リリアナ•イン•ドリームワールド1
短く切り揃えた夕焼け色の髪を持つ少女、アリーシャ•ボウモア。先程の訓練中に妙に視線を惹きつけられた少女が私の前に座っている。そして私と視線が合うなり敬礼して第一声を放った。
「アリーシャ•ボウモア少尉です!先程は不躾な視線を送ってしまい申し訳ありませんでしたぁ!」
彼女が発したのはまさかの初手謝罪の一言。まぁ突然男ばかりの砦に私達みたいな年頃(私含め一部除く)の女の子(と完全武装した男性)がぞろぞろ来たら(いろんな意味で)何事かって思うよね…まぁ、私もガン見しちゃったからおあいこだよね。
「いえ、気にしていませんよ。アムスティア王国伯爵位を賜っているリリアナ•アルデン•センティスです。本日はお伺いしたい話がありお呼び立てしました。」
一応一番爵位が高い私が使節団の代表とう設定なので挨拶をする。アリーシャ嬢は不思議そうな視線を私に向けて、固まった。が、再起動したかと思えば私の手を握り嬉しそうに上下にブンブンと振りながら喜びを表現し始めた。
「あ、貴方様があの伝説の聖女と呼ばれるリリアナ様ですか?!とても寛大なお方なのですね!小官と同年代と聞き及んでいたで有りますがとても幼い見た目なのですね…っと、今のは失言でした、申し訳ありません。しかし五年前に忽然と消息を絶ったと聞いておりましたが、何故帝国南部に?疑問が尽きませんが、リリアナ様にも色々と事情があるご様子。それは聞かずに置いておきましょう。小官を呼び立てたのは恐らく小官の血筋…魔神についてと推察しますが如何でしょうか?あ、小官如きめを呼び立てるのは魔神関連と推察したのは軍属になってから度々上層部に呼び出しを受けていたからでして…あ、砦長。お茶のお代わりを頂いても?…ふぅ。何の話でしたっけ。あ、リリアナ様。このお菓子美味しいですよ!この辺じゃ滅多に来ない東部の高級品でして周辺を根城にしていた盗賊から押収した物であります!小官が部隊を率いてアジトを急襲しまして頭領が大事そうに隠してたのを部下が見付けたのですが、独り占めしようとしていたのを小官が偶々通り掛かって問い質し、上納する所から数本失敬した品で有りましてーーー」
なんかめっちゃ一人で早口で喋り出したー!!しかも上司にお茶注がせてるし…第一印象のクール系軍人が何処かに弾け飛んでいった…本性はお喋りで天然な子なのかな?途中からお菓子の話になってるし、懐からカステラ擬きを取り出して包装紙をビリビリに破いて食べ始めた。自由だなぁ…うちのハーレム(予定)には居ないタイプかも。ルルもスイッチが入ったら多弁になるけど方向性が違うからなぁ。
「ーーオホン、アリーシャ少尉。少々客人に失礼ではないか?それと、散らかしたゴミは片付ける様に。」
そこで止めに入ったフェルナンド卿。アリーシャ嬢もやらかした事に気が付いたのかサッーと顔が青褪めていく。
「し、し、失礼しましたー!」と、謝罪してお片付けするアリーシャ嬢を生暖かい目で見守りながら、数分。漸く本題へ。
魔神に関する情報を訊ねるとアリーシャ嬢は懐から古びた首飾りを取り出した。
「これは代々ボウモア家に伝わる首飾りであります。首飾りと共に引き継いだ伝承には『祈りの巫女に首飾りを手渡さん。さすれば邪気を祓い清め呪いを掻き消さん。』つでいう意味不明な言葉と共にお婆ちゃんから手渡されました。その祈りの巫女って言うのがリリアナ様ならばきっと役に立つ筈ですよ!」
「手に取っても?」
「ええ、どうぞ!」
こんな歴史的価値のありそうな物預かっても良いのか、と恐る恐る手に取る。
見た目より軽くて手触りは思ったより滑らかだ。
手に取った瞬間光り出すとか警戒していたけど特に変わった様子はない。
先程の一文、祈りの巫女…つまり私が祈ったら良いのかな?でも、何に?
まさか邪神にじゃないよね?違うとすると物語の貴族の少女に?それも違う気がするな。うーん…何だろ?こんがらがってきた…
「リリー、よろしくて?少し難しく考えすぎなのでは?恐らくジョセフ卿とマリアンヌさんの呪いを解きたいと祈れば良いかと思いますわ!」
「そうだよ、姉さん!もっとシンプルに真っ直ぐが僕達の姉さんの本質だと思うよ!単純で脳筋!それが僕らの姉さんだよ!」
「レイン、ありがと。ちょっと迷走してたっぽい。…マシュー、後でお仕置きね?」
そうだ、私少し難しく考えすぎてたかも。もっと単純に物事を考えなくちゃ。
横であーだこーだ抗議してくるマシューはほっといてジョセフとマリーについて考える。
私は二人を呪いから助けたい。
もしも私の願いが届くのならば、二人を呪いから解放して!
「ムッ!これは…!」
「リリー、首飾りが!」
「ーー姉さんッ?!」
何だか意識が遠退いていく…私を呼ぶのは…誰?
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目が醒めるとそこは真っ白な空間だった。私の目の前には容姿の似た二人の少女がいた。アリーシャ嬢と同じ夕焼け色の綺麗な少女と暗い昏い闇色の髪をした少女。二人は目覚めた私を不思議そうに見つめていた。
「わー、ひさびさのおきゃくさんだー」
「私達以外誰も居なかったのに。どこから来たの?」
「あっちのせかいだよー、ヨル。」
「では歓迎の用意をしなくちゃ。」
「そうだねーもうかえりたくない、っておもうくらいはでにやろー」
「パンの在庫はあったかしら」
「ヨルがせーんぶのみこんじゃったでしょー」
「ユウは何もしないくせに」
「それじゃあいっしょにつくろうよー」
「材料はどうするの?」
「そういえばー」
「ユウは何も考えてないのね。お客さん、小麦を分けてくれないかしら」
そう言って私の目を二対の瞳が射抜いた。
ここは…何処なんだろう?ヨルとユウ…夜と夕?それに久しぶりのお客さん…分からない事だらけだ。
分からないなら聞けば良いか。そう思って私は口を開こうとする。が、私の声が出る事は無かった。
「二人ともどうした?」
まるで気配が無かった。二人の少女の背後から突然現れた、響く様な低い声。私はこの声を聞いた事がある…?何かが引っ掛かっている気がした。
「おきゃくさんー、おもてなしー」
「でも小麦が無くてパンが作れないわ」
「ふむ、彼女の相手は私がしよう。」
そう言って低い声の男は私の前に胡座を掻いて座った。
「久方ぶりだな、リリアナ…いや、志波梨乃と呼んだ方が良いか?」
もう2022年も終わりですねー
今年全然更新出来なかったと反省。今年中にあと二話くらい更新出来たらなぁー(願望
一話は確実に上げますよー
筆が伸びないんですよ…自分語りになりますがこの一年半ほど所謂ブラック企業で文字通り命を削りながら働き、たまに出来た半日休に執筆時間を捻出してましたが流石に限界を感じて退職しました。今は家業に戻りユルユル生活をしております。(この一年で体重30キロ減…
まぁ作者のどうでも良い身の上話は置いといて…来年からは更新ペースを徐々に上げていく予定です。
次回12/29更新予定です




