいてるの。おかしいと思ったんだよな。いつもしゃべっている女子が急に離れていくんだからよ。裏で俺のあることないこと垂れていたんだろ?」
亜沙美「そ……そんなこと……」
隆「それに、他のやつらもその写真に輪をかけて色々俺に言ってきたよな?それでどれだけ俺が傷ついたかも知らずに!」
あかり「あ……あれは、ノリっていうか」
隆「ノリなら何でもやっていいのかよ!んなわけねぇだろうが!須田。お前の撮った写真のせいで俺は、傷ついた。それだけじゃねぇ!!他にもお前は色々な写真を撮っていただろ!」
誉「あっかりんは確かに色々な写真を撮っていたけど、それでも……」
隆「相沢。お前も人のことは言えないんじゃないか?」
誉「え?」
隆「お前、体育の記録会で俺の記録に細工しただろ?」
誉「!?」
隆「俺は明らかに須田より能力が上だった。それを須田の能力と俺の能力を書き換えた!そのおかげで俺の体育の成績は赤点ギリギリだったんだぞ。」
誉「そ……それは……」
クリス「石橋さん!いくらなんでも言い過ぎではなくて?」
隆「言い過ぎ?蔵屋敷……そうやって、いっつも保身に入るがな。お前だよな?俺の服やカバンをすり替えたりしてたの。」
クリス「な!?」
隆「服が破れていたり、カバンにアップリケがついてたり。それを見て笑うやつらを見てほくそ笑んでいたのはお前だったよな!移動教室で一番最後に部屋を出て、すり替えてたのはお前だよな。現場は見てたんだぜ?」
クリス「…………」
隆「……そして極めつけはお前だ啓介!」
啓介「ボク……が?」
隆「お前が俺にかけてくれた言葉覚えているか?『大丈夫だ。キミにはボクがいる。ボクたちは親友だから』」
啓介「それは本心で言って……」
隆「本心?お前、前に浅原と俺のことなんて言ってた?『あいつはおれの金魚の糞だ』って言ってただろ?」
啓介「あ……あれは、ネタで言ってたんだ!悪意は全然……」
隆「ネタでも言っていいことといけねぇことがあんだろうが!啓介……俺がお前の言葉にどれだけ助けられたと思ってるんだ?お前の言葉があったから俺は最後までやれたんだ!そんな俺の心をお前が踏みにじった!お前は自分がヒーローだという事に酔っていて、親友の気持ちなんてまったくもって考えてないんだよ!」
啓介「そんなこと……ボクは両親を早く亡くしたキミを助けようと……」
隆「また、ヒーロー気取りか?いい加減にしろよ!そんなに人の気持ちを弄んで何が楽しい?」
啓介「いや……そんなことは……思ってない……」
隆「お前が思っていようがいまいが関係ねぇよ!俺はお前らを殺す選択をしたんだ!!お前らも選択しろ!!俺を殺すか!!俺に殺されるか!」
隆、愛華、杏子、GM以外全員「…………」
隆「……なぁ、啓介。お前は……俺と戦わないのか?」
啓介「戦わない……」
隆「そうか……なら……これならどうだ?ヘル・ファイヤー!」
亜沙美「キャァァァァ!!」
啓介「亜沙美!!」
亜沙美「大丈夫……だよ……かすっただけ」
隆「今はかすらせただけだが、次は確実に当てるぞ……」
啓介「クッ……」
隆「……どうする?お前が来ないなら俺が亜沙美を殺すぞ?……闇の力をわが身にまとえ……ダークエンヴァンス。」
啓介「亜沙美を殺させはしない……」
亜沙美「え?啓介?」
豪「何呆けてんだ、平!!」
亜沙美「だって、相手は隆だよ!」
クリス「でも、やるしかないですわ。」
あかり「ボクはまだ、死にたくない……」
誉「お痛が過ぎたね。隆ちゃん!」
隆「全力で来ないと死ぬぜ?」
豪「言われなくてもそうするぜ。スピード・オブ・エンヴァンス!」
