次期(仮)聖女と少女子爵
おやすみ前に30分で書き上げました
はい、如月さんから質問をいただきました。
Q.一週間休みを貰うと言いましたが、どうしても妄想が止まりません。どうすれば良いでしょうか?
A.寝ろ
これが自問自答ってやつですかね…
ということで閑話でござい~
次期聖女といえば…?
わたくし様はマリアンヌ・ゲース、六才!
未来の聖教会の聖女ですわ!父は枢機卿のスナール・ゲース、次期教皇に最も近い男と呼ばれておりますの!
だけど、呼ばれているだけでまだ地盤は磐石とは言えない…
ですが、兼ねてより協力を取り付けていたセンティス領の領主、リリアナ・アルデン・センティスとかいう小娘の元へ向かいその弱味を握るというのがわたくし様の任務!
一度茶会に招かれましたが品のない小娘ばかりで楽しくありませんでした…
やはり年頃の殿方が居なくては話になりません!
そしてもう一つの任務がジェネシス公爵とセンティス卿の繋がりを見付けること!
失敗すればお尻叩き百回では済まされない…
ブルブル…想像しただけで寒気がしてきましたわ…!
11人居る兄弟姉妹は役立たずばかりで治癒魔法も出来ず、どいつもこいつも役立たず!
わたくし様が父上を支えなくては…!
センティス領に移動するわたくし様に父上はしつける様に話します。
「良いかいマリー?センティス卿は幼く見えてもかなり知識がある。それに剣は一流だ。更に陛下のクソ野郎を垂らし込む何がしかの魅力もある。決して油断してはいけないよ?」
「もう何度も聞いてますわ、父上。わたくしは大人しくしているように見せ掛け裏でセンティス卿の情報を集め下男にそれを渡し報告する。こんな簡単な任務余裕ですわ!」
父上ってばわたくし様のことを信頼してないのかしら?
あれだけ小うるさく言われれば猿でも分かりますわ!
「マリー、自信家なのは良いことではあるけど、その分足を掬われることだってある。まぁ、この私の有能な血を色濃く引いているマリーなら失敗など有り得ぬがね!こんなド田舎に来てやったんだ、精々高級ワインの一つくらいは期待したいね」
「確かあの小娘は商会を経営していたはず…わたくしも高級菓子と茶葉で歓待されるかもしれませんわ」
「「ワーハッハッハ」」
わたくし様と父上の高笑いは天にも届かんばかりに響くのだった。
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センティス領に辿り着き、わたくし様に宛がわれた部屋で寛いでいると父上がセンティス卿との会談を終え戻ってきました。
どうやらセンティス卿の誕生会に有力貴族の子女を集め茶会をする様です。
またあの人達ですか…
いけすかないのはあのエンディミオン公爵家のルルイアとかいう気味の悪い女でしょうか…
邪神などという者を崇拝し、あまつさえこの高貴なわたくし様を勧誘するという愚行を冒す痴れ者です。
一体どの様な教育を受けているのやら…
父上にその事を話すとエンディミオン公爵家は代々あのような邪教を信仰していると言います。
あぁ…主よ。わたくし様を邪教徒よりお守り下さいませ…!
一人腕を組みお祈りを捧げると父上に振り返った。
父上は今晩、別の宿を取っているらしくこのままそちらへ向かわれるとのこと。
寂しくなんか…ありませんわ!
「マリー、心細いとは思うが君の無事を祈っているよ。また五月頃にセンティス領に寄るからそれまで元気にしていておくれ!」
「父上、心配は無用ですわ!わたくし様は一度受けた任務を必ず為し遂げてみせます!遠くから成功を祈って下さいませ!」
わたくし様と父上が熱く抱擁を交わしていると、センティス家のメイドが音を立てずその場から立ち去りました。
あのメイドはどうかしたのかしら?
