リリアナ•イン•ドリームワールド8 BreakTime
ふと、目が覚める。
そこはアンジェリーナになる前に居た場所。栄光の扉の前だった。
ユウとヨルと名乗った二人の少女が私を覗き込んでいた。
「ヨル!おきゃくさんおきた!おきたよ!こっちすわってー!」
「ユウ、起きたわね。主様に報告しなくちゃ。」
「どっちがいく?どっちがいく?ヨル?それともユウ?」
「ユウが行ってきなさい。私は側で見守っているわ。」
「はーい!いってきまー!」
流れるようなリズミカルな会話を聞いているとヨルと名乗った少女は何処から出したのか椅子に座り込み、ふぅ…と息を吐く。
「おはよう、お客さま。良い夢は見れたかしら?」
「おはようヨルちゃん。うん…とっても。」
そう、アンジェリーナの遺志をジョージはきっと受け継いでくれた筈だ。ジョージ流開祖、ジョージがどの様な人生を送ったのか。きっと色々な事を経験したのだろう。でもその中に少しでもアンジェリーナの教えが生きていたのなら、それはとても嬉しいことだ。
「それは良かったわ、お客様。良ければその後の彼、ジョージ・アンジュルムの事をお聞かせしようかしら?」
「うーん…そうだなー…」
気になる、といえば気になる。今まさにその事を考えていた。が、その人の人生はその人だけのものだ。他人がどう思おうが、きっとジョージは笑って逝ったのだろうことは想像に難くない。そしてジョージの教えは私の中に根付いている。うん、決めた。
「止めておくよ。ジョージはきっと悲しみも痛みも受け入れて生きた。その経験や教えは私の中で生き続けている。だから、大丈夫だよ?」
「なるほど…」
無表情な顔が少しだけ眉を上げ口を少し開いた。もしかしてこれがヨルちゃんの驚いた顔なのかな?やがて立ち上がると私の手を握りしめた。
「素晴らしい!百点の回答よ、お客様。…いつまでもお客様というのは逆に失礼ね。リリアナ様?リノ様?ねぇ、どちらが良いかしら?」
「リリアナで良いよ!出来ればリリーちゃんが良いけど…なんてね。」
「リリーちゃんね。私もジョージ・アンジュルムのお話はすごく好きで何度も追体験したわ。知ってる?ジョージね、アンジェリーナのことーーっとと、主様が来たみたいね。」
「目覚めたか。」
低く響くような声。浅黒い肌に白髪の長身の男が現れた。続くのはユウとユウ以外の二人の少女だ。シンヤとかアサという名前なのかな?なんて思いながらも私はゲームマスターと名乗った男の質問に答える。
「えぇ。素敵な夢をありがとう。」
「満足してくれたなら良かった。今お前の中にはジョージ・アンジュルムの武術が刻み込まれた。多少は邪神に対抗出来るだろう。」
「そうなんだ。この温かい感じの力が…うん、何となく分かるよ。」
「さて、どうする?シバ リノよ。ここで引き返すか、それとも進むか。お前には選択する権利がある。」
「もちろん、進むよ!」
「ふむ、遺志は固いか。ならば選べ。慈悲か贖罪か。」
「うーん…」
「幾らでも悩むが良い。この空間は時間の流れが止まっているのだからな。」
そう言ってドカッとこれまた何処から出したのかソファに足を投げ出して寝転ぶゲームマスター。時間が止まっているのなら長考出来る。ゆっくり考えようか。
慈悲の扉は何かヤバそうな気配がビンビンするんだよね…でももっとヤバそうなのが贖罪。ーー何も感じないのだ。まぁ結局はどっちも行くんだけどね。
と、悩んでいるとユウちゃんが私の元へトテトテと歩いてくる。名前を知らない二人も一緒だ。
「おきゃくさまー!なやんでるー?」
「ユウちゃん…だっけ?うん、少しね。」
「じゃあじゃあ!ユウがひんと?あげるー!」
「ありがとう。ヨルちゃんや他の子達の意見も聞きたいな!」
「えっとねー!ユウはしゃくじゃい(・・・)のほうがいいかな!すごいおもしろいのがみれるんだよー!」
「ほんと、ユウは好きよね。アサとマヨはどうかしら?」
「マヨは慈悲が良いのです~!すごくドロドロしてて面白いのです~!」
「アサは…どっちでも…うーんむにゃむにゃ…ZZZ」
「アサ、おねぼーさんなの!ヨルおこすー?」
「そのままにしておきなさい。リリーちゃん、どちらにするのかしら?」
「うーん。ヤバそうなのは贖罪の方だよね。ヨルちゃんの意見は?」
「私はどちらも…かしらね。どうせ全部体験するのでしょう?その棒が倒れた方にいったらどうかしら?」
と、投げ槍に棒を手渡される。うーん、そんな方法で良いのかな?まぁ、いっか!倒れた方は…




