深夜の訪問者
土曜日間に合いませんでした。
次回更新は明後日水曜日です。
また、今週土曜日にも更新し、火曜日土曜日の更新に戻します。
合同誕生日会は無事に終わり、花火の簡易打ち上げ場から戻った私は公爵家から自分の屋敷に戻ってきた。
第一王女リアスティーナから感じた特別な感情、親近感と言うのだろうか?
あれは一体何だったのかと思いながらもあっさり帰ったリアスティーナを思い出していた。
まぁ、今は気持ちを切り替えよう。
一度家に帰りお泊まりセットを取ってきたレインが久々に我が家に泊まる。
いつだったか、アルデン領に居た頃、レインが私に似ているという熊の縫いぐるみを抱き抱えベッドに横たわりながら呟く。
「今日は楽しかったですね!ふわぁー…何だか、眠くなって来ちゃいました…」
もう夜の22時を回るからか、年齢的に若いレインは夕方のパーティーもあったためかお眠の様だ。
私?夜型だから平気だけど少し疲れたかな…
レインと一緒に寝ちゃおう。
私はベッドに上がりレインの横に並ぶ。
「そうだね、私も疲れたし寝よっか。おやすみ、レイン!」
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
深夜、廊下の木板が軋む音で目が覚める。
普段ならジョセフか他の騎士が扉前で扉番をしているのだが、今日は日頃の感謝や慰労を込めて外して貰った。
居るのは庭に三人と門番二人の計五人だけである。
普段ならこの倍以上は警備に当てているのだが敢えて今日は薄くしてみた。
私の部屋の扉がギィと軋みながらもゆっくりと開くのが分かる。
私は起き上がりレインを守るようにベッドの前に立つと侵入者、いや来客を待ち構えた。
「こんな深夜に忍び寄るとはどちら様ですか?」
「…」
あくまでも無言で通す様だ。
指を鳴らすと照明が明るくなり来客の姿を照らす。
黒い外套に身を包んだ美しい顔立ちをした金髪の十六~七才の少女であることが分かった。
というか、初めから正体は分かっていた。
リアスティーナ王女殿下である。
「これはこれはリアスティーナ王女殿下、この様な場所に足をお運びになるとは思って居ませんで失礼な態度をお取りして申し訳御座いません。」
「いえ、それは此方の台詞です。この様な不躾な行いをし、深夜に忍び寄るなど暗殺者と思われるも当然。此方に非が有ります。ですがどうか私の願いを聞き届けてはくれませんでしょうか?」
おかしいな…?
原作のリアスティーナはもっと荒々しく苛烈な性格だったが、目の前の彼女はまるで借りてきた猫の様に大人しく、神に祈るかの如く片膝を着き、私を拝んでいる。
私が知っているのは王者の風格漂う豪快な人だったが、今は牙の折れた狼と表現するべきだろうか。
原作との差異がリアスティーナにまで及んでいる?
ーー【転生者】…私の中でそんな言葉が浮上してくる。
いや、まだ確定ではない。
きっと勘違いだろう。
「王女殿下、その様な真似はお止しください。私は王国の一貴族の身、殿下に祈られる様な事など恐れ多く御座います。命令して下されば宜しいのです、殿下は何をお望みなのでしょう?」
「予知夢を見ました。神の天啓です。近い将来、魔の王の復活と共に魔の軍勢が王国を攻めてくるというものです。神は言いました。神の使徒であるリリアナ・アルデン・センティス伯爵、貴方を頼りなさい、と。お願いです、王国を助けて下さい!」
「ちょっ…ちょっと待ってください!今、頭の中で整理していますから…!」
突然の急展開すぎて頭が付いていかない。
私は混乱する中、一つずつ噛み砕くことにした。
あれ?
そう言えば王家の者が予知夢を見るって設定があった気が…
うぅ、思い出せないな…
でもそれはナーナの役割だった気がするんだよな…
というか神の使徒ってなんの事?
なんか頭の中がしっちゃかめっちゃかだ…
一つずつ整理しよう。
魔の軍勢…これは多分、魔物の復活の事だろう。
魔王の復活が約5ヶ月に迫ってる。
私はこの二年で対策を施してある。
これは大丈夫だろう。
二つ目。
私を名指しで指定してきた神とやらが私を頼れとリアスティーナに告げた。
この国で崇められているのは夫婦神で二柱の神を称えている。
地方によっては男神だけだったり、女神のみだったりの違いはあるが、教えられる内容は変わらない。
まぁ、それは良いとして。
私がこの世界に転生するきっかけとなったあの冷たく低い声が神の声なのだとしたら、やはり私は使徒となるのだろうか?
もし仮にそうなのだとしたら私は二年前から意図的に防衛の準備をしていた?
いや、違う。
私の意思だ。
操られてなんかいない。
胸を張って主張しよう、私は私の意思で動いた。
そこに偽りなどない。
やることは変わらないのだ、目の前に危機が迫っている。
ならば、立ち向かうべきなのである。
「えと…分かりました。出来る事は少ないかも知れませんが、私の出来る精一杯で臣として王国を助ける為に微力を尽くします。」
「あぁ、使徒様!有り難う御座います!やはり貴方様は聖女になるべくしてなったに違い有りません!私も協力出来る事が有るならば何でも仰って下さい!」
うわぁ…なんかめっちゃ敬われてるし…
信仰…じゃないな、盲信と言うべきか…
なんか、私の知ってるリアスティーナと雰囲気が異なるせいか、違和感しかない…。
でも、協力してくれるのなら少しお願いしようかな?
多分色々改変はされてるけど、少しでも原作に寄せたい。
だから私はこう提案することにした。
「では学園を共学化してください。今は嵐の前の静けさですが、数年後どうなるかは分かりません。若く有能な者は一人でも多く育てるべきです、それは貴族の子も平民の子も同じです。リアスティーナ王女殿下には学園の校長となって貰い後進の育成をお願いしたく存じます。お受けして戴けますか?」
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