お嬢様は義理の弟が出来ました
パーティが終わり数週間後、魔導書を読んでいた私の前に父がまだ幼い四歳くらいの男の子を連れてきた。
「今日からうちで預かることになったマシューだ。仲良くやってくれ。」
「マシュー…です…よろしくお願いします…姉さん…」
黒髪で目元まで髪を伸ばした女の子みたいな中性的な男の子。
気弱そうで下を向きがちでボソボソ話すやつ。
それが最初に抱いた印象だった。
嘘でしょ?!
なんで男の子が…しかも姉さん?
私は混乱し、父に問いかけた。
「どういうことですか、父上?理解出来ません。ちゃんと理由を話して下さい」
子供っぽい口調は止めたが少し不自然だろうか?
だがそんな事気にしていられない。
「むぅ…仕方ないな。マシューの実家ガーズ家の当主と私は旧知の仲でな。爵位の差はあるが親友なんだー」
父が話すにはマシューの実家、ガーズ家はアルデン家の真南に位置する領地を治めており、先代、先々代からの付き合いだったという。
ガーズ家当主、ダビデが新たな事業を始めたが失敗。
大きな借金を作った。
それを父が助け借金の形にマシューを差し出したという。
まぁ、貴族界隈ではよくある話らしい。
私も書物で読んだことがある。
だが…頭では理解しているのに納得が行かない。
「事情は分かりました。しかしマシュー。私は貴方を弟とは認めないわ。」
突き放す言葉、父上は悲しそうな目をして私を見るが知ったことではない。
「…はい」
生気のない返事。
子供ながら自分の運命を悟ったような…そんな態度だ。
この態度が私をイラつかせた。
「精々大人しくしていることね。それと私は男が嫌いだから用がない時は近づかないでちょうだい!」
「はい…」
また…!私は苛つきを抑えもせず、部屋を飛び出し自室のベッドに倒れふて寝した。