少女子爵と訪問者
あの人が再登場です!
一週間後セバスが王都から戻ってきた。公爵とリビー、そしてジョセフの従兄弟ホセを連れて…ヘッ?!
突然の事過ぎて私は軽いパニック状態となる。
国の舵取りを担う五人のうち一人がこんな発展途上のド田舎に来るとは何事だろうか?
まぁ、視察なんだろうけどさ。
どうしよ、どうしよ!
歓待の準備なんかしてないよ!
「ただいま戻りました、子爵様。是非主が直接言葉を交わしたいと申しましたのでお連れした次第に御座います。」
「ご苦労様、ちゃんと休めた?」
「はい、充実した休日を過ごせました。お気遣い誠に有り難うございます。」
「あっ……と、公爵閣下を歓待する準備をしな「既に出来ておりますお嬢様」く……ちゃ…え?」
私が慌てて屋敷の方へ向かおうと振り向いたらジェシカが立っておりそう告げる。
全く気配を感じなかった。
此奴……何者だ?
流石メイド力53万は伊達じゃないってことか。
巫山けてる場合じゃないか。
「まずはジェネシス公爵様、オリヴィエ様をお部屋にご案内します。どうぞこちらへ」
「うむ、良く出来たメイドよの。」
あ、やべ…完全にジェネシス公忘れてた。
リビーが私と目が逢った瞬間手を振ってくれた。
私は笑顔で答え二人の前に進み口を開く。
「閣下、申し訳御座いません。驚きのあまり挨拶が遅れてしまいました。何卒無礼をお許し下さい。」
「はっはっは、律儀な者よのう。気にするな、突然来たいと言ったのは儂の方だからな。オリヴィエもリリアナ嬢に会いたがっていたから丁度良かったわい」
「そう言って戴けると幸いです。ささ、長旅でお疲れでしょう。どうぞ中へ入りお寛ぎ下さい。」
「うむ、世話になる。」
公爵が手を上げ中へ入るとリビーも真似をして手を上げた。
「リリ、ひさしぶり」
「リビー、疲れたでしょ?ゆっくりして行ってね?」
「ん、だいじょぶ。じーじととーさまといっしょ、たのしかった。けどつかれたからいっぱいねる」
いや、今起きたばっかりじゃないの?
まぁ、可愛いからいいや。
私は公爵親子の世話をセバスに任せジェシカを連れ一度執務室へと戻った。
その後ろで従兄弟と再会したジョセフは抱き合い涙を流していた。
あー暑苦しい。
ジョセ×ホセ?ないない。
良い年した髭のおっさんカプ本とか手に取りたいとも思わない。
「ジェシカ、さっきの歓待の準備が出来てるって話だけど、具体的には?」
「はい、セバスティン様より出立前に我が主は直接言葉を交えたいだろうから連れてくる事になる。最低限の用意で良いので歓待の準備をするようにと仰せつかっておりました。」
まさか、セバス…ここまで予想済みだったとは…?!
出来る執事は格が違うな。
いや、長年仕えてるのだから主の行動パターンがわかってるだけなのかも知れない。
「そっか、ありがとう。疲れてると思うから少ししたら浴場に案内してあげて。私は温度を調整してくる。」
「ご苦労をお掛けします…」
まぁ、ジェシカは一般的な生活魔法しか使えないし仕方ないよね。
私は執務室を飛び出し、屋敷の裏手にある露天風呂風の浴場に水魔法で水を満たす。
これではまだ冷たいままだ。
魔法はイメージが大事だが、流石にお湯を作り出すのは難しい。
水が張ったのを確認し、火の玉を三発ほど打ち込む。
これで大体40℃前後だ。
公爵は熱めの方が好むだろうと思うが、リビーは温めが良いだろうから後で私と入ってもらおう。
グフフ…(ゲース顔
私の我が儘で作って貰った露天風呂風のお風呂は石を積み上げただけの簡易なものだ。
近くに井戸も設置してあるが私が魔法でやった方が早いから普段はあまり使わない。
使用人も使うので幅は大きめだ。
周囲には柵を張り、覗き対策はばっちりだし特に文句はない。
湯沸かしの魔道具がないので私の火魔法を打ち込まなきゃならないのはめんどうだが要領はいつの間にか覚えてしまった。
魔道具の製法学ぼうかな。
買うより作った方が安くつくかな?