隆「スピード強化ね。面倒くさいからお前はあとね。先に死んでもらうのは……」
クリス「え?」
隆「お前だよ!蔵屋敷!!」
啓介「まずい!クリスが反応できてない!」
豪「クリス!!」
クリス「ッ!!」
ー間ー
クリス「……え?」
ー間ー
豪「だい……じょうぶ……か?」
クリス「豪……さん?」
豪「ハハ……守れて……よかったぜ」
クリス「もう、しゃべらないで!豪さん!」
豪「クリス……来世で……会えたら……オレと……つきあって……」
ー間ー
クリス「豪……さん?豪さん!豪さん!!イヤァァァァァァァ!!」
隆「あら、珍しいなぁ。ここまで取り乱す蔵屋敷は」
クリス「黙れ!!よくも私の愛しい人を!!豪さんは私を好きと言ってくれた……豪さんは最後に私とつきあってと言った……許さない……許さない!!」
隆「知ってるか?お前の能力は対象がいないと何もできねぇってこと」
クリス「ッ!」
隆「良かったな。せめて隣で殺してやるよ。ダーク・シャドウ!」
クリス「キャァァァァァァァ!!……く……豪……さん。今……逝きますわ」
啓介「豪!!クリス!!」
隆「ほら、次は誰だ?」
あかり「よくも……よくもボクの親友を!」
隆「あらあら、また来たよ。下位互換が」
あかり「うるさい!」
啓介「あかりが三人に!?」
誉「これが、あっかりんの能力……なんだけど……」
あかり「くらえ!!」
隆「遅いってぇの!」
あかり「んぐ!!」
誉「あっかりん!!」
隆「あーらら、本物に当てちゃったよ」
誉「あかりくんに触るなぁ!!アジリティ・パージ!!」
隆「うるさいなぁ」
誉「喰らえ!!」
隆「速さには力がかかる。授業で習っただろうよ相沢。」
誉「え!?」
隆「おらよ!!」
誉「ンガハッ!」
あかり「誉!!」
隆「それで、急に止まったことで心臓が破裂する」
誉「グボハッ!」
あかり「ほまれ……誉ーーーー!!」
誉「あっか……りん……だい……すき……」
隆「まったく、バカもここまでくると……ん?」
あかり「このクソ野郎がーー!!」
隆「詐欺の基本は自分を見失わないこと。小学生でもわかるぜ?ダークネス・フレア」
あかり「うぁぁぁぁぁ!!ヒッ……イ……アァァァァァァ!!」
亜沙美「相沢さん!!須田くん!!」
隆「さて、これで仲良し3人組が残ったわけだが……」
亜沙美「隆……ねぇ。どうしてなの?」
隆「ん?何が?」
亜沙美「どうしてこんなことしたの?私たち、友達じゃんか!」
隆「さっきも言っただろ?上辺だけの友情ごっこをしているお前たちに腹が立った。それだけだ。」
啓介「それだけ?……それだけのために仲間を殺したのか!!ともに遊んで、泣いて笑って……全てを分かち合った仲間を!!」
隆「プ……ハハハハハハハ!!」
亜沙美「何がおかしいのよ!」
隆「これが笑わずにいられるかよ!偽善者に善を向けられているこの状況!笑わずにはいられるか?」
啓介「ボクは、偽善で言ってるんじゃない。」
隆「あぁあぁ、もういいですよ。そんなヒーロー気取りの発言!いわゆる悲劇の主人公とそれについてきた幼馴染のヒロインの構図……反吐が出るね!!」
啓介「もう……昔の様には戻ることができないのか?」
隆「昔?いーや、俺は戻りたくないね。あんないじめられてた時代に戻るなんて考えられない。俺は!過去には戻らない!」
啓介「来るのか……隆。」
亜沙美「啓介!私、隆とは闘いたくない!」
啓介「でも、闘うしかないんだよ!闘わないと死ぬ。それだけは嫌だ!ソード・オブ・クリエイト!」
