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とあるメイドの恋愛事情

お嬢様付きメイド、ジェシカのお話です

私はジェシカ、アルデン伯爵家の一メイドです。


元々は男爵家の四女で父と懇意にしていたアルデン家に奉仕をするためやってきました。


男爵といっても名ばかりで日々の食事に困る様な貧乏家だったので口減らしの様なものでしょう。


私が仕えているのはアルデン家のご息女、リリアナお嬢様付きのメイドとして七年間、成長を側で見守っています。


お嬢様は神童として有名で五歳を過ぎた頃には魔法書を読み終え、商売の才もお持ちの様で仕える私は日々驚かされてばかりです。


特に不満は無いのですが…一つ挙げるとすればその…スキンシップが少し過剰な事くらいでしょうか。それ以外は本当に出来たお嬢様で仕える私としても光栄の極みです。


まぁ今では慣れたので特に問題はありません。そんなお嬢様ですが私は尊敬していますし、敬愛しております。


それはお嬢様が七歳の夏、祖父であるアルデン伯爵様がお嬢様との約束を反故にしバール伯爵家との婚約に憤慨して王都のアルデン邸に向かった時の事でした。


お嬢様は巧みに馬を扱い私や他の四名も馬の扱いには慣れている為、何事も無く王都へ辿り着き宿で休んでいた時です。


お嬢様が王都に居る間は私を含めて五人の家臣は交代で休日を頂いています。

更に特別手当てとして少なくない額を渡されているので不満の出ようがありません。

王都二日目、私が休日となった日に私は人生初の王都を観光しました。

旅立つ時、お嬢様に私服を持って行きなさいと言われなければメイド服で街を散策していたことでしょう。


メイド服でも良いのですが、街に溶け込みたいので私服を持ってきて正解でした。


お嬢様に感謝です。


時刻はお昼頃、お洒落なカフェを見掛けたので中に入り昼食を取る事にしました。


トマトパスタとサラダ、スープのセットで銀貨一枚と少し割高でしたがドリンクと焼きたてのパンがおかわりし放題というのを差し引いてもあまり高いとは思いません。


それにお嬢様から特別手当ても頂いてますしね!


味も中々、パンも柔らかくもっちりしていて美味しいです。


はぁ…幸せ。私は食べるのが好きなのでこうゆうときに小さな幸せを感じます。


お嬢様もよく厨房に立つのですが、魔法の様にどんどん新しい料理やお菓子を生み出し私達メイドに食べさせてくれます。


アルデン家に仕えてよかった…心からそうおもいます。



お腹が満たされると他の欲求が出てきます。私ももう21…そろそろ結婚を考える時期になりました。ですがアルデン家には目ぼしい殿方は居ません。せっかく王都に来たのだからよい出会いが無いか気にしてしまうのも仕方ないのかもしれません。


「すみません、道をお尋ねしたいのですが」


カフェを出て雑貨や書物を扱う店を散策していた時の事です。私は後ろから声を掛けられました。


振り返ると金髪の優しい顔立ちに旅装の青年が立っていました。


「ええと、どちらへ行かれたいのですか?」


「急にすみません。ダメですよーーえ?」


「ですからどちらへ行かれたいのですか?」


青年は恐縮そうな笑みを浮かべ宿までの道を訪ねてきました。どうやら連れとはぐれ土地勘の無い彼は迷ってしまったとのこと。私もあまりないのですが…つい返事してしまいました。


「そうなのですか…すみません、私も主の付き添いで王都に来たのであまり土地勘はないのです…が、一応宿の名前を窺っても?」


「そうなのですか…あまりにその…なんていうか、王都に溶け込んでたので…しかもこんな綺麗な人だとは後ろ姿では気付かず…あ、銀扇亭というところなんですが分かります…?」


「綺麗?!あ、いえその何でもないです。銀扇亭ですか?私もそこで泊まってるのでもし良ければ一緒に戻りますか?主からの買い付けを言われてるので少し寄り道しますが」


この青年はいきなり綺麗だと言ってきた。今までの人生でそんな風に言われたのは初めてだったので驚いた。

慌てて平静を取り戻し、同じ宿だったので一緒に戻ることを提案。


彼はそれを承諾したのでお嬢様に頼まれていた調味料や香辛料、それと上質な布地を店先で宿に届けるよう伝えると私は青年、ジョンソンと宿【銀扇亭】へ戻ったのだった。


ジョンソンは買い付けの道中ひっきりなしに私に話し掛けてきた。彼なりに気を遣ってくれたのだろう。

もしかして口説かれてたりなんてしませんよね?

