少女子爵、出立す
内政パートに入ります。
とっかかり部分なので少し短めです。
その代わり後書きは多めとなっております。
宜しければ御覧くださいませ
お泊まり会から二日後、私は家臣団とリモーネ商会の人員を連れ、王都を旅立った。
レインやリビー達ともまた春に会う約束を交わし、充分に英気を養ったし、領地へ向かい冬支度をしなければならない。
冬には飢えた騎馬民族の襲撃があるのでそれに備えなくては…!
幹部候補として見繕った針子や商人志望の若者を指導する人員を残しセンティスへ向かうので40人近くの大所帯となった。
警護はジョセフを隊長とし、ヴェイルや数名のベテラン兵士を実家から引っ張り出し更に若い兵士も追加で雇った。
私や幹部陣は野盗ごときには負けない程度の武力はあるが、他の者達はそうはいかない。
王都からセンティスまでの道程は国王が兵士を出し街道を整備してくれているが所々に死角となる場所がまだまだ多いので油断ならない。
気を引き締めて行かなくちゃ!
「お嬢、偵察がこの先に休めそうな川を見つけたらしい。特に野盗らしき影はないらしいからその辺で昼食にしないか?」
「お嬢、俺は腹が減ったぞ!!」
一番後ろを愛馬スタローンに跨がりながら付いて行っていた私の元へジョセフとヴェイルが駆けてきた。
二人は脳筋だからだろうか相性が良いらしく、よく二人で鍛練する姿を見掛けた。
「わかったわかった。少し疲れたしお昼にしよっか。偵察の兵士達には私達が着くまできちんと休む様に伝えて?」
「あいよ。若い連中はお嬢の優しさに泣いて喜ぶだろうぜ」
「それは言い過ぎだよジョセフ」
今回警護に連れてきたのは全部で24名である。四小隊六人編成でジョセフ、ヴェイル、他騎士二人を隊長に補佐としてベテラン兵士が四人、残り十六人は兵士学校を卒業後、就職に失敗した者達をジョセフが昔のコネで引き連れて来た。
我がセンティス子爵家は人材不足なのでジョセフに育成を任せたのだが、他の貴族よりは厚待遇で給金も高く、仕事量が少ないからか兵士達からは羨望の眼差しを時たま向けられる。
やっぱりブラックよりホワイトだよね。
前世の知識をフル活用し家臣団の就業時間は私が調節しており世間一般よりも短めだ。
そのかわりの皺寄せが私に来るのだが…まぁ、困る程度でもないし、そこは甘んじて受ける。
兵士達はほとんどがはぐれ者や前の勤め先で問題児と判断された者ばかりなのだがジョセフの教育プランにより叩き直され今では真面目に働き、何故か私を崇拝するようになった。
兵士達の中で私は【聖女】などと呼ばれてるがそれはマリアンヌの事だ。
直ぐに呼ぶのは止めさせた。
誠に遺憾である。ぷんぷん
案内された川辺の近くに辿り着くと既に兵士達が簡易竃を石で組み上げておりその上に大鍋が置かれていた。
明日のお昼まで係る移動なのでこの辺りで私の手料理を振る舞うか。
私はその旨をジョセフ、ジェシカに伝えると、
「お嬢の行動は昔から突拍子もねえことが多いから慣れっこですぜ」
「名案かと存じます当主様。」
と、ゴーサインが出た。
ジェシカは私の威厳に関わるから人前では当主様と呼ぶ様になっていた。
威厳なんて気にしないんだけどなぁ…
ジョセフは相変わらずお嬢、お嬢と口にしてはジェシカに強かなローキックをされ悶絶している。
いい加減学習しようよジョセフ…
七歳の幼女に威厳を求められても困るんだが…まぁ仕方ないか。
ベテラン兵士達が狩ってきた鹿を枝肉にして運んできたのでそれを使いシチューを作った。
王都で大量の野菜や作物も買ってきたし食料には余裕がある。
この冬を生きる分には少し足りないものの私の商会があちこちから集めてくれる手筈になっている。