隆「剣か。ならば、俺も剣で闘ってやろう!ダーク・ソード!!いくぞ!啓介!!」
啓介「来い、隆!」
隆「うぉぉぉぉぉ!!閻鬼斬!!」
啓介「ぬぉ!剣筋に黒い光が……」
隆「その黒い光に触れるとスパッと切れるぜ?」
啓介「教えてくれてありがとうね!豪炎斬!!」
隆「範囲の広い炎攻撃か……ならば、風神撃」
啓介「うぉ!火がかき消された……てか、闇属性に風はせこいだろうよ」
隆「風は深淵からのもの。文句はねぇだろ。」
啓介「おおありだっての!次はこれだ!ガン・オブ・クリエイト!!」
隆「ほう……銃か。ならば、おれはこれでいこうか。ダーク・スナイパー!!」
啓介「スナイパーライフル!?」
隆「脳天ぶち抜け!ダークオブスナイパー……ファイヤー!」
啓介「ぬお!?あっぶね……当たったら死ぬじゃないか!」
隆「殺す気でいってるんだから当たり前だろうが!!」
啓介「なら、こっちも!フレアバレッド!!」
隆「炎の連弾か……ダークソウル」
啓介「な!?吸収した!?」
隆「そら、返してやるよ。カウンターオブファイヤー!!」
啓介「んぐッ!?」
亜沙美「啓介!!」
啓介「大丈夫……かすっただけだから」
隆「なぁ、そろそろ終わりにしようぜ。俺も全力で行かせてもらうからよ。」
啓介「なら、ボクも全力で行くよ。ソードオブクリエイト!」
隆「お互い、最期の一撃か?」
啓介「そうなるね……亜沙美……いける?」
亜沙美「うん。隆とは戦いたくないけど、啓介が死ぬのはもっと嫌。啓介が死なない為にも……私、やるよ!」
啓介「ありがとう……(深呼吸)いくよ。亜沙美!」
亜沙美「うん。アタック・チャージ!さらに、力の上乗せを!パワー・チャージ!!」
隆「くそ、亜沙美のバフを乗せたか。死んでろ!!ダークヘルヘブン!!」
亜沙美「キャァァァァァァ!!!」
啓介「亜沙美!!」
啓介M「くそ……亜沙美が……どうすれば」
ー間ー
クリスM「らしくないですわね赤羽さん」
啓介M「クリス……なぜ?」
豪M「なぜじゃねぇだろ?気張って行けや!啓介!」
啓介M「豪……でも、ボクのせいで亜沙美が……」
愛華M「そんなところで悲劇のヒーローみたいな顔はやめてください。」
啓介M「委員長……だけど……」
誉M「あぁ!もう、みみっちぃね!亜沙美ちゃんはそんなことで怒るわけないでしょ!キミは、悲劇のヒーローじゃなくて、私たちの本当のヒーローなんだからさ!」
啓介M「誉……」
あかりM「誉の言う通りだよ。ボク達がついてる。石橋くんの目を覚まさせてあげて。キミにしかできないんだからさ。」
啓介M「あかり……そうだな。ボク、やるよ!」
杏子M「それでこそ啓ちゃんよー!がんばれ、啓ちゃん!」
啓介M「杏子……わかった。ボク行くよ!」
亜沙美「私は……大丈夫……行って……隆の目を……覚まして……あげ……て……」
啓介「……サンキュー。亜沙美。………うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!喰らえ!!豪剣乱舞!!」
隆「なんの。んぐ!重い……うぁ!!しまった!俺の剣が!」
啓介「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
隆「あまい!闇は全ての能力を吸い取るんだ。ダークヘル・スタンド!!」
亜沙美「させない……よ……アビリティ・ロック!!」
隆「な!?啓介の剣が……消えない!?」
啓介「うぉぉぉぉぉぉ!!」
隆、GM以外全員「イケェェェェェェ!!」
