29コマ目 旧交
俺の名前は高壁守。色々あった人だ。
「お待たせ、待った?」
「いや、今来たところだ。」
使い古されたデートの定番みたいなやり取りをしたが、別に恋人同士とかではない。
彼女は高田逢。小学生の時出席番号の都合上よく一緒に居た女子だ。
「改めて久しぶりって言うべきか? 逢ちゃん。」
「一応昨日ぶりだけどね。」
「まあ、あんなことがあったらなぁ…ノーカンに近いだろ。」
昨日はバイト中に運悪くコンビニ強盗に遭遇した逢ちゃんを助け、その後警察に事件の状況を訊かれた。
その後このまま話し込むのはなんだからということで、改めて翌日に会い仕切り直そうという話になったのだ。
そうでなくても彼女はバイト中だったのであまり話が出来なかった。旧交を温めるというにはあまりにも短い。
「あの後は大丈夫だったか? もうバイトに行きたくないとか、心細いとか、そういうのは?」
「大丈夫だよ、だって守くんが助けてくれたし。むしろ、何かあっても助けてくれるんじゃないかって思っちゃったくらい。」
「俺を過信しすぎじゃないか…?」
確かに気配は読めるし、それでコンビニ強盗を不審に思ったのだが…離れた場所に居る逢の気配なんて分からない。そもそも気配って個人を特定できる物じゃないしな。感情は読めるけど。
「流石に分かってるよ。けど、そんな気がしちゃったのも本当かな。」
「自衛はしっかりしろよ? いつだって誰かが助けてくれるわけじゃない。昨日だって運が良かっただけだ。」
「分かってるし、そもそもそうあんなこと起きないよ。」
「世の中何が起きるか分からないぞ、誘拐されかけた知り合いを助けたことがあったし、別の知り合いは実際に誘拐されて助けに言った事があったし…俺だって知らないところに放り出されてたことがあった。」
「守くんの周囲物騒過ぎない!?」
おっと、喋りすぎた。あんまり言っても嘘だと思われかねないからな。
「まあ、日常にはそれくらい危険が潜んでるってことだ…」
「目が達観してる…」
これ以上に無い説得力を味わってもらえたことだろう。
尤も、ちょっと対策した程度ではどうにもならないことはあるが…逆に、どうにかできることだってある。帰り道を人通りの多い場所にするだけでも結構変わってきたりするものだ。
…人に起因するものなら。
世界レベルの干渉は流石にどうにもできないんだよ…(異世界に連れていかれた件等)
「本当に色々あったみたいだね…強盗をあっさり取り押さえられたのもそのおかげ?」
「不本意ながらそうだな。本当なら力は普通だったし、少なくとも強盗に立ち向かうことすら出来なかっただろうな。」
人外人外と呼ばれて嫌になったこともあるこの力だが、おかげで守れたものもあった。
それについてはありがたく思ってはいるし、言うほど自分の力を嫌っていないというのもある。
勝手に付いてしまったとはいえ自分の力。切り離せるものじゃないし、あまりマイナスに考えても仕方ないのだ。
「そっか。
だけどさ、あの時の守くん、かっこよかったよ!」
「かっこ…よかった?」
「守くん!? どうしちゃったの!? 何か嫌な事言っちゃった!?」
「え?」
頬に伝う涙には俺自身戸惑っていた。
けど、理由はすぐに分かった。
「ああ、そうか…」
「…守くん?」
「俺、こんな顔だからさ…美人だとか可愛いとかはよく言われるんだけど、かっこいいってあんまり言われたことないんだ…!」
「理由が悲しい!?」




