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お嬢様は公爵から土地を購入しました

「仰る通りです。既に残された期日も一週間を過ぎました。しいては戦時中だけでも閣下の領地…センティスに我が領民を避難させたいのです。もちろんただでとは言いません。購入させていただきたいと思います」


公爵の厳つい顔を見つめ思わず唾を飲み込んだ。奮える手で紅茶に手を伸ばして喉を湿らす。



センティス…王都の東にあるジェネシス領の南端にある草原地帯だ。ここには元々騎馬民族が住んでおり激しい侵攻に王国軍も頭を悩ませていた。アルデン領とは地続きで領土を接している。


つい三年前に事実上の平定を済ませたは良いのだが、残存する騎馬民族の激しい抵抗が今もなお続いているのである。アムスティア国王ブルートはジェネシス公爵にその地を預けるも未だ頭を悩ませてるという。私はそこを買いたいと公爵に伝えた。



「ほう、センティスとな。購入とは…ふむ、金額は?」


「言い値で払いましょう。住居や上下水工事もこちらでやらせて頂きます。そちらからは土地を頂ければそれで構いません。民を思えばこそ私財をなげうってでも助けたいのです」


「……その心意気や良し。次期当主としての志を幼き身で既に持っていようとはな」


どうやら意見は通った様だ。公爵の厳つい顔が破顔し白い歯を見せた。私は内心一息吐き話を続ける。


「民の為でございます。私に出来るのはそれだけしかありませんので」


オリヴィエたんがあくびをしている。


なんだ、ただの天使か…

本当に居たんだな!


「気に入った、儂から陛下に伝えておこう。」


「ありがとうございます。それではこの後もう一件所用がありますので失礼しても?」


「うむ…いや、待て。少し話を纏めるか。」


「わかりました。」


んーちょっと急いでるんだけどなぁ…仕方ない。


「そうだな…金貨千枚で売るとして儂の方から代官を付けよう。セバスティン任せても良いか?」


金貨千枚で大体一億円だ、センティスの広さは大体東京二十三区と同程度。地価や金銭の為替が異なるが異例の安さである。


公爵は代官にセバスティンを指名した。あまり疑いたくはないが何か企んでるのかもしれない。


いや、それとも単純に心配してくれてるだけなのかな?

見るからに優秀そうなセバスティンを代官に寄越してくれるのはこちらとしてもありがたい。どっちだろう?



「はっ。主命とあれば喜んで行かせて頂きます。」


セバスティンが恭しく頭を下げた。


「うむ、リリアナ嬢それで構わないか?」


「私としては何の問題も御座いません。ですが書面に書き出したいと思うのですが宜しいでしょうか?」


「書面だと?」


「はい、理由を述べさせて頂きますとーー」


この世界では口約束は当たり前、もっとも重要な案件のみ書面に書き記す。


それも双方で一枚ずつ。それじゃ約束を破って下さいと言っている様なものだ。


双方に食い違いが起きないようにする必要があるのだ。だから私は書面に書く大切さを丁寧に説明させてもらった。


私は一計を案じて四枚書く事にした。前世でも口約束ではなく紙面に内容を書き留めることを是としていたしね。


一枚は私、もう一枚は公爵、三枚目が陛下、四枚目は教会に渡す。


何故教会に渡すのか?それは領民の心身のケアや喜捨さえ払えば雑事を全て任せる事が出来るからだ。


そして有り得ないとは思うが教会は国とは別に成立している謂わば国境なき国家であるという事も関係しているので契約書を改竄されても大丈夫な様にだ。


事後承諾だとしても喜捨という名目の賄賂でどうとでもなる。


第三者を間に挟む事で抑止力にもなる。

そんな説明をして私は書面に契約を箇条書きした。


内容はこんな感じだ。



ジェネシス家、アルデン家、両家合意の元この契約書を記す。


一、ジェネシス領センティスをアルデン家は金貨千枚で購入する。

また戦時中だけではなく戦後もアルデン家の所有地となる。


一、ジェネシス領、センティスをアルデン家リリアナ・リモーネ・アルデン(以下リリアナに省略)に金銭で売却し、譲渡する。


一、ジェネシス家より治安維持の為五年間の間、領兵五百を貸与する。


一、センティスをリリアナが統治する場合ジェネシス家から代官を派遣し、領地経営が軌道に乗った時、完全にジェネシス家側は撤退しアルデン家の領地として認める。


一、ジェネシス側は都市整備に一切の関与をしない。全てをアルデン側が負担すること。ただし、初年度は例外とする。


一、三年間の免税を確約する。


一、リリアナが何らかの事故により死去してもセンティスはアルデン家の領地として認める。


一、問題が起きた場合は小事ならアルデン家、大事ならばジェネシス家アルデン家合同で処理をすること。


一、その他合議し争いに発展せぬよう心掛け、不備があれば別紙にて規約を設けること。


一、年に一度規約の改訂のため、合議の場を設けること。


こんなところだろうか。公爵は厳つい顔を綻ばせ満足そうに頷いている。

その膝にはオリヴィエたん…おっと間違えた、天使が規則正しい寝息を立て夢の中へ旅立っていた。


書類四枚にそれぞれサインしナイフを指に突き立て血判した。


セバスティンが出してくれた布で拭き公爵と同様に清潔な布を巻き止血する。


帰ったら治癒魔法で治しておこう。


三枚は私が保管、一枚はその場で渡す。


近々王城で陛下と大司教の一人を呼び話し合いと契約書を渡す約束をすると私は、目が覚めたのか、目元を擦りながらバイバイと手を振る天使もといオリヴィエたんと名残惜しくも別れた。


さて次は…教会か…

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