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準名誉子爵、帰還する

更新遅くなり申し訳ございません。


さて、敵陣のど真ん中にいる私、ヴェイル、ランゼ、そして捕虜だった女性十二名だが、このあとどうするべきか私は悩んだ。


一、敵陣中央突破。

二、森へ身を潜める。

三、魔法を使い安全を確保しながらの後退し大きく迂回する。


消去法で三は止めておこう。拠点から離れてしまうし、後方に敵の予備兵力があったら捕虜の女性達が危険だ。


一か二だが、二は森で遭難してしまう可能性もある。だが、一は更に直接的な危険があるだろう。


「どうしよっか」


私は勝ち名乗りを上げているヴェイルを黙らせ(物理)、魔法で半径十メートルをドーム状に囲み敵兵を近付けさせないよう安全策を取り頭を捻っていた。


そんな私を見兼ねたのか知恵者のランゼが口を開く。


「リリアナ様、一度後方に下がるべきでは?予備兵力は到着して居りませんし、まだ時間はあるはずです。旧ガーズ男爵領には市民の反乱軍が潜んでいるとのこと。ここは一つ後退するのも手かと」


「それは駄目。パルメラさん達の事も考えて?それにガーズ男爵領は既に補給基地になっている可能性もある。後退だけは絶対に駄目。」


この戦場に居るのは約八万で二万が後方に居る筈。


私が独自で調べた結果だがおおよそは当たっているはず。


それに心身傷ついたパルメラさん達捕虜を危険な場所には連れていきたくない。


王国の拠点までは約十キロ、舗装されてない道を歩けば二時間か…


敵兵に気付かれず尚且つ安全な道…あ、一つだけ思い付いた。



「敵陣を中央突破するよ。だけど外じゃなくて下からね」


私は地面を指差す。


この作戦ならきっと上手く行く。


私は確信した。




▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


お嬢様が行方を眩ませてから五日が経った。


なぜあの時側に居なかったのか…お嬢様付きのメイドとして恥じるばかりだ。


お嬢様付きの騎士であるジョセフも私と同じくその表情は暗く食事もろくに手を付けてないのか、頬は痩け明るい性格だったが暗く一人ぶつぶつと呟いていた。



「ジョセフさん、きちんと食事は取ってください。心配な気持ちは私も同じです。ですがそのままではいけません」



「ジェシカか…どうせ俺はこのまま生き延びても主を守れなかった無能として後ろ指を指される人生だ。もう騎士としておしまいよ、リリアナ様に顔向け出来ねえよ」


私は食事を机の上に置きジョセフに近づく。パシンッと乾いた音を響かせジョセフを睨んだ。


「お嬢様はまだ生きています!貴方がそんな表情をしていたらお嬢様に笑われますよ?しっかりなさい!」


ジョセフさんは私に叩かれた頬を押さえながら何事かを呟くと立ち上がる。


「すまねぇ、ジェシカ!お前の一発で目が覚めた!俺達がこんなんじゃ駄目だよな。お嬢を笑って迎えてやらねえと」


「そうです、まずは私たちの出来ることをしましょう。ジョセフさんは食事と睡眠を、私はお嬢様がいつ戻られても快適に過ごせるよう食事の用意と清掃を。」


「あぁ、俺達をこんだけ悩ませるんだ。罪な人だよ全く…だが、手のかかる主ほど仕え甲斐があるってもんだ。ジェシカ手製の料理が冷めるといけねぇ。いただくぞ?」


「ええ、味わってください」


いつもの調子に戻ったジョセフさんを横目に私はその場を後にした。


食事の用意を済ませ、砦内のお嬢様の私室の鍵を開け中の掃除をしているとがさごそと音が聞こえた。


不審に思い音のする方に向かうとクローゼットの裏からの様だ。


私がクローゼットの戸を開くと中からお嬢様が飛び出してくる。


居なくなった時と同じ服装だ、私は居住まいを正し臣下として在るべき姿勢で口を開く。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


「えへへ…ただいまぁ…。うっ…ジェシカ怒ってる…?」


「いえ、怒ってなど居ませんよ。ですがどれほど心配を掛けたのかご理解いただけると私としては嬉しく思います。」


「だ、だよね…えへへ…ごめんなさい…」


埃塗れのお嬢様は力なく笑うと頭を下げた、その後ろから十数名の男女が現れお嬢様は口を開いた。


「とりあえず彼女達にお風呂と着替えを。それから詳しい事は説明するから」


「畏まりました、湯を沸かして参りますのでお嬢様は客室に皆様をお通しして頂けますか?そのついでにジョセフさんなどに元気な顔を見せて上げて下さいませ」


「あうー…分かったよ。皆こっち来て?」


お嬢様はばつの悪そうな顔をしてから観念したのか、連れて来た男女を案内しはじめた。


私はそれを確認すると急いで湯を沸かし、着替えの手配を行った。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


私は地面を掘り進んで味方拠点近くまで逃げてきた。


敵兵はまだ私があのドーム状の防壁に居ると勘違いしているはず…多分。


私が居なくなってから四日が経過していた。



地下通路を掘りながら補強や拡張をしつつ、魔力の回復や捕虜女性達の体力面を気にして二日も掛かってしまったが本来なら一ヶ月は掛かる工事である。


食事は私、ランゼ、ヴェイルが持っていた保存食のパンと干し肉で何とかなった。


一週間分はあったから問題なかった。


着替えと食事を済ませると公爵の執務室へと報告に向かう。


敵陣の後方に繋がるトンネルを通ってきたというのを公爵閣下に敵将の首と共に報告すると勲功第一を約束されてしまった。


ヴェイルとランゼも私付きの騎士となることも了承してくれた。


むぅ…トンネルを掘ったのは私だけどやったのはヴェイルなのだがその主人となってしまったのだから受け入れるしかないか…


さて戦況の方だが私が帰還した翌日に、掘ったトンネルを二百名の精鋭を引き連れた公爵と私、ヴェイル、ランゼ他数人の将校で通りドームを破壊し敵陣の後方から攻め寄せた。


私達がたどり着いた時もまだドームは残っていた。


突如後方から現れたアムスティア軍にガルム帝国軍は混乱、陣形が瓦解し敗走。多くの捕虜を得てガーズ男爵領を取り戻した。


その時点で私や父上、他数名の領主はお役御免となり領地へ返される。


その後一ヶ月の間、私が建てた城塞にて練兵、補給を行い兵の配備を済ますと帝国領へと諸侯は侵攻を始めた。


出立前に公爵の出した伝令にて国王陛下に私の事を報告され王都に召集命令が掛かった。


公爵と共に謁見することになっている。


でも私あの王様あまり好きじゃないんだよなぁ…


だけど、レインちゃんやオリヴィエたんに一ヶ月ぶりに会える。


それだけが楽しみだ!


私は王都行きの馬車にウキウキ気分で乗り込んだのだった。

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