まぁ良いですわ。
父上との別れを名残惜しみながらも見送り、わたくし様は出された紅茶と焼き菓子を堪能することにしました。
翌日、何故かわたくし様の周囲にメイドと女性騎士が増えてましたが、特に気にする事もないでしょう。
もしかしたら高貴なるわたくし様の身を慮っているのかしら。
意外と悪い人じゃないのかも知れないわ…少し評価を改めましょうか。
まずはセンティス卿との接触ですわね。
こうゆう時は食事でもお茶会でも良いから二人きりの時間を作れ!
と父上から手渡された手帳に書かれていました。
けど今は冬。
お茶会はダメですわね。
ならば食事会かしら。
早速メイドに声を掛けてみましょう。
「センティス卿とお食事会をしたいのですが今晩のご予定をお伺いして戴いても宜しいかしら?」
「畏まりました、少々お待ちください」
メイドは礎々と立ち去り五分後に確認が取れたのか、戻ってきました。
「今宵は予定があるので明日なら空いていると言付かっております。」
「では明日の夜にして下さいまし」
「畏まりました、報告してまいります」
ふぅ…どうやら、会えそうで良かったですわ。
わたくし様は一息吐くとセンティス家のメイドが淹れてくれた紅茶を飲み唇を湿らせました。
それにしても寒いわ…
やはりこんなド田舎は性に合わない…。
王都のお屋敷で暖炉に当たりたいですわ。
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翌日の夕方、わたくし様はセンティス家のメイドに用意された真っ赤なドレスに身を包みダンスホールへと案内されました。
何故ダンスホールなのかしら?わたくし様、一応は教育としてダンスは習っていますが、あまり自信はありませんわ。
長い廊下を歩き、ダンスホールの扉を開くとそこにはセンティス家の家臣一同が居並びわたくし様を出迎えました。
その間から男装をしたセンティス卿がわたくし様の手を取り口付けします。
王都の貴族のパーティに幾度も参加し目の肥えているわたくし様からしてもセンティス卿の所作は流麗で気品がありました。
「マリアンヌ嬢、お待たせして申し訳ない。歓待の準備に手間取ってしまいました。ですが今宵は貴女をもてなす席です、どうかお楽しみ下さい。」
過去類を見ないほどの動きにわたくし様はほぅ…と息を吐いてしまいました。
「あ…えと、この様な場を用意して貰い感動の至りですわ!センティス卿、エスコートお願い致しますわね?」
「ええ、もちろんです。私のサイズで作らせたドレスですが、お似合いですね。それは貴女にプレゼントしましょう。それでは此方へ」
わたくし様ったら変なのでしょうか…?
今まで出会ったどの殿方よりも女性であるセンティス卿が素敵に見えてしまいますの…
「勝手ながら貴女の好きなものを調べ用意しました。どうぞお楽しみ下さい。」
センティス卿は白い歯を見せわたくし様に微笑みかけます!何でしょう…この胸の高鳴りは…?
センティス卿に手渡されたグラスに葡萄ジュースが注がれる。
それを一口飲むとセンティス卿はわたくし様の手を取り形の良い唇を開きました。
「マリアンヌ嬢、お誕生日おめでとうございます。細やかですが、これはセンティス家家臣と私からの贈り物です。気に入ってくださると嬉しいのですが…」
誕生日…はっ!今日は3月27日でわたくし様の生まれた一年で最も高貴な日ではありませんか!
だからセンティス卿はわざわざ男装をしてわたくし様を歓待してくれましたのね!
手渡されたのは小さな箱。その中には宝石の付いたネックレスが入っていました!
「ありがとう…ございます…!わたくし、今日という日を決して忘れませんわ!」
「それは良かった。さぁ、食事を食べましょうか」
目の前にはわたくし様の好きな食べ物が沢山並んでいる。
流石金持ちのセンティス家ですわね。どれもこれも最高の逸品じゃないですの!
わたくし様が舌鼓を打っていると突然弦楽器の美しい音がホール内を包み込みます。
「セバス~!ジェシカ~!カッコいいよ~!!」
気付けばその場に居た使用人らしき老紳士と見目麗しい婦女が踊り始めたではありませんか。
センティス卿がわたくし様の隣で声援を送りながらニコニコとわたくし様に微笑みます。
あぁ、何ということでしょう。
これが父上や母上が言っていた【恋】というものなんですね?