いや、でも会ったばかりだし…けど少しだけ期待しても…

いえ、今は余計な事は忘れましょう。


その優しい相貌と威圧感のない丁寧な声音に私は少し胸が弾んでいた。



宿へ着き扉を開けるとこちらを心配そうにみつめる二つの視線。一つはお嬢様。もう一つはジョンソンの連れだろうか私と同い年くらいの女性だ。


「ジョンソン!」


「マチルダ!」


お互いを視認した途端二人は駆け寄り抱き着いた。

私はそれを唖然として見ているだけだった。

そんな私を見兼ねたのかお嬢様に声を掛けられ私は我に帰った。


「あ!やっと帰ってきた!お帰りジェシカ」


「……はっ!はい、ただいま戻りました。こちら買い付けの明細書になります。こちらへ届けるよう伝えてあるので明日には届くと思います。」



「ありがと。折角のお休みなのに頼んでごめんね?でもジェシカに頼んでよかった。予想よりも安く見積もってあるね」


「いえ、近々王都の物価が高くなるという話を聞きました。商人らは利に敏いと言います。戦争の気配がするとも…商人にとっては稼ぎ時なのでつい口も滑ったのでしょう。」


「戦争かぁ…」



お嬢様はそう呟くと何かをぶつぶつと呟きながら思考をしていました。


「あっ!そうだ!この人マチルダさんって言うんだけど夫を探してたんだって…てもう分かるか、帰ってきたら捜索を頼もうと思ってたんだけど、流石はジェシカだね!ん?どうしたの…ジェシカ?」


夫…つまりジョンソンは既に所帯を持っていたということだ。私は呆然とただ泣きながら再会を果たしたジョンソン夫妻を見ているだけだった。


「あ、ジェシカさん!わざわざ案内して頂いてありがとうございます。このお礼はいずれまたさせて頂きます」


ジョンソンがなにかを言っているが私の耳には何も入ってこなかった。


「ジェシカ?」


「すみません、少し部屋で休ませて頂いてもよろしいでしょうか?」


お嬢様に袖を引っ張られ名を呼ばれ我に帰る。


「う、うん。それは構わないけど」


私は幽鬼の様に歩きだし部屋に戻った。ベッドに腰掛けると自然と涙が溢れだす。これが失恋というやつなのか


胸がチクチクと疼き苦しい。嗚咽混じりの鳴き声が部屋に響いた。


私の人生初の初恋と失恋はこうして終わった。



それから二日経った。未だに私は立ち直れなかった。


一人過ごす私の部屋にノックが響く。


「ジェシカごめんね?少しお話しよ?」


お嬢様だ。心配そうな顔で私を見つめる。その顔は今にも泣き出しそうだ。


「お嬢様が謝ることはありません。謝るならば私の方でしょう」


「…」

「…」


お互い沈黙が続く。

お嬢様はソファに座ると私の手を握り心傍にずっと居てくれた。



沈黙を破ったのはお嬢様だった。


「ジェシカ。私には何があったのかは分からない。だけど傍に居てあげるからね?私付きのメイドだもん。家臣の面倒を見るのも私の役目。辛いときは何でも良いから私に話して?少しは気が紛れると思うよ?」


「…」


お嬢様は一拍置いて話を続ける。


「私はジェシカの事が大好きだから」



そう口にしたお嬢様の顔は満面の笑みだった。


大人以上の知識と商才を持っていても、お嬢様はまだ七歳になられたばかり。私の目の前にはお花畑の様な咲き誇る笑顔があった。



「私もお嬢様が大好きですよ」


大好きだと口に出すとストンと何かが落ちた気がした。


「良かった、じゃあ私達両思いなんだね!」



冗談混じりにお嬢様はそう言った。


あぁ…そうか、私の初恋はまだ終わってないんだ。

私の初恋はお嬢様だったんだ。

尊敬や敬愛だと思っていたこの感情はお嬢様への愛だったのだとやっと気付いた。


そう思うと沈んでいた気持ちも晴れてくる。


そして沸き上がるのはお嬢様への感謝の念と決して届かぬ恋心。


既にジョンソンのことは忘れ去っていた。


私は立ち上がると湯浴みをしてくると伝えお嬢様の前から俯いて去った。


その時の私の顔は真っ赤だったと思う。


お嬢様がアルデン伯爵と謁見したのはその二日後だった。

いかがだったでしょうか?この作品に出てくる男性キャラは基本クズという設定です。


モブ男でさえこのモテ具合…クソッ!


実際にギャルゲーの主人公が実在していたら皆さんどう思うでしょうか?イラッて来ますよね?爆発しろって思いますよね?世の害悪ですよ。うん。


作者の回りにはリア充ばっかなのでもうね…あー爆発四散しねぇかな?

なんて物騒なことを書いてて思う如月でした。


次回はリリアナ様視点に戻ります。


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― 新着の感想 ―
[一言] ギャルゲーの主人公がいたら僕、発狂して核兵器でも作って巻き添いにして爆○しますね。僕は自称百合の過激派なんで世界から男が消滅したら平和になるのではと思ったことがあります。 かなりやばい人だと…
[一言] 実際にギャルゲーの主人公が実在していたら皆さんどう思うでしょうか?イラッて来ますよね?爆発しろって思いますよね?世の害悪ですよ。うん 爆発しよう
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