確か原作でも教師として王都に有名な錬金術士が居た筈だ。
確かサブヒロインの一人で、えーと名前は……なんだっけ?
まぁ、その人を領に招いて学ぶのもアリだ。
近いうち、セバスにでも相談しよう。
「よっし、温度はこれで良いとして…ん?リビー、どうしたの?」
「リリ、あそぼ。さがした」
どうやら暇で私を探していたらしい。
ジェシカ辺りに会って聞いたんだろうな。
「分かった。何もないところだけど、何したい?」
「かくれんぼ、リリがおに」
「分かった。じゃあここは危ないから中に戻ろう?」
「うん」
返事をした少女の笑顔は正に天使と称しても差し支えないものだった。
出来ることなら絵画として後世まで遺したいほどの傑作である。
カメラ…本気で頑張るかな…!
私は一人決意した。
「じゃあ数えるね?いーち、にぃー、さーん、よーんーー」
壁に腕を付き数を数え始める。
とてとてと可愛らしい足音が遠退いていくのを耳で堪能し二十まで数えると私はリビーを探しに行った。
この屋敷…といっても仮住まいで少し大きめの一般住宅ほどなのでそこまで広くはない。
部屋数が四、キッチン、トイレに裏庭に風呂がある程度だ。
将来的には改築し、セバスとランゼ、ヴェイルの住まいになるのだが、それもあと二ヶ月は先の話。
そしてまだ六歳のリビーならばそこまて知恵は働かない筈、直ぐに見付けられるだろう。
私は手当たり次第に探し始める。扉の開く音は聞こえなかったので近くに…あ、居た。
「リビー、見っけ。」
私は小さい声でリビーの背中に触れる。
「すぅー…すぅー…」
彼女は取り込んだばかりのシーツの上で猫の様に丸くなって寝ていた。
彼女の最大活動限界は確か14才の時で四時間、幼少期ならその半分くらいだろうか。
三十分の休憩を挟んでまた起き出すだろう。
それまではゆっくり休んで欲しい。
私はリビーの頭を軽く撫でるとお姫様抱っこをして公爵の部屋へと運んだ。
「失礼します。リビーと遊んで居たのですが途中で眠ってしまったので連れて参りました。」
「うむ、悪いな。入ってくれ」
部屋の前で立っていたメイドに声を掛け、扉を開いてもらう。
私は抱き抱えていたリビーをベッドの上に寝かせ、退室しようとすると公爵に止められた。
「リリアナ嬢、少し良いかな?」
「ええ、時間は有りますが…如何されました?」
今日の分は午前中に済ませた。
後は領主の心構えとかの座学とジョセフとの稽古くらいだろうか。
「リビーの事だ、少し話しておこうと思っての。リリアナ嬢は【四公と塔の魔女】の御伽話を知っておるかの?」
「ええ、人並みには。」
四公と塔の魔女ーー…
御伽話として語られているが実際に起こった実話である。
アムスティア王国の四公爵家である
東のジェネシス
西のクライシス
南のエンディミオン
北のパーシアス
を総称して四公と呼ぶ。
塔の魔女…というのは三百年前、王国を震撼させた悲しみと怒りに焦がれた当時のお姫様の事だ。
私は幼い頃に聞いた話を頭の中で思い出す。
ホセさん、名前だけの再登場です。皆予想は当たったかな?
はい、ふざけるのはおしまいでオリヴィエたんキター!!!
ってなってる方、おめでとうございます。
貴方が正解です。
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