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帝国南砦にて

帝国へと向かう街道を進み始めて三日、漸く帝国との国境が見えてきた。

時刻は夕方過ぎ、先行させたマシュー、ランゼ、ボストンの男三人は街道脇の平原にて夜営の支度をしていると内線魔法トランシーバにて報告が来ている。


ちなみにジョセフ、マリアンヌ、テンカは私達の後方から追ってきて居て魔神の呪詛の関係からか、此方には合流せず迂回して帝国入りする手筈になっている。


「リリー、この後の動きはどうしましょうか?やはり予定通り深夜に越境するのですか?」


「んー、考えてみたら短期的にはそっちの方が良いんだけど、やっぱり正面から堂々と関所を越えた方が良いかなって。帝国を直進する訳だし、いく先々で憲兵に睨まれるのも面倒だしね。一応クーロン国王に一筆書いて貰ってるし。トラブルを避けるなら正面からじゃないかな?」


「なるほど、流石リリーですわね。わたくしも同意見ですわ。」


所謂プランBというやつだ。そんなこんなで話しながら道を行くとマシュー達のもとに到着し、その夜は何の問題もなく過ぎていった。



「そこの一団、止まれぃッ!」


翌朝、お昼前頃に関所…というか、南部防衛の砦だろうか。

そこの兵士が偉そうに私達の移動を妨げた。


「何か御用で?」


「此処から先はガルム神聖帝国の地ぞ。如何用で参ったか!」


ランゼが一歩前に出て堂々としている。交渉役はランゼに任せよう。

私はマジックポーチからテーブルと椅子を出して少し離れた所で優雅に成り行きを見守ることにした。


え?お茶飲んでる場合じゃないって?


大丈夫大丈夫。もし武力で返されそうになってもここに居るアムスティア組は砦に大打撃を与えられるんだよ?


レイラさん達だって三人で力を合わせればかなり良い線行く筈だ。

階級的に低いボストンだって本来の能力を隠してるっぽいし。

ダリアは言わずもがな、冒険者組では一番の実力。

マルシェラちゃんはみぃちゃんと一緒なら一時間で半壊出来るんじゃないかな?一応元ダンジョンボスだし、私と行動する様になって実力も底上げされているし。


ごめん、ガルム神聖帝国(笑)さんって感じだ。


まぁ穏便に済ませるつもりだけど、それは向こうの出方次第って感じで私達はのんびり構えているつもりだ。


「我々はアムスティア王国の使節団だ。クーロン王国訪問ののち帝都にて皇帝陛下に謁見する段取りとなっている。我らに危害を加えるとならば国交の断絶、支配戦争に発展すると思え!そして口の聞き方には気を付けろよ?ここに居る方々は誰も王国の重鎮やその子女の方々だ!何かあったとして貴様の首一つ済むかどうか…。ーーして、貴殿はどうお考えか、お聞かせ願おうか?」


「ぐぬ…アムスティアだと…?!北部の低脳な猿どもが皇帝陛下に謁見?!チッ…少し待っていろ!上官に判断を仰ぐ!」


この人は何を言っているのだろう?その低脳な猿どもにこっぴどくやられたのを覚えていないのだろうか?

なんというか…帝国人というものは高圧的で自分の主義主張を相手に押し付ける様な物言いが鼻に触る。

どうせ階級も下の一般兵だろう。現に男の胸にある階級章は星が二つのみ。精々兵長辺りだろう、つまり下っ端。

男は門の中に入ると閂を閉めて上官の元へ向かった様だ。城壁の上には石弓を装備した兵士がずらりといる。

待ち時間の間一人で警戒しようとしていたのか私達の前に仁王立ちするランゼを呼び、【女帝の懐剣】達とボストン、ダリアが前に出た。

あ、そういえば…と、私は帝国に関する情報の埋め合わせをランゼに尋ねる。


「たしか帝国軍人って軍隊制度だったよね?」


「ええ。アムスティアでいう騎士団という組織は存在せず、帝国本部から軍を派遣しているそうです。なので地方貴族などの私兵はおらず、持ち前の戦力もない事から貴族同士の諍いも多少は減った様ですね。何でもこの二年で帝位を継いだ現皇帝が革新的なお考えをお持ちな様で現在の体制になったと聞いております。上から皇帝を元帥として将官、佐官、尉官がありアムスティアにおける騎士などの階級などは有りませんね。私の私見としては中央に武力を集積するのはメリットデメリットが有りますね。例えばメリットとして挙げるならばーー」


「なるほどなぁ」


過去に家庭教師をしていた事を思い出したのか、ランゼはあれこれと聞いてもいない事を話し出す。

生来、人に物を教えるのが好きな性分なのか生き生きとして延々と話し続けるランゼを横目に生返事を返して思考に耽る。

教職や誰かを導く立場に向いてるのかも知れない。

ギルドマスターもやってたし、それこそ国家経営をする王様とかね。

いつか落ち着いたら騎士爵を上げて村一つ任せるのも良いかも知れない。


その辺は後で考えるとして、別の事を考え始める。

何かと言うと私は原作の知識を思い出していた。


原作通りならば現皇帝は十七歳の第四皇女で帝位継承権は十二位。

前皇帝は領土拡大に躍起に逸っていたが度重なる連戦と高齢により、死去。


帝位を継ごうと躍起になった継承権の低い兄姉が戦場にて亡くなり、第一皇子は謀略の果てに毒殺され、予備の第二皇子は帝位に興味が無かったのか帝国の西部で小さな領地を経営し継承権を破棄している。


残っている男子は確か三歳くらいかな?いっぱい居る上の兄弟は殆どその命を散らして居たり他国に嫁いで居たり、とそんな訳で当時十五歳だった現皇帝が帝位を授かる事になった、という設定だ。


「ーーですから私としては甲乙付け難いと言う他ありませんね。……お嬢様、私の話聞いてました?」


「うん、大丈夫。それで現皇帝ってどんな人か知ってる?」


「それは勿論。才媛にして武面も抜きん出ているとか。似た様な話はこの目で見ています。きっとお嬢様とお話は合ったかと私は思いますよ。二つ名も似ていますよ?お嬢様の【宝石姫】と現皇帝の【紅玉姫】、面白いでしょう、お嬢様の瞳に因んで【翡翠姫エメラルディア】なんてセンティス領で呼ぶ人も居た位ですからね。お嬢様と同世代という事もあり、一度アムスティアに留学する、という噂も上がっていましたが前帝の死去によって話は流れたと伺っています。確か名前は…『ルーー」


「ーー待たせたな。隊長殿が話くらいは聞いてやろう、と言っている。中に入れ!」


気持ち良さそうに語るランゼが皇帝の名前を言おうとした瞬間、先程の高圧的な兵士が戻ってくる。まぁ、名前は知っているんだけどね。


「どうやら中に入れて貰える様ですね。話はまた後程。」


「うん、行こう!」


私達は砦のなかへと足を踏み入れた。



やっと帝国入りしましたぁー

ここまで長かったぁー

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