お嬢様は完敗しました
「リリーちゃん!これなぁーに?!」
「それはねーー」
私は先程からタニアちゃんに質問攻めされながらもそれに受け答えしていた。
タニアちゃんは竹トンボに興味を示し、アンちゃんは何故か熊の彫り物に夢中だ。レインちゃんはというとーー
「あぁ…このふてぶてしい感じ。リリーさんにそっくりですわ…!」
失礼なーー。
絶賛熊の縫いぐるみを抱き締めて恍惚とした表情を浮かべている。
レインちゃんの云うように少しふてぶてしい顔付きだが、私はそんなにだらけた顔だろうか?
なんというか目元に締まりがないんだよね。
だらけきっているというか…
自分でももう少し引き締まった顔をしていると自負しているんだけどなぁ…
だが、それほど嫌じゃないので敢えて何も言わないことにした。
「確かにリリーちゃんに似てるかも!目の辺りとかそっくり!」
「うん。似てる。というより生き写し?というかこれリリーじゃない?」
言いたい放題である。
グッ…ここまで言われるとは…!
私は心中で遺憾の意を示しながらも表情は笑顔を取り繕う。
だけど、多分引き吊っていると思われる。
そんな会話をしていると工房を任せている穏やかな笑顔と艶やかな肢体のジェリーさん(31)未亡人がお茶と菓子を持って現れる。
「会長、ご友人とお話も宜しいですけど少し休憩なさっては?」
「うん、そうだね。お言葉に甘えようかな。」
ジェリーさんは元々雑貨店を旦那さんと経営していたのだが、先立たれてしまい生活に苦しんでいた。
私が隣にランジェリーショップを開いた切っ掛けで仲良くなりそのまま経営を委託した。
要するに雇われ店長さんだ。
手先が器用で編み物や木工細工などにも精通しており、試しに私が書き渡した図面の品を作ってもらうと予想以上の技術で精緻に作ってくれたのだ。
これは絶対に埋もれさせてはいけないと直ぐにスカウトした。
「ねぇ、ジェリーさん。この熊の縫いぐるみなんだけど私に似てるって皆言うんだよね。全然似てないよね?」
私は劣勢なこの状況を覆そうとジェリーさんにそう尋ねる。フフフとお上品な笑い声を上げて口を開いた。
「それはもちろん、私が会長に似せて作りましたから。目元なんてそっくりでしょう?苦労したんですから。」
と言われてしまった。
藁にもすがる思いだったがどうやらダメらしい。
私は味方作りを諦め紅茶を口に含んだ。
レインちゃん達にそれぞれ気に入った品を土産に持たせるとランジェリーショップに居るマダム’ズに合流し時間になるとレインちゃん達は帰っていった。
次回から王都編!
リリアナお嬢様が家を出ます。
少し長くなる予定…
まぁ、行き当たりばったりな作品なのであまり期待しないで下さい。
新キャラ何人か出ます。




