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お嬢様は祖父邸を後にしました

祖父母と相対する私…いきなり本題を振られ上手く言葉がでない。


あーもう勢いで言っちゃえ!


「お祖父様、私はまだ婚約など望んでいません!バール家との婚約を破棄して下さい!そして今後一切このような事はしないで欲しいのです。私はこの目で相手を見つけます。例えそれがお祖父様、お祖母様でも私の人生に口出しはしないで頂きたい!私の人生は私のものだ、貴族に生まれたからこそ生涯の殆どを共に過ごす相手を自分で見つけたいのです。ですから二度とこの様な約束を反故するような事態はお止めください。もし次この様なことが有ったならば私は手段を選びませんよ?言いたいのはそれだけです。失礼しました」


私は席を立ち上がり玄関の方へ歩き出す。すると後ろから声が掛かる。祖父だ。


「リリアナ、待ちなさい。一方的に会話を終わらせるとは何事だ。まだ私の答えを聞いてないだろ?座りなさい。わがままを言うのもいい加減にしないか!」


「嫌です、これでも私は忙しいのです。すぐにアルデン領に戻らなければいけないので今日は失礼させて頂きます。」


一刻も早くじいちゃんから離れたい。私はそれしか頭になかった。


「だから待てと言っておるのだ。今アルデンには戻れん。南からガルムが攻めてきた。アルデンに戻るのは危険だ。後にトニオ達も王都にやってくるだろう。戦争になるんだよ」


「そうですか…別の用事が出来ましたので失礼します」


戦争……

前世では全く関わりない人生を送ってきたが今世は違う。命の価値が軽いのだ。アムスティアは戦争に巻き込まれやすい。それは大陸の中央にあるからであり広大な領地を持つ特性ゆえだ。その度に少なくない兵士が命を散らしていく。


南にあるガルム帝国は貧しい国だ。それ故肥沃な大地を持つアムスティアを狙う。ガルムだけではない。アムスティアは内陸地、周囲に大国小国がひしめき何十年何百年とそれを繰り返している。


それがこの国で男性が少なく女性が多い理由……ギャルゲーの設定である。良ゲーなどと呼ばれていたが、実際その世界に居るものからすれば迷惑極まりない。


男性が少ないから重婚が認められている、それしか先人は解決方法を見付けられなかった。


私は制止を聞き流し振り返らず一方的に祖父の家を出た。

そして宿に戻ると椅子に腰掛け考えを纏めはじめた。

着ていたドレスはベッドの上に脱ぎ捨て半裸の状態だ。


ジェシカを呼びつけ私はこう伝えた。


「もうすぐ戦争が始まる。用事は終わったけどアルデンには帰れないからそのつもりで居て?それから人を雇ってアルデン領民の避難を始めて?受け入れ先は…ジェネシス公爵家に頼んでみるからその方向で話を進めてくれる?」


ベッド横のテーブルに置いてあったジェネシス公爵家の手紙が視界に入った。


「承知しました。」


「あ、マルーナ達とジェリーさん達幹部は王都に来るように伝えて?父に手紙を書きます。これをレントンに持たせて届けさせる様に。彼なら三日もすれば届けられるでしょう」


リモーネ商会…私の経営する商会の名だ。

私のミドルネームから商会名を取っている。

マルーナ、ジェリーさん、それから菓子職人のフランなどが幹部に当たり

その下に職人や経理、他領への営業を行う行商などが居る。

規模で言えば中規模だがそれなりに人は多い。


馬の扱いに長けたレントンならば一日あれば領内に戻れるはずだ。

馬は最悪潰れても構わない。また買えば良いのだから。

別に酷いことではない、これがこっちでは当たり前なのだ。


前世では持ち得なかった非情さにもいつの間にか慣れてしまった。

人間、環境に適応するって言うけれど本当なんだな。


私はジェネシス公爵から届いた手紙を確認する。

三日前に出した謁見伺いの返事が書いてあった。

本当は王都にいるうちにオリヴィエちゃんに会いたくて書いたものだけど思わぬ所で役に経った。


手紙には今日か明日の午後なら良いと書いてある。

まだお昼を過ぎたばかりだ!

早速私は脱いだドレスを着直してジェネシス家へと向かう馬車に乗り込んだ。

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