4コマ目 弱点
俺の名前は高壁守。
色々あった人だ。
「…守、何か苦手な物とかない?」
「なんだ藪から棒に。」
コイツは渡移図離。俺の親友の1人だ。なお俺の親友は4人なので、今回は親友シリーズ最終章である。
「…守も人外だの化け物だのいろいろ言われてるけど、元々人間。人間味をアピールするには弱みを見せるのが一番。」
「人間味ゆーな。っていうかそれ答えたら絶対イタズラに使う奴じゃん…」
「…そんなことしない。」
「目が泳いでるぞ。」
移図離は基本的に無口で静かな奴だが、性根は俊太とほぼ変わらない。アイツ程のトラブルメイカーではないが、好奇心で突っ走ってしまうタイプと言ったところか。
類は友を呼ぶという奴だろう。もしかしたらそんな2人と仲良くしてる俺も太郎も光も大概なのかもしれない。
「まあいいや。けど、いきなり言われても思いつかないもんだな…俺何が苦手なんだろ?」
「…ナンパ?」
「苦手っていうか嫌いな奴だな。」
「…幽霊?」
「戦ったり憑りつかれたこともあったな。まあ平気だ。」
「…宇宙人。」
「会った事あるけど良い奴だったぞ。侵略してきても多分なんとかできる。」
「…今度会わせて。」
「会った事無かったっけ? 今度話付けとく。」
「…ありがとう。」
……意外と無いもんだな。苦手な物って。
素直に答える気は無いとはいえ、ここまで思いつかないと逆に考えなさすぎではないかと不安になってくる。
なんかあったら克服頑張ってみるか…じゃないと移図離や俊太から良いネタにされる。
「あれ、そういや今何時だっけ…ってげっ!?」
ケータイが何故かマナーモードになってて気付かなかった。めっちゃ父さんから電話来てる…!
しかも一時間以上前からだ。なんかあったのかな…?
「悪い、ちょっと電話する。」
「…彼女?」
「父さんだ、なんか電話来てた。」
「…分かった。」
移図離に許可を取り、至急父さんに電話する。
「もしもし? ゴメン、着信今気づいて…」
『守! お前玄関のドア壊しただろ!』
「……あ。」
そうだった、そう言えば今日焦って出かけようとしてつい力を入れ過ぎて…
…急いでたしまあいいかみたいな感じになってそのまま出て行ったんだった。
『すぐ帰ってこい! 明日までみっちり鍛えてやる! じゃあな!!』
通話が切れる。
ケータイを視界に入れて手が震えていることに気付いた。
「…守? どうしたの? 全身ガタガタだけど。」
移図離の言葉を聞いてやっと気付いた。全身が震えている。
「………すぐ帰る。ちょっと地獄見てくる…」
父さんの特訓は地獄だ。
過去に受けたそれは体力の大幅な増強が見込めるメニューだが、時々拷問と錯覚するとてつもなく厳しいものなのだ。
「…弱点は、父親…」
移図離の言葉はもう耳に届いていなかった。