かなり寒くなってきたし体の温まる物があった方が嬉しいだろうと言う私の判断だ。
その判断が功を奏したのか皆無我夢中でシチューを掻き込み、何度もおかわりをしている。
挙げ句の果てに私の事を【食神様】などと言い出したのでそれも止めた。
「て、敵襲!山賊が攻めてきたぞー!」
お腹が満たされうとうとしていた時、突然そんな声が響き渡った。
私は即座に立ち上がり腰の剣に手を置き、状況確認へと駆け出した。
川辺の近くには森があり私がそちらへ向かっているとジョセフが数人を連れこちらに向かって来ていた。
「お嬢、敵襲でさぁ」
「規模は?」
私がそう尋ねるとベテラン兵士が口を開いた。
「はっ、偵察の者によりますと数は約40、この周辺を根城とする野盗の一団かと思われます。当主様は危険ですので森より離れた場所にてーー」
「大バカ者ッ!私の腰に下がるこの剣が目に入らぬか?私だって戦える!それにお前達が守ってくれるんだろ?」
瞬間私は声を荒げた。気付けば口を付いていたのだ。
貴族当主としての口調は慣れないなぁ…
だけど後悔はない。
曲がりなりにも貴族家当主だし、初陣も経験済みだ。
それに領地へ行けばどのみちセンティスの先住民である騎馬民族の侵攻が待っている。
此方の倍だろうが襲う者は倒さなければいけない。
経験は糧になる、私はこの世界で強く実感したのだ。
この乱世を生き抜く覚悟もとっくに決まっている。
「はっ!この命に代えましても」
「危なくなったら生き残ることだけを優先に行動して。私も出るから。非戦闘者は川辺にてヴェイルのとことアポロの二小隊で待機、残りは森に行くよ!ジェシカもヴェイル達の方へ。一人でも戦える人間は多い方が良いから」
気付けば当主としての口調は忘れいつもの口調に戻っていた。やっぱり慣れないことはするもんじゃないなぁ。
「ご慧眼にございます。畏まりました」
いつのまにか私の後ろに控えていたジェシカにも指示を出し、私はジョセフ達と共に森へ侵入した。
レイン達ヒロイン勢の出番はしばらくお預けになります。
本日はリサーナの紹介でございます
聖アムスティア学園生徒名簿
リサーナ・クランベリー・クライシス 15才
王武文魔保の五派閥のうち保守派筆頭のクライシス公爵家令嬢で、学園一の問題児。
風紀委員長のマリアンヌ・ゲースとは犬猿の仲である。
主人公とは同じクラスで登校初日、パンをくわえながら主人公と曲がり角で衝突してからの仲である。
主人公の悪友ポジションであり事あるごとに主人公に絡んでくる。
さっぱりした性格だが身だしなみには口うるさく自分を【あーし】と呼称する。
実家は最高位の公爵家ではあるが彼女が幼い頃は貧しく無駄遣いばかりする両親を幼いながら見切りを着けたという。
そんな両親を幼い頃に見ていたからか跳ねっ返りで人に頭を下げることを嫌い自分の思い通りにならない事には全力で抗議する。
服にはこだわりを持っており他人の服装に口を出すほど。
指定制服を着崩し髪は盛り盛り、ネイルもバッチバチに決めて今日も彼女は我が道を行く。
「あーしにコーデを任せとけば、マー君もモッテモテのウハウハっしょ!あ、でもあーしに惚れたらダメだかんね?火傷しちゃうかもよ?ニシシシ」
好きなもの ファッション 自由 お金
嫌いなもの 実家 貧乏
所属 無し
新コーナー!
第一回リリちかっ!豆知識~!パフパフ~
王武文魔保、、、
王権派、武断派、文知派、魔豊派、保守派の略称である。
リリアナの実家、アルデン家は祖父の代で文知派から魔豊派(誤字ではない)に鞍替えしました。
魔豊派ーー魔法で生活を豊かにするーーをスローガンに活動している。




