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リリアナお嬢様の命令よ!~転生伯爵令嬢は自分に素直に生きると誓いました~  作者: 如月 燐夜
一部四章 少女子爵領地経営編
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少女子爵はクールに去れり

本日二度目の更新です。


私は屋敷を出て広場に向かった。


先程伝令に来た兵士を捕まえ避難状況を確認する。


領民の八割ほど。


後は移動の困難な老人と兵士達の扶養者の多い家、つまり奥さんやその子供達だろう。


家族が多いと大変だからな、補助金を出すことも今後の政策で考えなければ。



「引き続き取り残されてないかの確認に全ての家屋を確認して!」


「承知しました!」


若い兵士は敬礼をし、そのまま走り去った。


十分ほどで全ての領民が集まったのを確認した。


さて、私は自分の仕事に取り掛かりますか。


イメージは強固な盾、それを何重にも張り巡らせる感じ。


お、これ良いかも!


階段のように段差を付ければ空中から一方的に魔法攻撃出来るのでは?


階段魔法…は格好悪いから結界魔法とでも名付けようかな。


いけないいけない、それは後々考えよう。


まずは領民の安全優先だ。



広場を包み込む様に結界魔法を展開し、ドーム状に張る。


その下に土魔法で同じようにドームを形成する。


これは不可視の結界魔法よりも直接視認出来る土壁の方が領民達も安心出来るという配慮だ。


光を取り込む穴も幾つか天井部分に作り視界も確保した。


更に更に私はここで声を張り上げる。


一種のパフォーマンスだ。


「領民よ、安心せよ!私が居る限り、皆には指一本も触れさせない!更にセンティス領の精強なる兵士が守ってくれるだろう!暫しの辛抱だ、喧嘩せず仲良くやってくれ!」



「「「うおおおぉぉーー!!」」」



これが効果的だったのか、兵士達だけではなく、領民達も共に声を震わせた。


ここは大丈夫だな、私は一度自分の屋敷に戻ると同様の魔法を施し外壁へと向かった。



「お疲れ様、此方の様子はどう?」


「はっ!兵の士気も高く、いつでも戦闘できます!」


「まぁ、戦闘にならないようにするのが私の仕事なんだけどね。分かった、引き続き警戒は怠らないで。」


私は溜め息を漏らす。


戦争なんかしたくないけど、もしもの場合がある。


相手側の目的が分からない以上警戒は決して緩めてはならない。


「畏まりました!」



『間もなく騎馬民族が此方に着きます!センティス卿、ご準備を』


大声を張り上げるのは先程の若い兵士だ。


中々見応えがあるので無事だったら名前くらい覚えてあげよう。


『私は此処だ!そちらへ直ぐに向かおう!』


風魔法で拡張した声で答えると階段…じゃなくて結界魔法を使い外壁まで駆け上がる。


「お嬢ッ?!」


「すげぇ!領主様が飛んでるぞ!」


「やっぱり神の御遣いだったんだ!リリアナ様万歳!センティス領万歳!」


下から見ている兵士達からすれば私が空中を歩いている様に見えるのだろうか?


まぁ、それはいいか。


私は外壁の北東部分に立つと様子を見る。


武装した騎馬民族が約二百騎。装備は弓と長槍か。


さて、威嚇は必要だよね。



私は風魔法を使い騎馬民族達の五メートルほど前に線を引く。



ここが最終警告線だ。


さて、準備は整った。


始めますか。



『我が名はリリアナ・アルデン・センティス!この地を陛下より預かりし者だ!騎馬民族の民よ、何故武装し我が領に攻め入る?理由を述べよ!しかし、その線を越えてはならぬ!越えた瞬間、敵と見なし千の兵で滅ぼしてくれよう!』


これくらいでいいかな?


間違ってないよね?


きちんと理由を尋ねたし、その線を越えたらダメだよーって伝えたし。


「我が名はボルトン!ボルボル族を束ねし者なり!我等が先祖の眠りし地に先に侵攻してきたのはそちらではないか!よって我等は戦う!皆の者かかれーいッ!!」



「「「うぉぉぉー!」」」


風魔法でボルトンの声を風に乗せ此方に届けさせる。


その結果…


ダメでした、全く聞く耳を持とうとしない。


まずは無力化、それでも抗うなら殲滅するのみ。


彼らは線を越えた。


越えてはならない一線を…!


私は感情を圧し殺し機械の様に淡々と詠唱を始める。


「《我が願いを届けよ、我が命令に従え。大地よ水に溶け流動し人を象り我が敵を無力化せよ。【泥沼男スワンプマン】》」


私の詠唱が終わると突然泥沼が姿を現す。


それは次々に人の形を象り独りでに動き始める。


一人の騎馬民族が槍で応戦するも、全くの無意味と言って良いほどに効いていないのだ。


やがて槍も飲み込まれ本陣へと逃げ帰る騎馬民族。


しかし泥沼男はそれを逃がしはしない。


うねうねと体を揺らしながら馬に取り付き、底無し沼の様に人ごと吸い込んでしまった。


実際には死んでいないのだが誰もが及び腰になる。


それがあちこちで起こっている。


騎馬民族の族長ボルトンや他の者達は顔を青ざめさせている。




『どうした、ボルボル族とやらよ。貴様等の力はその程度か?今なら武装を解除し平伏すれば、降伏を許してやる。我に服従せよ。さすれば命だけは保証してやる。さもなくば一族朗党殲滅する。さぁ、どうする?』


