お嬢様は褒められて天狗になりました
パーティ会場に辿り着いた私は父の元へ向かう。
その隣には少しだけお腹が大きくなった母上。
妊娠約三ヶ月である。
そして見渡すと沢山の貴族や商人、鎧姿の兵士の姿が有った。
父は私が視界に入ると嬉しそうな表情をして迎えた。
「おお、リリアナ!やっと来たか!皆お前のために集まってくれたんだ。元気な姿を見せてやってくれ!」
そう、父が開いた私の誕生日パーティなのだが、まだ一度も顔を出してなかったのだ。
誕生会をダシにして貴族や商人の交流会が目的なのだろう。
正直面倒だったのでレインちゃん達が来たら私の部屋に通す様にメイドさん達に伝えていたのでそれで遊んでいた。
父の隣に立つと私は頭を下げた。
「ごめんなさい父上。少し気分が優れなくて部屋で休んでたの。皆様、本日は私のためにお集まり戴き有難う御座います。私は無事七歳になりました。今日という日を共に祝ってくれる皆様に感謝を。そして最後まで是非楽しんで行って下さいませ」
私の言葉を聞いて父はうんうんと頷いている。
どうやら猫を被った私の挨拶に感化されたのか、ちらほらと称賛の声が聞こえてきた。
「おお、流石はアルデン家のご息女だ。」
「アルデン家の将来は安泰ですな」
「本当に。うちの子と婚約してくれないかしら」
「あれがアルデンの至宝と謳われるリリアナ嬢か…なるほど、利発そうなお嬢さんだ」
ふっふっふ、もっと褒めて良いのよ?
私は鼻を高くした。
「でも、なんであんなに出来た子なのに婚約者がいないんだ?」
「噂で聞いたが学園を卒業するまでは待って欲しいとアルデン伯に相談しているらしい。いやはや勿体ない」
うん、デリケートな部分には触れないでほしいかな…
私はないしょ話をしている二人の貴族の顔を覚えた。
「ねぇねぇ、リリーちゃんってまだ婚約者決まってないってほんとー?」
タニアちゃんがいきなり地雷を突いてきた。
うっ…それを言われると少し悲しくなる。
「その…男性が苦手なの…だから父上には学園卒業まで待ってもらう様に話は付けてるわ」
「私も同じです。男性との話し方が分からなくて…話していると何かモヤモヤして」
おー、レインちゃんも男嫌いか。まぁ知ってるけど。
だけど似たような考えにニヤニヤしてしまう。
そういや原作でも男にナンパされて怯えてるのをマシューが助けるイベントが有ったっけ。
記憶が段々薄れてるけどレインちゃんと推しのオリヴィエちゃんの事は何となく覚えてる。
早くオリヴィエちゃんに会いたいな…
けどオリヴィエちゃんは公爵家、中々会えないんだよなぁ。
フラグの立て方も特殊だし。
お姫様のナナリアちゃんと同じくらい…いや、下手すればもっと難しい。
おっと…遠くのオリヴィエちゃんより今は目の前のレインちゃんだ。
「分かるよレインちゃんの気持ち。私達同じ気持ちなんだよ」
私はレインちゃんに微笑みかける。
するとレインちゃんは顔を真っ赤に染めて、
「リリーさんと一緒…同じ気持ち。。。」
と、うわ言の様に何度も繰り返していた。
レインちゃんの視線を時々感じる。
まぁ喜んでくれてるなら良いんだけどさ。
「レイン、変。」
「ほんとだー、どうしちゃったんだろ?」
アンちゃんとタニアちゃんがレインちゃんを見てそう話していた。
多分さっきのお姫様抱っこの件で私を意識しちゃってたりして?
そうだったら嬉しいなぁ…!なんちゃってなんちゃって!
私はタニアちゃん達に声を掛け、トリップしてるレインちゃんの手を引いてテラスの近くにある椅子へ座った。
レインちゃんも少し落ち着く時間が必要だと思ったからだ。
テラスから暖かな風が入ってくる。
私は春が好きだから。
寒い冬を越え花や動物達が活発になるこの時期が何だか過ごしてて一番幸せを感じる。
はぁー…縁側で緑茶が飲みたい。
まぁないものは無いんだけど…今はなぜかそんな気持ちな私だった。




