お嬢様は父に幻滅しました
三時間後、父上は戻ってきた。
親子を連れて。
母親は青い髪の薄幸そうな美女。
胸がデカイ。
とても一児の母には見えず若いな。17、8くらい。
子供はまだ一ヶ月と言ったところだろうか。
しわくちゃな顔、あ、鶴○さんに似てる。
ガッツか○瓶さんに似てるんだよな生まれたての子供って。
現在、父上、母上、私、女の四人で席に着いている。
え?なんで六才児の私がいるかって?
アルデン伯爵家の正統後継者だからに決まってるじゃない。
一応長子に家督が譲られるけど、女性より男性が優先される。
だが決して女性では継げないというわけではない。
だから事実上の後継者は私だけなのである。
女の人の名前はアリエス。
父が一年と少し前に訪問したテイラー家の三女。
三女と言っても平民の愛人の子で継承権は無くメイドとして働いていたらしい。
熱烈な接待で酒に酔った父は部屋に連れ込み、そのまま種付けしてしまう。
私に腹違いの弟が出来たというのが事の真相。
産んだはいいが、継承権などないテイラー家には見捨てられ行く宛てもなく我が家に転がり込んだという。
父上もそうだがそのテイラー家の当主もどうかしている。
いざ子供を作らせたはいいがそこで見限り家を追い出すなんて信じられない。
男って本当どうしようもない生き物だと私と母上の意見は合致した。
「それでどうするのですか?」
「……うちで母子を預かろうと思う。俺が蒔いた種だ。テイラー家とも話を付ける。」
種をあちこち蒔きすぎじゃないだろうか。もしかして他にも?
農家にでもなったつもりだろうか?
顔だけは良いからなこの種馬…あ、良いあだ名だな。
これからは心の中で父上を種馬と呼ぼう
「貴方。他には、居ません、よね?」
母上も同じことを思ってた様だ。流石親子!
てか母上、笑ってるのに後ろに般若が見えるよ?幻覚だよね?
「うっ…一人…い、いや、二人いる…」
更に問題が発覚。何だよこの種馬…最低だろ…幻滅したわ…
「分かりました、この話は今晩じっくり聞かせて頂きます。アリエスさんと言いましたか。」
「は、はい!」
父上が良い返事をした。無駄に良い声だからムカつく…!
おー恐い…
「夫の不始末でご迷惑をお掛けしました。しかし、それはそれ。私は妻として貴方を認める訳には行きません。…慰謝料をお支払します。住むところもこちらで用意するのでそこに住んで下さい。たまには息子の顔を見せに来ることも許しましょう。子に罪はありませんからね。しかし継承権は与えません。宜しいですね?」
「あ、ありがとうございます…!!」
母上はアリエスさんの手を掴むと見事なツンデレをやってみせた。
そこ許しちゃうんだ…!
慈母神か、母上は。本来なら面会謝絶ものだよねこれ。
まぁ、性におおらかな今世だからな…。うん…。
町を歩けばその辺で昼間っから裏路地で子作りするような世界だ。
場所と時間を考えろボケッ!
ってついキレそうだがそれがお国柄だから仕方ない。
寧ろ税収が増えるから国は推奨している。
腐ってるよ、本当に…!
まぁ話を聞く限りアリエスさん自身も妾の子だからな…
母子揃って大変な境遇だ…思わず同情してしまう。
うちのママン怖い…怒らせない様にしよ…
そしてトニオ…!てめぇは絶対ぇ許さねぇ…
少しだけ尊敬していた父の虚像はガラガラと音を立て崩れ去った。
父はその晩こってり絞られた後仲直りしたのか、翌朝腰を押さえ辛そうにしていた。
お盛んな事で…兄弟が増えるのも時間の問題だなこれ。
ちなみに二人の愛人には子供は居なかった。
とりあえず隠し子事件は無事?に解決した。




