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リリアナ•イン•ドリームワールド6 -The Glory's door-

それから早送りが停止したのは一ヶ月の事だった。場所はいつもの訓練所。弓や斧などの扱いはリカーナやトーン・グロアの兵士達に手伝って貰いながら私は剣、格闘術、槍などをメインに教えていた。


この一ヶ月である程度把握したジョージの強さだが、確かに才能はある。原作初期のマシュー程度の能力と言っても良いだろう。しかし圧倒的に経験値が足りない。

対人では七歳の今世の(リリアナ)の足元にも及ばないだろう。だが、経験を練習量で補っている。

サボりがちではあるが、力を入れる時はきちんとやり、手を抜く時はきっちり休む。

スイッチのオンオフの扱いは私より上手いのではないだろうか。何気なく取るコミュニケーションや幼馴染みだというクラリスから語られるジョージの事を分析しつつ気付けば一ヶ月だ。


尚まだジョージは私に懐かず、アンジェと呼びその度に私に小突かれ涙目になるという不毛な抵抗を続けている。


そして、運命の歯車が回り始めるーーこれが多分、ジョージ流創始者であり、伝説とも呼ばれた今は名も無き少年の最初に立ち塞がる壁だと私は後に思ったーー


ある日の夕暮れ、遠くの地から砂煙を上げる軍団の姿を物見が発見した。義勇兵こと少年少女は他の女子供老人の警護の任を任され、対岸にある森の奥へ避難した。戦える私は前線に出ることになる。


『あと一晩も経てば此方へと来てしまう、ならば全力で抗うのみだ。』


そう力説する纏め役、トリオンの檄により小高い丘へと移動を始める。


日はとっぷりと暮れ、深夜と呼んでも良い頃合い。私達は夜襲を計画していた。斥候に出たトーン・グロアの戦士によると人数は約一千、こちらは動ける男女をかき集めて二百に届くかどうかと言った所。


五倍差…絶望的ではあるが、この窮地を何とかしなければ避難した者達は助からないだろう。


ならば…と、トリオンが決死兵を集う。私は勿論リカーナも立候補した。トーン・グロア戦士二十名と老兵が五人とトリオン、二十七名という編成だ。正直一割も削れれば御の字と言った所か。だが、やる気は十分。士気は高い。闇夜に乗じて敵方の警備兵を音もなく切り裂いていく。すれ違う天幕に火を付け、中から出てくる兵士の首を掻き斬る。大勢で徒党を組まれ道を塞がれればトーン・グロア戦士が騎馬突撃し、一人また一人と敵兵を切り捨てた。騒動が大きくなると、別の方向から侵入したトリオン率いる数名が敵陣中央から大暴れをし始めた。此処は端の筈なのにトリオンの澄んだ耳心地の良い声音で詠唱が聞こえてくる。


ーーこれは重力魔法の詠唱だろうか…やはりトリオンが初代アムスティア王…なのだろう。そんな気はしていたが、確証はなかった。だけど、王家に伝わる重力魔法の詠唱が何よりの証拠だろう。


…っと、そんな事考えている場合じゃなかった。私は振り下ろされる剣を左に飛んで避ける。避け様足を振り上げ剣を蹴り上げると回転し、膝を敵兵にお見舞いする。着地と同時に老兵に襲い掛かっていた敵兵に向け石を投げつけると体勢を立て直し一足飛びで剣を振るった。短い感謝の言葉を背中で受け止め私は戦場を駆け巡った。


「アンジェッ!!危ない!!」


不意に聞こえるリカーナの叫び声。私は横に飛ぶも肩口に攻撃を受けてしまった。


「痛ぅッ…助かったよ、リカーナ。よっ、と!」


「ほら、油断しない。そんなにあちこち走ってちゃ敵に狙ってくれって言ってるもんで…しょっと!」


お互いの背に迫った敵兵を肩越しに倒しながら私達は一時下がることを決めた、その時だった。


「うおおぉぉおー!!俺が、俺達が!皆を守ってみせるんだぁー!!アンジェーッ!助けに来たぞォ!!」


ふと、そんな声に身体が一瞬硬直する。頭を抱えるも、私は一言、あのバカ…と不意に口から零した。


愛すべき愛弟子ジョージへの罵倒。


私は気付けばリカーナの制止も利かず走り出していた。

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