「くっ…わ、分かった!降伏する!だから一族の者達の命だけは見逃してくれ…!」


「聞いたか、兵士達よ!我等の勝利だ!勝鬨を上げよ!武器を捨てた者から捕縛せよ!」



はい、言質取りました。

悪役を演じるのって意外と楽しいな。


ジョセフが叫ぶと兵達が声を上げ勝利を分かち合った。

流石に私一人で戦争を終わらせる事などは出来ない。


ジョセフはその辺にキチンと目端の利く大人なのでその辺は任せている。


息を切らせていたジョセフとホセを引き連れ、結界魔法の下り階段を使いボルボル族たちの前に姿を現す。


私、結界魔法で移動しちゃったから護衛の二人置いて来ちゃったからな、うん…反省。


結果だけ見れば誰も血を流さずに戦闘が終わったし。



力無く座り込むボルトンの前に立ち声を掛ける。


「ボルトン、我に従うか?」



「クッ…あぁ、従う……そうか…俺は何もせず負けたのか」


悔しげなボルトンの表情。


まぁ、私みたいな小娘に負けるんだもんね。


そりゃ悔しいか。



「ならば平伏せ!頭が高い…ーーちょっ…お嬢ォ!」


あちゃー、完全に場の空気に乗せられたジョセフが余計な事を言う。



私はどこぞの黄門様かっ!


負ければ平伏、この世界の常識だ。


でも私はそれは間違っていると思う。


手を差し伸べれば分かってくれる人たちだっている。


多少の争いがあったとしてもいつか分かり合えるはずだと、私はそう考えている。


私はジョセフの言葉を手で制しボルトンに目を向ける。


「でも誰も血を流さなかった。そうでしょ?」


「だが散っていった同胞はもう…」



「あ、そうか…まだ言ってなかったよね?【解除】」


ザパーンと泥が落ちる音と共にその場で相変わらず立ち尽くし揺れていた泥沼男が崩れる。その中から無傷のまま騎馬民族が現れた。


泥沼男……これは私が編み出した捕獲用の魔法でその内部は異空間になっている。


そこでは延々と自らが泥沼に沈んでいく幻覚を見せられ戦意を削がれるという凶悪な魔法だが詳しい説明はいいだろう。


「よっし、とりあえず中に入ってご飯でも食べよう?」


「は?」


息を吐き張り詰めた緊張の糸をたゆませ口調も戻す。


もう戦いは終わったのだ、敵対することもない。



私はボルトンに手を差し伸べる。

ボルトンは理解してないのか間の抜けた声を上げる。


「ちょっ!お嬢!!」


「センティス卿、そいつぁいけねぇ!」


ジョセフとホセの諌言を聞き流し私はボルトンに手を差し出す。


震え、涙を流すボルトンは弱々しく私の手を取り立ち上がった。


「俺の完敗だ…な。こんな子供に武力だけでなく器の大きさまで負けちまった…ハハ…アーハッハッハ」


「一言余計だよ?まぁ、いっか!ジョセフ?」


「皆の者勝鬨を上げよ!ボルボル族々長ボルトンは我が元に降った!門を開けよ!我等が小さい領主様の要望だっ!炊き出しの準備だー!!」


「「「うおおぉぉぉぉー!!!」」」


あ、町の中に入って貰う前に体を綺麗にしなきゃ泥だらけになっちゃうな…


歓声冷めやらぬ中私はボルトンの方を向き声を掛ける。


「ボルトン、泥沼男に捕らえられた人達にこっちから順に並んで貰っていい?馬も一緒にね」


「分かった、お前らこっちに並べ!」


全員が集まったのを確認すると魔法を発動する。大きめの火球5発に水球10発で良いかな?


それらを混ぜ合わせぬるま湯より少し高い程度のものを騎馬民族目掛けて落とした。


「んなっ?!」


「クククッ…お嬢ォ、やり過ぎでさぁ」


ホセが驚き、ジョセフが笑い切れず、遂には大声で笑い出した。


全く失礼な!きちんとぶつかる時の衝撃とか冬間近で肌寒いかなと色々考えたのに。


おっと早く乾かさないと風邪引いちゃう。


それじゃ本末転倒だ。


温風の魔法で急いで乾かした。


すると身綺麗になり落ち着きを取り戻したのか騎馬民族達の会話が聞こえてくる。


「おい、お前顔の傷ぁ、どした?」


「うぉっ、本当だ!無ぇ!」


あちこちで似た様な会話が起こる。


これも【泥沼男】の効果である。


過去に負った古傷までも癒す、そんな魔法だ。


幻覚とかは所謂オプションで付け外し可能なのである。


大元は水、土、治癒の三属性。


そこから一つイメージを足すだけで何でも出来る。

魔法とは本当に便利なモノである。



元々、古参兵士達の古傷や重傷を負った者達を治す為に作った魔法だ。


前世の泥パックをイメージして作ったんだけど見た目が少し不気味かな。


毛並みも心なしか整い、一緒に出てきた馬も好調なのか前足を上げ、元気に嘶いている。


「こ、これは…!」



「私の魔法。凄いでしょ!ニシシ」


「凄いの度をちと超えすぎちゃいねぇですかい?」



歯を見せボルトンに笑って見せるとボルトンはへなへなと腰を地に付け、力弱く笑った。


よし、サプライズ大成功!!


「それじゃ中に入るから皆を纏めてね。私は先に戻って準備しておくから!行こ、ジョセフ、ホセ!」


美少女子爵はクールに去れりって感じ?


何か自分で美少女って言って萎えてしまった…まぁ、いいや。


そんな雰囲気を漂わせ、私は堂々と凱旋し、東門より中へと入るのだった。



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