39コマ目 災難に慣れた一行
私の名前は高壁瑠間。高壁守のもう一つの人格だ。
「大変大変! 大変だよ!」
私は一度来た道を戻り、人の気配を頼りに一緒に登山に来た太郎、俊太、光、火太郎、移図離の5人と合流した。
「守! お前どこ行ってたんだよ、心配して待ってたんだぞ?」
「それについてはゴメン! だけど今それどころじゃないんだよ!」
「それどころって…ん? もしかして瑠間か?」
「…太郎のエッチ。」
「いやそんなつもりじゃなかったんだけどゴメンな!?」
どこを見て私が守ではなく瑠間だと気付いたのかわかってしまった。
って、恥ずかしがってる場合じゃないか…
「そうじゃなくて守が、守が…」
「…遭難でもした?」
「そうなんだけど、そうじゃなくて…」
「駄洒落か?」
「俊太のバカ!」
「なんで!?」
…説明しようと思ったけど上手く言葉にできないでいると、要らないボケを挟まれたのでつい怒鳴ってしまった。ちょっと頭を冷やしつつ言葉をまとめていく。
「守が、この山の神様みたいなのに捕まっちゃったんだよ!」
「「「「………」」」」
協力してもらえること自体は疑ってない。
けど、4人の雰囲気に紛れる『また?』とか『今度はなんだ?』みたいな感じはどうも緊張感を損ねてしまっている。守はこれまで色々あった人だからね…!
「…オーケー、色々とツッコミたいことはあるけどとりあえず今守が危ない状態なのね?」
「うん、助けるとしても私一人じゃどうしようもなさそうだから…具体的にどうするかまでは考えてなかったけど。」
気絶する直前、守は分身の術を使って私を逃がしていた。
そのまま一人で守や神様をどうにかしようとしても恐らくは無駄だし、最悪返り討ちに遭うと考えて全力で離脱したのだ。
そして頭数さえそろえれば何とかなると決まった訳じゃないけど…一人でどうこうするよりはマシなのでとりあえず皆を呼びに来たのだ。もしかしたら守を心配してたかもしれないし、最悪見つけてもらえないかもしれないし。
「とりあえず案内してくれないかな。」
「うん、こっちだよ。」
火太郎に促され、5人を案内する。障壁で目印を付けて来たので道を間違えることは無かった。
「神社?」
「この山にこんなところが…」
古い建物を見て思い思いの感想を口にする皆を尻目に、私は神社の異変に気付く。
「開いてる…」
さっき、私が逃げる前まで閉まっていた神社の扉が開いている。
そして守の姿は先程倒れた場所には無かった。となると必然的に…
「皆、入るよ。」
「え? 良いの?」
「良いも何も、こんなに寂れてちゃ誰も管理してないわよ。」
「…それに、他に守が居そうな場所が無い。」
「じゃあ決まりだな。ちょっとワクワクしてきた。」
「俊太、緊迫感持つ場面だぞここは。」
やや緊張感が薄いのは異常と言わざるを得ない場面に何度も遭遇してきたからだろうか。
それがまたどこか頼もしいと思ってしまうのは、安心してしまうのは共感できてしまうからか、それとも長年の友人だからだろうか。
肩の力を抜き、賽銭箱と思わしきものを避けて社の中へ入る。
そこは当然ながら照明など無いため暗く、うっすらと外の光で中の様子を伺える程度だった。
それでもその奥に何があるかは全員が分かった。
「………」
気を失い、呻くことすらない守がそこにはいた。




