10コマ目 少年? 少女?
俺の名前は高壁守。色々あった人だ。
「ねえ守、参考までに聞かせてほしいんだけど…」
コイツは日野火太郎。俺の親友の一人だ。
俺たちは今、人通りの多い道を重点的に見回っている。理由は散歩ではなく…
「あの子なんてどうかな?」
…ナンパである。
無論彼女持ちの俺ではなく、火太郎の。
断っておくと、火太郎は断じて軽い男ではない。お遊びではなく本気でお付き合いできる異性を探しているのだ。
火太郎曰く若いうちにそう言う相手を探した方が良いとか、年を取ってからでは遅いとか。親戚のおじさんおばさんみたいなことを言っていた。彼女が居る守には関係無いだろうけどとかって僻みっぽいことも言われた。俺が何をしたって言うんだ。
「クラスとか学校とかで探せば良いだろうに…」
「俊太が言ってただろ? 場所を限定しすぎたら運命の相手が見つかる可能性が無くなるって。」
「なんでアイツこういう時だけ頭回るんだ…」
俊太の説得により火太郎はそんな思考に陥ってしまった。
そして光や太郎から止めとけ止めとけと言われながらも賛成も反対もしないで傍観していた俺を巻き込み、俺たちはここにいる。俊太と移図離は碌な事しなさそうだったので引き離してきました。
「ん? あれは…」
車道の向こうに居る一人の少女…少年? に目が留まる。
確かアイツは…
「…守、彼女いるんだよね? 他の子に目移りしちゃっていいの? 確かに可愛いけど。話しかけてきた方が良いかな?」
「そんなんじゃない。
ただ、どっかで見たような気が…あ。」
「どうしたの?」
「思い出した、確かアイツにナンパされたことがあったんだった。」
確かに、見た感じ可愛い感じの女子にしか見えない。
一見男である俺があの女子にナンパされただけのようだが、実はちょっとややこしい事態になっていた。
「え? どこからどう見ても可愛い女の子だけど…ああ。」
「何人の顔見て納得してるんだよ。
いや、あの見た目で彼女になってくださいって言われてさ…」
「え? 彼女に? で、守はどうしたの? やっぱりぶっ飛ばした?」
「ぶっ飛ばしてねーよ。彼女が居るからって断った。」
「あっ…」
「けど、アイツが男なんだか女なんだか、未だに分からないままなんだよ。彼女になってくれ、なんて言うんだから男だと思うんだけどもしかしたらそっちの人かもしれないしさ。
んで、俺も混乱したんだけど何故か向こうも混乱してさ…」
「………あー、そりゃ混乱するだろうね…」
「なんでだ?」
「あの人、守が男だって知らなかったんでしょ? 守の方がそっちの人だって思われてるかも。」
「あぁ、そういう…長きにわたる謎がようやっと解けた。」
「お互いに鏡でも見てれば解決したかもね。」
「鏡なんて持ち歩くか…ん? アイツ誰かと一緒っぽいな…女子?」
「女友達かな? そっちの人も可愛いね。」
「え、え? 待て、まるで満たされているような穏やかで、それでいて高揚しているような感情…まさか?」
「いやいや、守の同類でしょ…って、守の同類なんてそうそういないか。守だって後天的だし。」
「後天的言うな。あ、おい火太郎ちょっとどっか行こうぜ。多分アイツらもうすぐチューする。」
「確かに見てて気恥しいものはあるけど、そこまででも…それに、人目くらい気にするんじゃない?」
「奴らの感情が分からないならそう言うだろうな! ええい行くぞ!」
「あああ! 痛い痛い! 腕がちぎれる止まって!」
火太郎君忘れられるの巻。昔から太郎と火太郎はよく忘れる謎。




