16コマ目 影の理由
前回の続きです。
世界の外側。
どこかから溢れている途方もないエネルギーが、ありとあらゆる世界に流れ込んでゆく。
流れ込んだエネルギーは世界を維持し、時には枝分かれさせる。
その様から、神々はそのエネルギーの流れを“世界樹”と呼んだ。
…まるで、世界という実を実らせた大きな樹だった。
その流れの途中に、まるで寄生するように生まれた世界。
そこに、奴は居た。
奴は世界樹のエネルギーをその世界に横流しし、エネルギーの流れを狂わせてしまっていた。
そのままにしていれば世界樹は崩壊、拡散し多くの世界が滅亡していただろう。
そこに、俺が行った。
一度は死にかけ、苦戦こそしたが奴を倒すことができたのだ。
しかし、それだけでは世界を救うことが出来なかった。
エネルギーの流れは既に狂っていて、世界樹の崩壊は時間の問題だったのだ。
―――これは幸運か、それとも神の計算ずくなのか。
俺はその時、絶対不壊の何物をも通さぬ最強の能力を手にしたばかりだった。
“神壁”。俺が持つ能力の最終形態。
それにより世界樹全体を覆いエネルギーの拡散、霧散を無くした。このまましばらくすればエネルギーの流れも正常に戻るようだったので、これで今度こそ世界は救われた。
…だが、問題があった。
神壁は世界樹と、その先にある世界全体を覆ってしまっている。
そのため世界間の移動は不可能。自分の世界から出ることも他の世界に入ることも出来なくなってしまったのだ。
エネルギーの流れが元に戻れば神壁を消去し、世界間の移動も行えるようになるのだが…それが数年後なのか、数百年後なのか。俺を導いた神やそれに類する存在にも分からないのだ。
実質、異世界で出会った友達との今生の別れのようなものだった。
もしかしたら来年、いや明日行き来できるようになる可能性はある。
だが同時に、向こうの友達が生きている間は行けない可能性もあった。
期待は出来ない。してはいけない。
もし駄目だったら…もう二度と会えなかったら、余計に辛くなるから。
だから俺は―――異世界の皆の事を、忘れようとしていたのだ。
「……」
「守、アンタの分も注文してきといたわ。ビッグマックス!で良いわよね?」
注文に行っていた光とマナが戻ってきた。
「ああ、ありがとう…これで足りるか? おつりは手数料ってことで。」
「分かった、じゃあ遠慮なく貰っとくわ。」
ビッグマックス!はいつも食べているので大まかな値段は分かる。
野口を一枚光に渡し、程なくして料理が出来あがる。
それらを持って来て食べ終えると、何故か沈黙が流れた。
「………」
「なんか守、暗くないか?」
「いや…そんな気はないんだが。」
どうやら原因は俺だったらしい。
「いーえ、マナちゃん大正解よ。
大体考えてることは想像つくけど…とりあえず、元気出しなさい。」
「そうは言ってもな…」
言われてすぐ出せるものじゃない。そんなの二酸化炭素くらいだ。
「えー…なんかない? マナちゃん。」
「えぇー…なんかってなんだよ。一発芸とかか? ねーよんなもん。」
「じゃあ、さっき聞いたマナちゃんのスリーサイズを言っちゃいまーす!」
「「!?」」
「…元気出た?」
「元気がどうこうじゃなくてびっくりしたわ。」
「ホントだよ。しかもそんなこと言ってねーし。」
「もしかしてお前俺よりマナの体型気にしてないか? 男より気になんな。」
「同性だからって言うのもあるじゃない。守だってムキムキの人の体は気になるでしょ?」
「いや全然。」
「近頃の若いもんは! なんで筋肉に憧れないの!?」
「…この顔に筋肉ダルマの体付けてみろ。コラ感半端ないぞ。」
「それは確かに。」
「嫌だな…筋骨隆々のマッチョメンの上に美少女の頭がくっついてる光景とかリアルで見たら正気が削れるわ。」
「あと、今ですらコレなのに筋肉付けたらマジでヤバい事になりそうだし…」
「惑星破壊も夢じゃない?」
「もし地球壊したら玉七つ集めて戻してくれ。」
「どんな頼みだよ。とにかく俺は筋肉つける気は無いからな。
…って、マナの話から大分脱線したな。見る影すらないぞ。
光、マナのプライバシーにはあんまり首ツッコんでやるな。同性だからってセクハラも程々にしろよ。」
「あれ? 守どっか行くの?」
「買い物だよ。元々それが目的だったんだし。」
「ちなみに何買うの?」
「服買い足そうかなって思って…おいなんだ。なんで立ち上がるんだ。まさか付いて来るんじゃないだろうな?」
「そのまさかよ。心配しないで、スカートとかは間違っても持って来ないから。」
「あの、なんで俺腕掴まれてるんですかね? もしかして俺も一緒に行く感じですかね?」
「そうよ! ついでにマナの服も選んであげる! 念のため下着とかも!」
「何が念のためだ! 絶対不必要なサイズ確認の為だろ!
待て待て待て光! 目が野獣みたいなんだけど!? 助けて守!」
「光、セクハラは程々にしろって言ったばっかあああああああ!! 目が、目があぁ!!」
言ってる途中で俺の目にピンポイントで強い光を当てられた。
魔法によるものなのか彼女の光を操る能力によるものなのかは分からないが効果はてきめん。見事無力化された。
「さ、行くわよマナ! 守!」
「それ失明するかもしれないから止めろって…シャレにならないって…」
「なってもアンタは直せるでしょ!」
「は、放せ! 俺には彼女が居るんだぞー! それ以外の奴に下着も裸も見せてたまるかー!」
「良いじゃない良いじゃない、それ言ったら銭湯にも行けなくなるよ?」
「御尤もだけどヤメロー! あああああああ!」
塔イベと執筆の両立がキツいです。




