リリアナ•イン•ドリームワールド4 -The Glory's door-
周年記念の本日二話目!前回読んでない場合はそちらからお読み下さい。
身体が動く様になり、私は動きなどを確認する。肩が少し痛むがそれ以外は万全…とは行かなくとも、まぁ何とかなるかな、って感じだ。
それにこの身体の持ち主…アンジェリーナの記憶とは別に私の人格もある。年齢は十六才で金髪の翠眼。父と兄が青年団に勤めてて槍と剣、弓は扱える。普段は農業をやっていて足腰は強い…という所だろうか。
あれ…これってもしかしなくても憑依ってことだよね?リリアナに憑依してたのに、更にアンジェリーナにも憑依したってこと?
頭がこんがらがりそうになるけど、仕方ない。なる様になれ!の精神で頑張ろう。魔法は…簡単な身体強化くらいなら使えそうだけどそれ以外は難しそうだ。魔力が極端に少ない。戦闘になった場合近接格闘くらいしか手札は無さそうだ。忍術も使えそうにない。幸いなのはジョーンズ流剣術を収めていた事だろうか、槍や弓も使えない事は無いが達人には敵わないだろう。そんなこんなで色々考えていると族長の娘リカーナが私に声を掛けてきた。
「アンジェ、おはよう。身体の方は大丈夫なの?」
「おはよう。うん、少し違和感はあるけど問題ないわ。」
「良かった、これから今後の方針を話し合いたいから食事が済んだらあの大きい家に集まってくれる?正直他の生き残りの子達は精神的に難しそうなの…あれだけ怖い思いもしたものね…」
「うん、分かったよ。他の子達は私の方で面倒を見るから任せて?じゃあまた後で!」
うん…可哀想だけど今後生きていかなければいけない。彼女達の精神がこの先回復する事を祈るしか無い…か。
私は目覚め始めた同郷の子達へと視線を向けて一つ溜息を漏らすも、直ぐに笑顔となり、生き残った幸運を分かち合った。
リカーナの容姿は銀髪に褐色で泣きぼくろが印象的な垂れ目の美人さんだ。あれ?リカーナって名前…何処かで…?いや、まさか同一人物な訳ないよね?ーーーそれは奇しくも初代聖女と同じ名前だった。
食事を終え精神的に一番軽度な症状だった年上のマリーに後を任せ指定された家に向かう。村長的な立場の地主が持つ一軒家だ。見晴らしの良い少し高地な場所に建てられた一軒家である。家の周囲には血と激しい戦いの跡が残るも家の中は多少散らかっているも綺麗な物だった。以前は団欒の場であっただろう広間には大きな机とリカーナを含めた男女四人が既に腰掛けていた。
「アンジェ、丁度良かった。ここに座って。ーーオホン、これより今後の方針案を熟考する。が、その前に全員自己紹介をしよう。私は偉大なるトーン•グロアの戦士ゾリグの娘リカーナだ。」
「同じくダムディンが子、バルトだ。剣鉈隊の管理を任されている。」
「ライカンだ。狩猟班と斥候を受け持っている。」
「トヤーよ。食事の手配などをやっているわ。困った事があったらいつでも言ってね?」
リカーナ以外の三人が挨拶を終え私に視線を向ける。立ち上がり私も自己紹介をした。
「私はこの集落の青年団の隊長…戦士の娘のアンジェリーナです。アンジェがジョリーンと呼んで下さい。この度はお助け頂き有難うございました。皆さんのお陰で少人数では有りますが生き残る事が出来ました。女子供だけで頼りないとは思いますが、共存していきたいと思います。よろしくお願いします。」
リカーナが嬉しそうな顔で拍手してくれたが、族長を引き継いだばかりだからか咳払いをして話を始める。それをトヤーさんが慈愛に満ちた視線で見守っていたのでこれがターニャの素なんだろうな、と思った。
それからお互いの状況を擦り合わせていく。何より懸念されるのは東にある大国が領土を広げようと西へ勢力を伸ばしているという情報だ。リカーナが以前信頼する行商人などから得た確実な情報らしい。小国が群雄割拠する恐ろしい時代で栄枯盛衰、弱肉強食の戦国時代らしい。魔法もそれ程認知されてないみたいだし、アムスティアもまだ興ってない事から考えて五百年以上は前の時代っぽいな。
方針として先ずは集落内の遺体の埋葬、無事な家屋の清掃などを行い、一月ほど心身の回復を測りここから西にある平原に移りリカーナの父の旧友を頼る事になる。何も無い場所らしいので開拓をすることになるだろうな。正直このまま集落で暮らしていく事は難しい。焼け落ちた家屋や荒らされた畑、何より生き残った娘達が辛いだろう。良い思い出が沢山残っているこの集落でこのまま暮らさせてあげたいけど、破滅する未来しか待っていない。
移住して防御を整えその地に繁栄したい。
今はやれる事は少ないけど、何とか頑張ってみよう。
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