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準名誉子爵、敵軍に潜入する



あれから三日が経ちまして遂に開戦が近付いてきました。


両者睨み合いが続き、動きもなく間もなく夕方に差し掛かる。


え?どうして私がそんな事知ってるかって?


私は何処に居るのかと言いますと、安全な後方基地でもなく、私が建てた日本風のお城でもない。


じゃあ何処なの?


ってなるんだけど、何故か私は最前線の敵陣のど真ん中にいるのです。


「リリー様、この戦は帝国が勝ちます。私にお任せ下さい!」


「敵将の首は俺が貰うぜい!」


「あ、…が、頑張ってください…」


周辺に居る血気盛んな帝国兵士達が何故か上半身裸になり自慢の筋肉を見せ付けてくる。


うーん…何て言うか暑苦しいデス…ハイ。


何故こんな事になってるのかと言うと、二日前に話は戻る。


周辺の地理を把握しようと私は護衛を付けずに一人で単身南西にある森へ向かった。


ジェシカやジョセフは王国軍の物資搬入などの手伝いで出払ってしまい、頼める相手が居なかったのだ。


私はまぁ、そこらの村人や貴族子弟よりは剣に自信があるし、何より莫大な魔力がある。


いざとなれば囲まれても逃げ出すくらいは簡単だろう。


そう思って森に入ったのだが一時間もしないうちに囲まれ捕まりました。


何やってんだ…私!


幸い軽装をしており、村娘と勘違いされた為拘束されず戦う意思を告げると何と百人の部下を任された。


帝国って馬鹿なの?と疑問に思わずにいられないがそれが許されてしまうのが不思議でしょうがない。


私の前に二人の男が現れる、どうやら私の補助を言い渡されたらしく友好的な態度だった。


「俺はヴェイルだ。ははっ、小さい隊長さんは俺が守るぜ!」


「いや、こんな脳筋な奴には任せてはおけない。私はランゼ、どうかお側に置いて下さい」


「あ…えっとリリーです。よろしく」


なんて私の取り合いが始まる始末…これが前世の弟が言っていた【オタサーの姫】もしくは【乙女ゲーの主人公】扱いなのだろうか?


ヴェイルは赤髪に小麦色の肌に筋肉質な体をしており、癖なのか、へへっと笑い鼻の下を人差し指で擦る仕草をしている。


ランゼの方は対照的に青髪で頭一つ分背が低く眼鏡を掛けた知的な印象が強い。


二人とも15~6才程度で何よりイケメンだ。


ヴェイルと名乗る方が突然服を脱ぎ出すと筋肉自慢を始め、ランゼがそれを諫めるもヴェイルに煽られ脱ぎ出すという、腐(負)の連鎖。


誰か止めてー!



それで何だかんだ二日が経過し、現在へと至る。


結局口論はランゼが破れヴェイルの様な筋肉キャラになってしまった…哀れなランゼ…


私はこの二日間でどうやって王国軍に合流しようかとずっと悩んでいた。


回りには敵だらけ、信用出来る相手は居ない。


いや、ヴェイルとランゼならばもしかしたら協力してくれるかも知れないが、リスクの方が高い。


ここは…



「ランゼ、ヴェイル!私の軍は大きく後方に迂回して敵の横っ腹を突くよ、準備して?」


「「おう!」」


攻める風にして本隊と切り離し様子を窺う事にした。


後は二人から少し離れて敵将の首を私が取れば万事解決である。


なんてそんな事出来るのか、私は?


前世も通して人を殺した事がない私が人を殺す。


でもやらなきゃやられるんだ…!



やってやる!



大きく迂回し、森の繁みでじっと息を殺す。


ランゼやヴェイルには花摘みだと言って離れた。


護衛に女姓兵が付けられたが、今は気を失って眠って貰っている。



木から木へ飛び移り移動を開始する。


大丈夫、地形は頭に入っている。


ここから本陣までは十五分も掛からないはず…だ。


その時…


「リリー隊長」


「リリーさん!」


え?後ろから突然声を掛けられ危うく木から落ちそうになる。


何とか木の表面を掴み、堪えると後ろにはヴェイルとランゼが立っていた。


私は年貢の納め時だと正体を明かすことにした。



「ごめんね、二人とも。私はアムスティア王国の貴族なの。騙すような事をしてごめん」


「知ってたぜ?ほら、野生の勘ってやつ?」


「私も存じておりました。気品ある行動は隠そうとも露見してしまうもの。見抜くのは然程難しくはないかと」


バ、バレてただと?!ヤバイ!どうしよ?!偽装は完璧だったはず。なのにどうして?




「俺もランゼも帝国に滅ぼされた小国の王子なんだ。リリーちゃんが良ければ手伝うぜ?」



あ、え?そうなの?どうしよ…えーい、一人じゃ不安だし、手伝ってもらおう!


「よ、よろしくお願いします…」


「おうよ!」「畏まりました」


一度、木から降り作戦を伝えるとヴェイルの腕に擦り傷を見付けたので指を指す。


「ヴェイル…さん、血が出てる」


「ん、あぁ。こんくらいかすり傷よ!へへっ」


「ダメ…ちゃんと治さないと。」


ぽわーっと淡い紫の光がヴェイルの体を包む。するとみるみるうちに傷が治っていく。


「これは…治癒魔法ですか?しかしこんな上位の治癒魔法などアムスティアの教皇以上では…?!リリー様、貴方は一体…!」


「ごめん、これは私が持ってる秘密の内の一つなんだ。誰にも言ってほしくないんだけど…良いかな?」


「リリー隊長がそこまで言うなら俺は誰にも言わねえよ!なんだか体が軽いし、これなら普段以上の能力も発揮出来そうだぜ!へへっ」


「分かりました、主命とあらば従いましょう。そしてこれよりランゼ・カーソナルはリリー様を主と仰ぎ生きる所存です。この命、リリー様の為にお使い下さい。」



えっと…ランゼが部下になったって事で良いのかな?


他国の元王族が子爵に忠誠を誓っちゃうのは平気なのかな?


まぁ、良いか。


私はランゼにも治癒魔法を掛けると泣いて喜ばれたが、そろそろ向かわないと日が暮れてしまう。


泣いてるランゼと相変わらずへへっと鼻の下を人差し指で擦るヴェイルを連れ帝国本陣まで移動を開始した。

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