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リリアナお嬢様の命令よ!~転生伯爵令嬢は自分に素直に生きると誓いました~  作者: 如月 燐夜
一部四章 少女子爵領地経営編
73/232

少女子爵とはじめての防衛戦

おまたせしました!

リビー達が訪問して三日が経った。


センティスでの生活に慣れたのか今日もリビーはとてとてと可愛らしい足音を響かせ、私の執務室の扉をノックも無しに勢いよく開いた。



「リリ、あそぼ?あ…おしごとちゅーだった。ごめんなさい」



「リビー、平気だよ。そこに座ってお茶でも飲んでて?もうすぐ終わるから。ジェシカ、ドーナツも出してあげて」


「畏まりました」


「どーなちゅ!すき!」


リビーは満面の笑みを浮かべ手を天に掲げ大喜びしている。


でもやっぱりドーナツは噛むのね…。

可愛いいなこんにゃろ!


ふふん、リビーの好みは把握済み。


更に血液型、誕生日、人には話せない秘密まで私は知り尽くしている。


睡眠時間は平均19時間、お風呂で最初に洗うのは左腕、朝は寝癖が凄くてセットするのに一時間係ったりとか、その間に転た寝してーーetc……



はい、そこ!

ストーカーって思った人、その場で腹筋五十回ね!


しかし、原作のものだがこちらでも当てはまるのかは不明だが。



ジェシカは恭しくうなずくと執務室の隣にある給侍室へと向かった。


数分も経たぬうちにジェシカが戻ってくる。


「お待たせ致しました。オリヴィエ様どうぞ」


「わーい」


やや棒読みながらも返事をするリビーは運ばれてきたと同時にすぐに口へと運んだ。


両手にドーナツを持ち、口一杯にもきゅもきゅしながら幸せそうな顔をしている。


私はちらとそれを見て書類に専念した。


リビー、それ何個目かな?


あれだけこんもり盛ってあったドーナツの山が既に半分近くなくなっていた。


お昼食べれなくなるよ?


「うまー」


リビーの幸せそうな声をBGMに書類と格闘する私。


中々充実した時間だ。


だがその時間は長くは続かなかった。


突然ノックの音が響く。


「領主様失礼します、北東の山間部より騎馬民族の軍を発見致しました。その数二百、あと一刻(約二時間)ほどで外壁部へ到着するかと」


このタイミングで?


何故だろう?


族長へ使者を出したはずだ。


けど彼が戻ってきたとは報告が上がっていない。


私は焦燥感を覚える。


「すぐに兵士を外壁周辺に。領民は中央広場へ集めて。私が直接交渉する。それが終わったらあなたは少し休みなさい、身体震えてるよ?」


「畏まりました、ではその様に。お、お気遣い感謝します。何分新兵なもので不馴れでして…」


伝令の新兵だという彼に労いの声を掛け私はセバスと公爵の居る客間へと向かう…


と部屋を出ようとしたその時リビーに袖を掴まれる。



「リリ、せんそー?」


「ううん、まだ分からない。けどなるべくそうならない様に努力するつもり。危ないから屋敷から出ちゃダメだよ?」


「わかった。まってリリ、おまじない」


その小さな身体から出たとは思えないほどの力で引き寄せられ私は不意に体勢を崩す。


まだまだ体幹が甘いなと暢気な感想が頭を掠める。



近寄る視線、リビーの透き通るセピアの瞳に吸い込まれそうになる。


私の前髪を掻き上げたリビーの柔らかな唇が私の額に触れる。


ドーナツの砂糖と油が付いたかと思い触れるもそんなことはなかった。


そこは公爵令嬢、きちんと布巾で拭っていた様だ。


「え?」


私は驚きの声を上げてしまう。


「とーさまとじーじにもしてくる」


と、リビーはまたとてとてと走り、客間へと向かった。


私もそっち行くんだけどなぁ…


なんか気まずい、けど子供のしたことだし、数日経てば忘れるだろう。


だけどなぁ…リビーてば大胆で無邪気だ…!


