8コマ目 苦手意識
間に合っ…てねぇ!?
俺の名前は高壁守。色々あった人だ。
「……」
「……」
突然だが人には必ず欠点があるように、苦手な物や弱点などが用意されている。
以前俺は苦手な物がないと言っていたが、苦手な人間なら確かに居た。それは…
「……」
「…よ、よう。高壁。」
城津照矢。
過去に色々あって騙したり脅したりしてしまった相手だ。言っておくが俺の本意ではない。
彼女を人質に取られていたとはいえ、してしまったことがしてしまったことなので苦手意識…というか罪悪感や引け目のような物がずっと残ったままなのだ。まあ元はと言えば津瑠が人質に取られたのはコイツが原因だから、そう言う意味ではお互い様なのかもしれないけど。
可能であれば離れたかったが、どちらも映画の上映を待つ身なのでそう言う訳にもいかない。なんでよりによって隣なんだ…
「おう、城津。元気そうだな。」
「そっちも、元気そうだな?」
話題の振り方も返答もぎこちない。
…無理に話しかけなくても良かったんだぞ? とは城津の勇気に免じて言わないでおく。話しかけんなって突き放してるみたいで悪い気がする。
「……」
「……」
沈黙。話題が無い。
いや、あったわ。目の前にでかでかとあったわ。
「お前もこういう映画観るんだな?」
「ああ、観るよ。まさか高壁も観るとは思わなかった。」
「まあお互いあんまり会わないし、話しもしないからな…この際だ。色々腹割って話すのも良いかもしれないな。意外と趣味が合うかもしれない。」
「そうだな。高壁って休みはなにしてるんだ?」
「俺は彼女やら友達と遊んだりとか、ネット小説読んだりとか…そんな感じか。一人の時は結構ダラダラしてるな。」
「彼女とは今でも上手くいってるみたいだな。良かった。」
「まあな。あの件以外でもかなり危ない目に遭ってきたし、人質に取られるくらい今更…なんて訳にはいかないが、それくらいで俺たちの関係は変わらないさ。」
「人質以上に危ないことってなんだ…?」
「ま、色々だよ色々。で、城津は? 休みなにしてんの?」
「俺も似たような感じかなー…なんかこういう時に面白い事言えりゃ良いんだけど、生憎普通過ぎてな…」
「普通かぁ…」
なんか太郎を思い出した。
そんな太郎も俺の事を昔は普通の奴だって言ってたっけ…今じゃどう見ても普通じゃなくなったが。
普通だった時代を思い出す。あの頃も楽しかった…今もまあ楽しいと言えば楽しいかな。人外扱いも慣れてしまえば別になんとも。
「…高壁は普通とは程遠そうだもんな。」
「分かってるんだよぅ…」