隆「ガハッ……なぜだ……なぜ……剣が消え……ない。能力での……創作物の……はずだろう……」
啓介「たぶん、亜沙美が力を貸してくれたんだ。隆……おやすみ」
ー間ー
啓介「!?こ……これは!」
亜沙美「剣が……光った……」
隆「これは……その力だけは……その力だけは使わせるわけにはいかない。シャドー・バースト」
啓介「アガァァァッ!!」
亜沙美「啓……介」
隆「その力だけは……使わせねぇぞ!啓介ぇぇぇ!!」
啓介「いや……使わせてもらうよ……『わが命と……引き換え……に。……全ての命を……助けたまえ。クリエイト……オブ・ワールド』」
隆「くっ!闇の光よ。ダーク・エンヴァンス」
啓介「ぐ……くそ!!闇に呑まれる……」
亜沙美「2人が……闇に……行っちゃ……ダメ」
啓介「亜沙美……死ぬな!亜沙美……亜沙美ーーー!!」
啓介「亜沙美まで死んでしまった……本当に……ボクはヒーロー気取りじゃなく、本物のヒーロに……なれるのか……」
ー間ー
亜沙美「啓介……啓介……啓介」
ー間ー
≪病院 亜沙美の病室≫
亜沙美「啓介!!」
豪「うぉ!なんなんだよ!」
あかり「びっくりしたなぁ。もう」
杏子「あ、亜沙美っち!起きたんだ!」
亜沙美「あれ?みんな……死んだんじゃ」
誉「ちょっとちょっと!勝手に殺さないでよ!」
クリス「私たちは生きてますわよ!」
亜沙美「あ……ごめん……てか、なんで私病院にいるの?たしか、皆でキャンプに……」
愛華「私たちもそこで川遊びしてからの記憶が一切ないのですよ。」
豪「そういえば、平。さっきオレたちが死んだとか言ってたな?」
亜沙美「う……うん……ってあれ?」
杏子「どうしたの?亜沙美っち?」
亜沙美「みんな、ミサンガは?」
あかり「それが……目が覚めたら切れちゃって……」
誉「せっかくいいやつだったのにねぇ」
愛華「あら、亜沙美さんは切れていないのですか。」
亜沙美「うん。そうなんだ。そういえば皆、川遊び以降の記憶がないんだよね?」
杏子「そうなんだよ。もう、記憶が全然……何があったのかわかんない。」
亜沙美「そう……今から話すことを聞いて驚かないでね?」
愛華「話してくれませんか。聞いてみないと何ともですので」
亜沙美「うん。わかった。実はね……」
亜沙美M「私はあの辛くて怖くてそしてとても悲い出来事を皆に話した」
ー間ー
あかり「嘘……でしょ?」
豪「そんなの……信じられるかよ……鬼たちと異能力バトルしてその黒幕が隆だって」
杏子「しかも、今も啓ちゃんは隆っちと闘っていて」
誉「私たちが生き残っているのは、啓介ちゃんの能力のおかげってこと?」
クリス「とんだSFですわね」
愛華「でも、まだ赤羽さんと石橋さんが目を覚ましていないのは事実ですし、何とも言えないのは確かです。」
亜沙美「そうだ!啓介……イタタタ」
医者「こら、キミたち。ベッドから抜け出して何してんだ!」
杏子「げ!?先生だ!」
医者「まったく……最近の子たちは元気なのもいいけど先生の言う事をしっかり聞いてほしいね。キミたちはさっきまで昏睡状態で寝ていたんだからな。もっと体を労わって……」
亜沙美「先生!」
医者「ん?どうしたの?」
亜沙美「啓介と隆……赤羽君と石橋君の部屋はどこですか?」
医者「あぁ、彼らは特にひどいから別の部屋で入院しているよ。」
豪「おい、どうにかなんねぇのかよ!」
医者「ここは病院だ!黙れ!」
豪「す……すみません」
杏子「うわぁ、豪ちんが一発で謝った……」
豪「うっせぇ」