私は幸せを噛み締める。



今なら死んでも…


いや、リビーのおまじないを受けたのだ。


ここが正念場である。





客間に向かっていると扉の前にはランゼが居た。


軽く会釈されそのまま跪こうとしたので私は手でそれを制した。


ランゼがノックをすると既に伝令の報告を別で受けたのか、公爵が立ち上がりリビーを抱き締めていた。



「オリヴィエ、行ってくる」


「とーさま、きをつけて。リリをまもってあげて」



「うむ…むっ?リリアナ嬢、報告はそちらにも行っていたか?」


「ええ、その事で相談が。ここではしづらいので一度執務室へ移動願えますか?セバスも一緒に来て。」


リビーも居るからね。


「あぁ、行こう」


「畏まりました、ランゼ!兵長を執務室に集めろ。それと斥候を放ち相手の真意を暴いて来い」


「承知しました。」



おおう…セバスの強気な態度初めてみたよ…


出来る男ってのは覇気が違うなぁ。


さて私も礼服に着替えて執務室へ向かわないと。


自室に戻り着替えを済ませると既に領の幹部+公爵家の面子があつまっていた。


「これより緊急会議を始める。閣下、緊急時ゆえ敬称と言葉遣いが少々雑になるがよろしいか?」


まずは目上の人に確認!

こうゆう事態の場合は一刻も争うからね。


うん、領主の常識学んでおいてよかった…!



「うむ、構わん。さて皆のもの、現状を理解していない者はおるか?大丈夫な様じゃの。センティス卿、進行を頼む。」




「では私から。現在私の元に来た伝令に頼んだことは二つ。兵士は万一に備え武装し外壁周辺に集めさせた。二つ目領民を中央広場に集めることを伝えた。領民が集まり次第、私の魔法でドーム状の防壁を張り危険に備える。またこの屋敷の者は私の特殊な防御魔法を掛けてあるのでそこらの城壁の三倍は堅い。客人や使用人、文官は下手に出ない様に。閣下、他に何かあるでしょうか?」



「「「はっ!」」」


使用人の代表、ジェシカやセバス、文官の筆頭ランゼが声を張り上げた。


これで屋敷は大丈夫。


最悪乱戦になってもジェシカやメイドは護身術が使える。


生半可な相手じゃ太刀打ち出来ないだろう。


文官は…少し不安だがランゼもそれなりに戦えるし、平気だろう。


兵を二十くらい予備で置いておこうか。



「うむ、この短時間で良く纏めたな、流石の手際だ。して用兵はどうするのだ?それとセンティス卿自身がどう行動するのか、確認したい。」


「まず、相手側に敵意がある場合は私が魔法にて威嚇射撃を行う。それで怯めば使者を送り、尚も戦う意思を見せるならば弓兵で応戦、各個撃破。この領内には閣下の兵を含め七百近く居る。相手は二百騎、十分勝ち目はあると愚考する。」


「しかしそれでは卿の身に危険があるのでは?」


「私も領を陛下より賜りし者、それが貴族の定めである。がしかし、私には魔法がある。決して負ける気はない!」


私は力強く断言した。


そう、今までは自信がなかったけど私は領民、兵士、約二千の命を預かる人間だ。


ここで怖じ気付いては彼らに失礼である。


「センティス卿の覚悟は分かった。しかし万一の為に護衛を着けよ。此方からホセを出す。そこのジョセフといったか?ホセと共にセンティス卿の護衛に付いてくれ」


「相分かった。必ずやホセ殿と共に我が主リリアナ様を守ると約束させてもらおう」


おー!いつもの崩した言葉じゃなくてきちんとしてるジョセフかっくいー!


「私も今この時だけはセンティス卿を我が主の命により、必ずや守って見せよう!ジョセフ殿、ご助力願う」



うん、なんか普段の気軽な口調で話し合っている二人を知っているとどうしても違和感が…


だけどそれが軍議という特殊な場所での作法だ。


親戚兄弟、皆敬称を付け呼び合う。とても大事な事だ。


なんか良いなぁ…!


ジョセ×ホセ…これはやっぱなし!!



「よし、ならば儂も出ようぞ。こう見えて騎馬民族の長達とは何年も争っているうちに見知った仲だ。交渉の場を整えるくらい役に経ってみせよう」



「閣下、ご助力感謝する。このご恩は何れ必ず…!」


私は立ち上がり頭を深く下げる。

公爵の善意で関わらなくても良い事態に対応してくれてるのだ。


感謝の念でいっぱいである。


「伝令、もう間もなく百メートル先の平原に騎馬民族が到着する模様。対応をお願いします」


「センティス卿」


「はい、では全員持ち場に向かえ!最悪の事態に陥った場合でも誰一人欠けてはならん!全員、生き残るぞ!」



「「「おーーー!!!!」」」



掛け声を背に受け、私は満を持して屋敷から出たのだった。

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