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リリアナお嬢様の命令よ!~転生伯爵令嬢は自分に素直に生きると誓いました~  作者: 如月 燐夜
一部四章 少女子爵領地経営編
72/232

少女子爵と御伽話

少し長めです。


これから貴方は語られることのなかった秘密を知ることになるでしょう…。





なんて雰囲気作りして見ちゃったり?笑



四公と塔の魔女ーー…


私は記憶を掘り返す。


確か…こんな感じだったな。



昔々あるところにそれはとてもとても綺麗なお姫様が居ました。


お姫様は魔法が得意でその力はとてつもないものでした。


王様はお姫様の力が怖くなってしまいお城の高い塔に閉じ込めました。



お姫様はお城の外に出たいとずっと思っていました。


ですが王様はお姫様の願いを耳に挟み決して出すなと家来に命令を出したのです。


そんなお姫様を哀れに思った東西南北の公爵達が力を合わせ、お姫様をお城から出して外の世界を見せようと頑張り始めました。



北の公爵は美食家で美味しいものが大好き。

外の世界にはこんなにも美味しい料理があるんだよ、と美味しい食べ物を王様に秘密でお姫様に届けました。


東の公爵は怠惰でお昼寝が好き。

良かれと思って、少しでも良い夢が見れる様にと部下に命令し、絹の枕と布団を仕立てお姫様に届けました。


西の公爵は見栄っ張りで自分を着飾るのが好き。

お金もないのに贅沢ばかりをしてお姫様の為だけに最高級の織物を用意し、お姫様の体型に合わせた世界でただ一つのドレスを用意しました。


南の公爵は知りたがり。

気になることには納得がいくまで調べ尽くしその知識をどんどん増やします。

その溢れ出る知識を本に書き記しお姫様にプレゼントしたのです。


四人の公爵はお姫様の事が好きだったのです。


しかし四人はお姫様の姿を一度しか見たことがありません。


会いに行っても扉越しにしか話すことしか出来ませんでした。


それでも恋をしてしまった四人はめげません。


いつか自分に振り向いてくれるのではないかと、他の三人には決して負けないと躍起になりました。


それぞれが得意な分野でお姫様にアピールしましたが、お姫様は誰か一人を選ぶ事はありませんでした。



そんな事が三年ほど続いたある日、四人の公爵は一緒にお姫様の元へ訪れました。


しかし、お姫様は体調が悪く四人とは会えないと家来に言われ追い出されました。


文句を言いながらお城の外を歩いていると窓が空いているのに気づきます。


気づけば四人は駆け出しお城の外壁をよじ登り、窓からお姫様の様子を覗いたのです。



するとどうでしょう。


そこには汚れたベッドの上で大量の食事を口に運び、贈りもののドレスで口を拭いながら本を破く、醜く横暴なお姫様の姿があったではないですか。


四人は千年の恋も冷めその場を静かに立ち去りました。


しかしその一ヶ月後、不思議な事が起こりました。



北の公爵は見る見る内にブクブクと醜く太り、寝るとき以外は何かを常に口に入れる様になり、太りすぎて寝室から出れなくなってしまいました。



東の公爵は病気でもないのに一日三時間しか起きられなくなり、領地に災害が起きても彼は寝たままでした。次に起きた時には屋敷が倒壊していたのです。


西の公爵は自らを着飾ることのみを優先し、なけなしのお金を盗賊に盗まれ民が蔑ろになっても自分のお金を取り返す事に執着し、とうとう盗賊に捕まってしまいました。。


南の公爵は知識を求め、気狂いと呼ばれるようになり、果てには領民をかどわかし二度とその者の姿を見たものは現れません、皆怖くなって逃げました。



一ヶ月のうちに次々と不思議な事が起こった王様はお姫様に尋ねました。


するとお姫様は言いました。


私の秘密を知った者を呪った、と。


王様は怖くなりお姫様を処刑することを決めました。


しかしその翌日に王様は、なんと自らの首元に短剣を突き刺し自害したのです。


その噂を聞いた民達はお姫様の仕業ではないのかと畏れ、畏怖を込めこう呼びました。


塔の魔女…と。


こうしてお姫様は堂々とお城から出て自分の目で外の世界を見ることが出来ましたとさ、めでたしめでたし。




、、、


確かこんな感じだったはずだ。


うん、めでたくないよね。


結局お姫様以外の登場人物が皆亡くなってるし、四公の恋も実ってない。何人か死んじゃってるし。


良かれと思ってそれぞれの得意分野でプレゼント攻撃をしたにも関わらず、姿も見せないしお礼を言わないのは元日本人の慣性としては意義を唱えたい。



誰とも婚姻しなかったお姫様は実はその家来と結ばれたのでは?