医者「そのことでキミたちに相談があったから来たんだ。……キミたちにあのキャンプ場で何が起こったかは聞かないよ。大人の事情があるように、子どもの事情があったんだろうからな。そこでだ。そんな仲のいいキミたちに1つお願いがある。」
愛華「お願い?」
医者「そう……彼らの病室に行って声をかけてくれないか?こんな科学的な療法信じたくないが、彼らの目を覚ますにはキミらの力が必要だと思うんだ。どうか、お願いできないだろうか。」
愛華「いいのですか?そもそも、そんなことしたらあなたは……」
医者「未来ある子どもたちのために何もしない大人なんていないさ。任せてくれ。責任は全て私がとる。」
杏子「もちろん!行くいく!」
亜沙美「ありがとうございます。」
医者「此方こそありがとうな。彼らの病室に行くぞ。」
ー間ー
≪病院 啓介、隆の病室≫
医者「さて、ここが彼らの病室だ。私は回診に行ってくるから、何かあったら、この電話で私を呼んでほしい。受話器を取るだけで携帯につながるようになってるから。それじゃ。頼むぞ。」
愛華「ありがとうございます。」
亜沙美「啓介……隆……」
ー間ー
≪世界の狭間≫
啓介「…………ここは?暗くて何も見えない……」
隆「ここは世界の狭間だよ。」
啓介「隆……世界の狭間って?」
隆「……自分の能力で自らの命を懸けて皆を救ったヒーロー気取りのバカを俺がとどめているところ。」
啓介「うるさいなぁ。てか、なんで隆がここにいるの?ボクの能力が発動されたのなら、キミだって生き返るんじゃないの?」
隆「それを俺が拒否していると言ったら?」
啓介「どうして拒否するのさ。」
隆「あのね。俺が現実に戻った所でもう俺の居場所は無いしイジメられるのはもう嫌なんだ。それよりも、啓介……お前が戻る方がよっぽどいいだろ?」
啓介「そんなこと。」
隆「ま、そんなことを言いに来たんじゃないから状況を話させてよ。いま、お前は自分の能力を使って俺以外の皆を生き返らせた。俺はそれを防ごうとしてお前を闇に吸い込ませ、仮死状態にした。ここまではいい?」
啓介「……あぁ」
隆「実はクリエイト・オブ・ワールドには裏があって、すべてという言葉を使ったらそのすべてに啓介、お前も入ってしまうんだ。今俺と啓介がいるのがいわゆる世界の狭間。啓介の能力を微かに使える状態にして今ここに連れてきているって訳だ。」
啓介「そうなのか……」
隆「そう。さて、ここで俺からお前に最期の選択を上げよう。」
啓介「最期の……選択?」
隆「あぁ。元の世界に生きて帰りたいか。俺と一緒に闇に呑まれ存在を消すか。どっちがいい?」
啓介「…………」
啓介M「どうすれば……ボクは生きて帰りたい……でも……」
亜沙美「啓介!」
啓介M「ん?亜沙美の声。」
隆「あら、ヒーローをお待ちかねの皆様が啓介に声をかけているみたいだぜ?」
啓介「これもキミの能力なのか?」
隆「お前の判断が遅ぇからアシストだよ。」
啓介「……………」
ー間ー
≪世界の狭間から2人の病室をみる啓介と隆≫
豪「こら、啓介!隆!まだオレはテメェらに恩は返してねぇんだぞ!オレを窮地から救ってくれたのはテメェらだろ!!そんなテメェらが勝手に死ぬんじゃねぇよ!」
クリス「赤羽さん、石橋さん。あなた方はまだやるべきことがありますわ。お二人がここで死ぬのは私が許しません!!」
啓介「ありがとう……豪、クリス」
あかり「あの……その……とにかく帰ってきて!」
誉「何言ってるんだよ、あっかりん!そんなんじゃ気持ちは伝わらないでしょ!おーい!2人ともー!美味しいご飯作って待ってるんだから、早く帰ってきてよー!!」
啓介「ありがとう……あかり、誉」
