魔法との出会い
ここはどこ…?
目が開かない。
音も良く聞こえない。
肌には布の感触。
多分ベッドに寝かされている。
手足が動かない。
拘束されてるわけでも無いようだ。
怖い…そう思った時、目がぼやけがちながらも見える様になった。
その直ぐ後、段々耳が聞こえる様になってきてガチャリと音がする。
「ーーーーー!ーーー?」
「ーーー!ーーー!」
聞いたこともない言葉、見たことのない男女が私の前に立ってる。
私は必死に叫ぶ!
私は日本人の志波梨乃です!
けど、口をついたのはあぶぅとかあばぁという赤ん坊の様な言葉のみ。
女性は乳房を出し、私は無性にお腹が空いていることに気付く。
それを貪る様に吸い付くと満足するまで無我夢中で吸い続けた。
体の自由が効かない。
されるがままになった私はお腹がいっぱいになるとそのまま寝てしまう。
微睡の中で死の間際、聞こえた冷淡な声を思い出す。
別の世界で生きろ、と言っていたのを。
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あれから何週間か経ち私もようやく現状が飲み込める様になった。
私はどうやらリリアナとかリリーとか呼ばれているようだ。
私を抱き上げおっぱいを飲ませてくれたのは私のこの世界のお母さん、名前は多分サリーナ。
綺麗な茶髪をしていて若い。多分前世の私と同年代くらいかも。
意識が覚醒した時、一緒に居た金髪の優男風の人が私のお父さんみたいだ。
名前はトニオみたい。
でもあの日以来顔を合わせてない。
お仕事が忙しいのかも。
それと…我が家はお金持ちみたいで、メイドさんが三人くらい交代で私の身の回りの世話をしてくれる。
ある日お漏らししてしまった私は大声で泣きメイドさんに知らせた。
これが赤ん坊の仕事ですからね、いつもより盛大に泣いてやりましたとも。
その時、私は見てしまった。
一人のメイドさんが、何かを呟いたと思ったら、光の球体を部屋の中心に飛ばすと、桶の中に何もない空中から水を作り出し桶を満たして、火の玉を桶に入れたかと思ったらお湯が出来たのだ。
普段は別室からお湯を持ってきていたので気付かなかったのだ。
部屋の灯りも気付けば付いていたので私が寝ていた時に用意していた可能性が高い。
というかそうとしか考えられなかった。
それはたった数十秒の出来事だったが、私は驚愕した。
ここは地球じゃないんだ、と身をもって体感した。
それが私の魔法との出会いだった。