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リリアナ•イン•ドリームワールド5 -The Glory's door-

かなり遅くなりました。

お待ちになって頂き大変申し訳ありません。新生活が始まり色々とゴタゴタしていて気付けば3ヶ月近く…六月頃まで更新遅めになりますが、これからも当作品をお楽しみ戴ければ…と思います。



ーーそれから一月が経った。あっという間に過ぎていく時間でそれはDVDの早送りみたいに過ぎていった。その一ヶ月の記憶もあるから凄く不思議な感覚なんだけど、そういうものだと割り切る事にした。


皆を連れて西へ西へ。子供はトーン・グロアの駆る馬に相乗りさせられ私は余剰の馬を貰って移動を始めた。加速現象ーー便宜上〈早送り〉と呼ぶが、ーーは止まり、いつも通りの時間が流れる。ということは、何かイベントが起こるのかな?と邪推してしまうが、何て事はない。嫌な予感と言うものは当たってしまうものだ。


「ヒャッハー!!食い物と女、馬を置いていきな!!」


「おっと、武器を捨てな!この数相手に勝てると思ったら大間違いだぜぇ?!」


「大人しくしてりゃ、野郎も命は助けてやーひぎゃっ」


盗賊のご登場だ。そして最後の奴の断末魔はリカーナの矢が命中して即死した。


バルトとライカンが周辺に盗賊が隠れていないか索敵したが、特に問題は無さそうらしくそのまま進む事となった。それから一週間、特に何も起こらず過ぎていく。


やがて見えて来たのは肥沃な大地、三つの川が近くを流れ、仮の家なのか天幕や簡素な小屋があちこちに点在している。大体千人程の規模だろうか、小さな畑や捕らえた獲物を解体したり、川魚を釣って来たらしき漁師が物々交換などしている様子が見える。


「やっとーー着いたんだ!希望の地、楽園アムスティアへ!」


リカーナが感嘆とした声を上げる。あちこちで万歳!や、良かった!などの声が上がる。

アムスティア…私の国の首都だよね?あれ…混乱して来たな。


もしも、リカーナが私の想像通りの人物ーー初代聖女ーーであるのならば、これは少しおかしい。


聖光教会が興ったのはもっと南の地、アルデン領と旧ガーズ領ーーマシューの生家ーーの間にある山岳地帯の小さな村、トログアと私は記憶している。


歴史書が間違っていたのか、それとも聖光教会は歴史書通りトログアの地で興るのか。


ーーまだ現状では分からないが、そこまでこの試練が続くかも分からない。今は確信出来ないが私なりの推論を立てて置いても構わないだろう。


「そうだね。ここまで長かったけど、ここでなら安心して暮らせそうだね!けど、まずはリカーナのお父さんの知り合いだっけ?その人の話を聞かないと何とも言えないけどね。」


「ええ。トリオンおじさんに挨拶しなくちゃ!あ、アンジェも一緒に行こう?おじさん凄いいい人だからきっとアンジェも気に入るよ?」


リカーナは八重歯を見せながら人懐っこい笑みを浮かべながら言った。私は快諾するとリカーナは私を連れトリオンさんの元へ向かう。リカーナは私を案内すると用事があるからとどこかへ行ってしまった。


第一印象はとても若い。おじさんと呼ばれているにも関わらず二十代前半にしか見えない。リカーナの言う通りいい人で物腰は柔らかで気の利く優しい御仁だった。ーーエルフという言葉が頭に浮かぶ。実際にトリオンさんは耳が常人より長く、肌は雪のように白く金髪で一般的なエルフの定義に沿う見目麗しい美丈夫だ。そんな彼からこんな提案を受ける。


「さて、アンジェちゃん。君は武芸に秀でているという。もし良ければ新兵の指南役を任せたいのだけどどうだろうか?勿論断っても構わないよ?でも僕としては君の指南を受けた若い衆にこの集落を守って欲しいんだ。どうかな?」


「なぜ…私なんですか?」


「なんでだろうねぇ…強いて言うならばおじさんの勘という奴かな?」


勘か…でもこの人の勘は信じて良い、そう思わせる様な何かが彼から伝わってくる。


そして私の中のアンジェリーナがやると叫んでいる。もうこの時点で私の答えは決まったのだ。


「分かりました、私で良ければその役目勤めさせて頂きます。」


「おぉ!受けてくれるか、ありがとう!誰か居るか?」


「はい。お呼びですか?」


近くに控えていた兵士らしき人が天幕に顔を出す。


「彼女を義勇兵の指南役に任命した。彼らの元へ連れていってやってくれないか?」


「分かりました。どうぞ此方へ。」


兵士の後を追い暫く歩くと木剣で打ち合う姿が遠くからでも見えてくる。やがて辿り着くと兵士は彼らを整列させる。


そこで私はおかしい事に気付く。彼ら義勇兵は皆、年端もいかない子供と言っても差し支えない者達だった。


「彼らが義勇兵十三名です。一人欠けているが…多分その辺でサボっているのでしょう…全く、奴は…すみません、連れてきます。」


「いえ、まずは自己紹介を。アンジェリーナと言う。君達の指南役を仰せつかった。宜しく頼む。」


「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」


十二人の少年少女が大声を上げて頭を下げる。


全員の自己紹介を聞き終わると耳を引っ張られた少年が兵に連れられ、やってくる。


「誰だよあんた。」


耳を解放され兵士に挨拶しろと言われた少年。ぶっきらぼうな突然の問い掛け。初対面の相手に傲岸不遜な態度だが、これだけ生意気ならば鍛え甲斐がありそうだ。


「こんにちは、私は今日から君達の指南役を任されたアンジェリーナだ。」


「今、みんなの名前と得意な武器を聞いていたんだ。君のことを教えてくれるかな?」


「俺は…ジョージ。この剣一本で天下に名を知らしめる!最強になる男の名前だ、覚えとけよアンジェリカ!」


「フフフ…面白い子だ、ジョージ。私の名はアンジェリーナだ、ちゃんと覚えろよ?」


「アンジェ…?長くて覚えられねえよ。」


「そうか…ならそうだな。私のことは先生と呼ぶと良い。皆も良いな?」


「「「「「はーい!」」」」


「ケッ…何がせんせーーモガッ…何すんだよクラリスッ!」


「せんせぇ、ごめんなさい。ジョージ馬鹿だけど、凄い恥ずかしがり屋なの。だから大目に見て上げてください。」


「ハハ…気にしないでくれ。さて、それじゃあーー」


ここから始まるんだ。


私の勘が正しければ彼が…

今後どの様に成長するのか楽しみだ、が…少しの不安を抱え私は傍観者のように早送りされていく時間を俯瞰していた。

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