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30コマ目 目撃証言証拠付き

 俺の名前は高壁守。色々あった人だ。


「やるじゃねえかこの色男。」


「…プレイボーイ。」


「なんだいきなり。」


 今日は俊太と移図離の2人と会っていた。っていうか呼び出された。

 会うなりニヤニヤしながら2人ともそんなことを言うもんだから不安が大きくなる。俊太はトラブルメイカーだが、移図離もそれに近い思考回路を持っているのだ。まあ、学校の成績は比べるまでも無いが。


「見ちまったぞ? お前が女子と親しそうにして、ちゃん付けまでしてたのをな!」


「…言い逃れは出来ない。既に撮影済み。」


「肖像権使います。チェーンありますか?」


「…知り合いに見せるだけだから無効。」


「残念だったな!」


 凄いしたり顔だ。漫画だったらドヤァとかって効果音がでかでかと書かれそう。


「っていうか、そこに居たなら声かけても良かったのに。」


「うん? 彼女に見せられないやましい密会じゃなかったのか?」


「お前の頭の中の方がよっぽどやましいわ。

 アイツは小学校の頃の知り合いだよ。名前で呼んでたのもちゃん付けだったのもその名残。」


「…そうだとしても、彼女が居るのにちゃん付けは迂闊。」


「やっぱりそうか? けど、呼び方変えるのもなんかなぁ…」


 呼び慣れていない呼び名を使うのは抵抗が出てしまう。

 ただ、呼び方というのも人付き合いの上では結構大事だし…


「んー…次会った時は変えさせてもらうか。」


「…それでいい。」


「けど、この動画何の説明も無しに見せたら誤解するよな。ふふ、破局の時は近」

「はい削除。」


「ああ!?」


 それ言っちゃう辺りバカだなーと思いながら俊太の携帯を奪い取り、削除ボタンを押す。

 本人を前に撮った動画開いちゃってる辺りバカだなー。すぐ消されるだろ。


「移図離、今の動き見えたか?」


「…恐ろしく早いスリ…私じゃなければ見逃す。」


「スリって言うな。」


「手癖が悪いのが悪い。」


「なんだよただちょっと早く動いただけで。」


「ちょっと…?」


 そうは言ったが俺もちょっとのつもりではない。

 無駄に溢れてる神の力を魔法の要領で身体強化を行い、全力のちょっと手前くらいの早さで動かした直後に携帯を壊さないように停止。

 一瞬元に戻り携帯を掴んだ後また身体強化して手を引き、強化を解除して俊太に見せびらかすように操作。

 …全力だったら携帯どころか俊太もえらいことになってたかもしれない。

 身体強化も全開って訳じゃなかったし、使いどころと加減を考えないととんでもないことになってしまいそうだ。


「まあ、お前らに話されるくらいだったら俺が津瑠に直接話すよ。」


「浮気しましたって?」


「違う、昔の知り合いに会ったって言うだけだ。世間話の一つとしてな。」


 断じて浮気ではない。


「…そう、あの人にとっても浮気じゃないと良いけど。」


「どういう意味だ?」


「…教えない。」


 この後しばらく2人と一緒に居たのだが、移図離は結局何も教えてくれなかった。

 俺は楽しく遊べたのでよしとしていた…というか、別れ際には完全に忘れていた。

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