という推測と言うのも甚だしい暴論が出る始末だ。




「確かーーっていう感じでしたよね。それがリビーと何か関係があるのでしょうか?」


私は公爵に訪ねた。


「うむ。リリアナ嬢はクライシスやエンディミオンの所の娘達も知っておるだろ。パーシアスの所の娘も含めオリヴィエ達は先祖帰りなんだよ」



先祖帰り…聞きなれない言葉だ。


私は首を傾げ公爵に先を促す。



「その御伽話が実話だと言うのは知っておるかの?」


「はい、存じております。ですがそこまで詳しくは…」


「そうか。北の《大食》、東の《惰眠》、西の《執着》、南の《知欲》と呼ばれておる。これら全てが数十年に一度、強く影響する世代がおる。今回はオリヴィエが当たり・・・・でな。他の三公もそうだ、オリヴィエと同じ様に大食、執着、知欲、それらが色濃く出始めておる。」


私は原作を何度もオリヴィエ・ジェネシスルートをプレイしているから知っている。


でも原作と今世では擦れが生じている。


リビーの症状が色濃く出るのはまだ先の筈だ。


この《四公と塔の魔女》という架空の御伽話も障りの部分しか語られていなかったし、それこそオリヴィエの体質についても描写されていなかったのだ。


特異点と言っても良いだろうか。


それに私の存在である。


本来の原作ではリリアナとオリヴィエは学園の生徒会室で知り合う。


しかし今世は違う。


私からリビーに会いに行ったのだ、その違いを踏まえるとリビーのエンディングに誤差が既に出ている筈だ。


私は感じていた。


原作のオリヴィエと今世のリビーは全くの別物であると確信している。


その原因がイレギュラーにあることも。

私のせいで改変されていくシナリオ、大筋は一緒でも結末がどのようになるのか、まったく検討がつかない。



けどこれは私の物語じんせいでもある。


どの様な結末を迎えようと最後は楽しい人生だったと笑って死にたい。


「そう…ですか。」


私は俯きリビーを見つめる。


幸せそうに眠る彼女は寝言を何か呟いた。


「かあ…しゃま…」


お母さん…リビーの母親は元々病弱で産後の肥え立ちが悪く体調を崩し亡くなったと記憶している。


公爵は後妻も取らず生涯妻だけを愛すと明言している。




「この子には寂しい思いをさせてしまっている。忙しくてあまり共に過ごしてやれなくてな。再婚していれば少しでもこの子は幸せだったのか…と何度も後悔しているよ。」


「閣下、お言葉ですが閣下の選択に間違いがあるとは思えません。リビーは現状で満足している筈です。忙しい父の背を見ながらもリビーは健やかに、そして毎日を懸命に生きているではありませんか。そう自分を卑下するものではありませんよ。あ…えっと…身に余る失言をしてしまい失礼しました!」



私はつい感情的になってしまい説教してしまった自分を後悔する。


なにやってるんだ、私は…


相手は国のナンバー3だぞ?


一介の小娘が口にして良いことではない。



「ふむ、なるほどのう。今ので得心いったよ。この子がなぜリリアナ嬢に懐いたのか、な。クククッ…アーハハッハ」


「へ?」


怒声が飛んでくるかと思ったら朗らかな顔をして公爵は私に微笑んだ。



「いや、急に笑ってしまってすまんの。似ておるのだよ。リリアナ嬢とこの子の亡き母カトリーヌにの。この子が生まれてすぐに亡くなってしまったが、カトリーヌは芯が強く物怖じしない性格だった。お主の歯に衣着せぬ物言いに本質を見抜いたのだろうて。」


私がオリヴィエのお母さんに似ている?


「昔からカトリーヌは身体が弱くての。儂の乳兄弟の娘だったんだが、嫁の貰い手が見付からなくてな。儂も生涯独身を貫き甥に家督を譲るつもりだった。ーーー」


公爵は語り出した。自分の乳兄弟の娘との恋愛秘話を。


部外者の私が聞いててもいいのかな?


まぁ、私以外寝ているリビーしか居ないし良いよね。


公爵は切々と語り出す。





カトリーヌは公爵…ラッセンに恋をしていた。


してはいけない秘密の恋。


屋敷の使用人と主人だ、間違いが決して無いように厳格であるべきだった。


だがその思いを忘れる事は出来ず、かと言って打ち明けられず時は過ぎていった。




カトリーヌが14才の誕生日を迎えた日、彼女はこの思いをラッセンに伝える事を決意した。


会場に花束を持って現れたラッセンを見た瞬間、彼女はラッセンの腕を取り求婚した。


突然の出来事にラッセンだけではなく他の招待客も驚く。


しかしラッセンは公爵家の当主であり、血筋を辿れば貴族ではあるが、祖父の世代で平民となったカトリーヌとでは家格は釣り合わないと言って良い。


しかしラッセンはその求婚を受け入れた。


彼も乳兄弟であり、親友であり、家臣の娘を少なからず快く思っていたのである。


その瞬間誕生日会が婚約披露の場となり万雷の拍手が鳴り響いたのだった。






コンコン、とノックの音が響いた。


「紅茶をお持ちしました。主よ、の話ですかな?」




ということはもしかして…




「おはよ、とーさま、あれ?リリだ。」


「おはよ、リビー。かくれんぼは私の勝ちだよ。」


「あ、ぼくまたねて…リリごめん」


「ううん、大丈夫だよ」


「とーさま、リリとなにはなしてたの?」



「カトリーヌのことだよ」


「かーさまのおはなし?ききたいききたい!じーじもいっしょに」



リビーは満面の笑みを浮かべそう呟く。


私はその笑顔を見ながら一人納得していた。


セバスのことをじーじ、と呼ぶのも執事だからではなく本当の祖父だったからなのか。



私は一人驚きつつもリビーが公爵とセバスに懐いている理由を知れて笑みを溢した。



幸せそうな親子三代の邪魔をしない様に私はそっと席を立ちその場を去るのだった。


今回の話、すごく難産でした…


オリヴィエの家庭事情や特殊性をどの様に表すのか、また、御伽話を介して読者の方々にきちんと理解されるにはどう表現すれば良いのか、かなりの時間を費やしました。


これから《四公と塔の魔女》というキーワードは時たま出ることになります。


覚えていて戴ければ幸いです。


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