センティス卿を見ているだけでわたくし様の胸は一杯になります。
「マリアンヌ嬢、私と一曲踊って戴いても?」
「えぇ…喜んで。センティス卿の意のままに」
「私の事はリリアナ、もしくはリリーとお呼び下さい」
「リリー…様…!」
そう溜め息混じりに呟くとリリー様はわたくし様の手を引き会場の真ん中へと移動します。
あぁ、人々の視線が集まってる!
注目されてる!
それだけで幸せなのに、目の前にはリリー様の凛々しく優しい笑顔が…
あっ…ダメ…!気を失ってしまいそう。
リリー様の激しく情熱的なエスコートでわたくし様は…
その日の記憶はここで途切れたのでした。
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リリアナ視点
あれから二日間悩み悩んだ結果私はマリアンヌを攻略することに決めた。
前世の記憶をフル動員してマリアンヌの誕生日が近い事を思い出し、ダンスホールまで用意してやったんだ。
少しは好感度が上がってくれればいいのだけど。
だけど、まだまだお子さまだね。
メイドの前で任務を遂行~!とか叫んだり、明らかに見て分かる怪しい手帳を放って屋敷内を散策すれば猿でも分かる。
その任務とやらの目的も把握出来たし、此方としては安心だ。私がボロを出さなきゃ良いのだから。
最初は油断してたけど、マリアンヌはまだそこまで驚異ではなかったということだ。
工作員であるのは分かったがあからさまに警戒するのも良くないだろう。程々の対応がこの場ではベストだ。
マリアンヌの好きな食べ物、飲み物、プレゼントや赤のドレスも思い出して用意したのだ。
打算的に好感度を稼ぎにいった。
変に嗅ぎ回られても厄介だもん。
しばらくは大人しくしてくれるはずだと願いたいな。
三日に一回、時間を作って食事かお茶でもすれば大丈夫だろうか。
私は寝間着に着替えキングサイズのベッドに身を放り投げた。
その日の深夜…ゴソゴソとなる物音で目が覚める。
薄暗い部屋を照らす月灯りを頼りに侵入者の姿を見定めようとする。
背は…低いな。私以下だから130センチもない。
ということはマリアンヌのところの幼いメイドかマリアンヌ…それか考えられないけどリビーとか?
私はベッド脇に立て掛けてあるジョセフから貰った業物【喜望峰】を鞘ごと構え、灯り程度の魔法を使う。
「眩し…キャッ!」
そこに居たのは何というかマリアンヌその人だった。
「こんな時間に何か?」
「その…良ければ枕を並べたいと思いまして…」
その両手にはしっかり枕が抱き抱えられていた。
「ふぅ…まぁ、良いでしょう。しかしこんな深夜に忍び込む様な真似は控えて戴きたい。宜しいですか?」
「ごめんなさい…」
なんだ、意外と素直だな。
とりあえずベッドは広いし、その辺で寝ろとばかりに私は窓を向いて眠りに落ちた。
翌朝、目覚めるとマリアンヌは私にしがみつく様に眠っていた。
うーん、ホームシックで人肌恋しかったのかな?
引き剥がすのは簡単だが、可哀想だしこのままにしておいてあげよう。
ジェシカが起こしに来るまでもう一眠りするか…
マリアンヌ、攻略出来るかな~…?
私は不安を抱えながらも重い瞼を閉じ、誘う眠気に身を任せた。
それから茶会までの約20日間、行く所々にてマリアンヌに付けられるとは思ってもいない私だった。
その視線は妙に熱を帯びており最初は風邪でも引いたのかと心配したのだが、それは杞憂に終わった。
これ、後付けられてるし悪化してるのでは…?
私は頭を抱えるのだった。
マリアンヌ視点で書かせていただきました。
即落ち二コマでしたね~
しかし、リリアナは気付いていない模様。
ユグドラの設定は次回繰り越しになります、申し訳ない…
次回更新は8月13日火曜12時となります。