愛華「赤羽さんは私のことを認めてくれた。だから、あなたの頼みは断れなかった」
杏子「啓ちゃんが愛華っちに言ってくれたおかげで、私のギャル語が治ったんだよ?なのにさ……それを聞かずに死んじゃうの?」
愛華「帰ってきてください!彼女の……私たちの成長を見てくださいよ!」
啓介「ありがとう……委員長、杏子」
亜沙美「啓介……私たちは啓介だけじゃなく、隆にも戻ってきてほしいんだ。あれだけ酷いことされても、皆は隆のことを大事に思ってるんだよ!私、思うんだ。隆と私たちがもう一度仲良くなって……本当の友達になって、またキャンプに行きたいなって思ってるんだよ。ねぇ、啓介……こんな時、どういう言葉をかけたらいいかわからないんだけどさ……私、啓介のことが好きなの!!」
啓介「亜沙美」
隆「見せつけてくれるねぇ」
亜沙美「ずっと、初めて会った時から好きだったの。啓介が私のことを好きだったことも知ってたんだから!でも、本当はこんな形じゃなくて、面と向かって言いたかった。だから帰ってきて!私のこと大事だって思うなら帰ってきてよ!!隆も……もう一度、やり直そう?ね?皆、謝れば許してくれると思うんだ。だからさ……一緒に帰ってきて?」
啓介「あぁ……亜沙美……ありがとう。今帰るからな」
隆「決心がついたみたいだな」
啓介「うん。ボクも帰るよ。」
隆「そっか。じゃぁな」
啓介「え?隆は?」
隆「帰られるわけないだろ?あそこに俺の居場所はないさ」
啓介「そんなことないだろ……皆、キミのことも呼んでたじゃないか。」
隆「俺は皆の悪役になっちまった。名前を呼んでくれたのは正直嬉しかったけど、こんなことしたやつの帰る場所なんてないんだ。あそこに帰るのはヒーローのお前の役目さ。啓介」
啓介「隆……なんで……」
隆「おいおい、泣くなよそんなことで」
啓介「そんなことって……死んじゃうんだよ!なんでそんな笑顔なんだよ」
隆「俺には両親がいねぇからな。むしろ、あっちで再会できるのを楽しみにしてるんだ。不謹慎だけどな。……さぁ、時間だ。お前を送り出す。」
啓介「隆、まって……」
隆「じゃぁな!親友!!皆に宜しく伝えてくれ!」
啓介「隆……隆!!ありがとう!ボクは隆のこと!本当に親友だって……」
ー間ー
隆「なんだよ……そのセリフ……もっと早く聞きたかったぜ……啓介……」
ー間ー
隆「じゃあな……みんな」
ー間ー
亜沙美「帰ってきてよ!!啓介!!隆!!」
ー間ー
杏子「何?この音」
豪「お……おい!!見ろ」
あかり「啓介くんの心電図が!!」
誉「ってことは」
啓介「(目を覚ます)」
杏子「啓ちゃん!啓ちゃんが目を覚ました!!」
豪「本当に……啓介なのか」
啓介「当たり前だろ……豪」
亜沙美「啓介!!」
啓介「っと。いきなり病人に抱き着くってどういうことだよ」
亜沙美「ごめん。でも、うれしくて」
啓介「亜沙美。キミの声が一番届いた。ありがとう。」
亜沙美「……うん。」
啓介「それと……」
亜沙美「ん?」
啓介「ボクも好きだよ……亜沙美のことが」
亜沙美「もう、いきなり照れるじゃない。……ありがとう。それと、おかえり、啓介」
隆、亜沙美、GM以外全員「おかえり」
啓介「……ただいま」
ー間ー
亜沙美M「啓介のただいまと同時に、啓介と私のミサンガが切れた。私たちが啓介が帰ってきた嬉しさに浸っているその横で、隆の心電図のアラームが心停止を告げた。これが、私たちが伝えたかった物語。ボタンのかけ間違いでこじれてしまったヒーローたちのひと夏の物語。」
FIN 『HEROepisode〜fine〜』